2013年10月31日木曜日

11月2日「ニュースなぜ太郎」

先週は台風で延期になりましたが、11月2日(土)の「ニュースなぜ太郎」でサルコペニア肥満の紹介をすることになりました。

初めての生放送出演でかなり緊張しますが、土曜日早起きできる方は見ていただければ嬉しいです。よろしくお願い申し上げます

tv-asahi.co.jp/nazetaro/

2013年10月28日月曜日

第3回緩和口腔ケア研究会

1月18日(土)に東京で第3回緩和口腔ケア研究会が開催されます。私は司会と運営を担当します。

https://system.smhf.or.jp/smn/oral/

 今回は「在宅における緩和口腔ケア」をテーマに、五島朋幸先生と秋山正子さんに講演していただきます。その後にパネルディスカッションを行います。この内容で参加費1000円ですし、ぜひ多くの方にご参加いただければと思います。下記HPより参加登録可能です。皆様のご参加のほどよろしくお願い申し上げます。

https://system.smhf.or.jp/smn/oral/form.cgi

2013年10月25日金曜日

低栄養は嚥下障害の原因となるか

低栄養は嚥下障害の原因となるか、という1992年の論文を紹介します。恥ずかしながら、サルコペニアの嚥下障害を考える上で重要な論文であったにも関わらず、見落としていました。

Veldee MS, Peth LD. Can protein-calorie malnutrition cause dysphagia? Dysphagia. 1992;7(2):86-101.

栄養不足が筋肉や神経の機能変化を起こすことは、1992年以前よりわかっていました。嚥下の神経・筋肉に関する研究は1992年時点でありませんが、低栄養で嚥下障害は増加・悪化し、誤嚥のリスクと関連すると推測されます。

低栄養と嚥下障害の関連をみる研究が必要です。重度の低栄養患者では、経口摂取を開始する前に栄養改善を行うことを提案します。栄養改善によって筋肉の機能が改善することで、嚥下機能の改善を期待できるためです。

蛋白カロリー低栄養が嚥下機能に負の影響を与える可能性があり、一部のケースでは臨床的に重要です。健常者の低栄養による嚥下への悪影響は少ないですが、嚥下障害患者では低栄養でより嚥下機能が悪化する可能性があります。

しかし、低栄養による嚥下障害は、他の嚥下障害の原因疾患でマスクされるため、その存在を同定することは困難です。

蛋白カロリー低栄養の呼吸機能への悪影響に関しては、素晴らしいレビュー論文があります。低栄養によって呼吸筋力が低下する結果、肺活量が減少し、残気量が増加し、最大呼吸量が減少します(呼吸筋のサルコペニアですね)。

9. Pingleton SK, Harmon GS: Nutritional management in acute respiratory failure. JAMA 257:3094-3099, 1987
10. Lewis MI, Lebman M J: Nutrition and the respiratory muscles.
Clin Chest Med 9:337-347, 1988
11. Arora NS, Rochester DF: Respiratory muscle strength and maximal voluntary ventilation in undernourished patients.
Am Rev Respir Dis 126:5-8, 1982

サルコペニアに関する記載はもちろんありませんが、飢餓による低栄養だけでなく、悪液質やストレス(侵襲)に関する記載はあります。経口摂取より栄養改善を優先すべき場合があるというのは、リハ栄養的にもうなづけます。

サルコペニアの嚥下障害の参考になるだけでなく、呼吸筋のサルコペニア、サルコペニアの呼吸障害に関する記載と参考文献がこれだけあることにも驚きました。文献検索、先行文献の重要性を改めて認識しました。

Abstract

Nutrient deprivation has previously been shown to cause alterations in muscle and nerve function. Although an effect has never been studied in the neuromusculature of deglutition, the authors argue that an effect is likely. The proposed result is an increase in swallowing impairment in dysphagic individuals and associated risk of aspiration. Research studying the relationship between malnutrition and dysphagia is needed to verify clinical significance. Until controlled studies are completed, the authors suggest alternative alimentation in repleting severely malnourished dysphagic patients prior to attempting oral diet. A review of nutritional status indices is included to aid in identifying dysphagic patients at nutritional risk. Early identification of nutritional compromise and intervention can prevent malnutrition and its deleterious effects.

2013年10月23日水曜日

ニュースなぜ太郎

「ニュースなぜ太郎」でのサルコペニア肥満の放送ですが、台風のため延期となりました。11月2日放送予定です。よろしくお願い申し上げます。

なかなかブログ更新できず申し訳ありません。毎日、原稿執筆、校正、講演準備、講演などに追われており、FacebookとTwitterまでしか手が回らない状況です。

今日はテレビ朝日の「ニュースなぜ太郎」の取材がありました。内容はもちろんサルコペニア肥満です。台風が来なければ26日(土)の朝6時~8時のどこかで放送されるはずですが、台風で翌週に延期になりそうな気がします。サルコペニア肥満に関心のある方はよかったら見てくださいね。よろしくお願い申し上げます。

http://www.tv-asahi.co.jp/nazetaro/

2013年10月10日木曜日

リハビリテーション栄養Q&A

日本リハビリテーション栄養研究会世話人のメンバーで執筆したリハビリテーション栄養Q&Aが、中外医学社から出版となりました。臨床現場でのリハ栄養の実践に役立つ書籍にしたいと考えて作りました。

https://www.chugaiigaku.jp/modules/shop/index.php?main_page=product_info&products_id=1376

若林 秀隆編著:リハビリテーション栄養Q&A、中外医学社、B5判 138頁、定価3,360円(本体3,200円+税)

内容は入門編,知識編,実践編の3つに分かれています.入門編は,リハ栄養の実践に欠かせない最低限の考え方・知識・実践に関するQ&Aとしました.

知識編は,サルコペニアを中心に,リハ栄養で重要な疾患・障害に関するQ&Aとしました.一部,難易度が高く読みごたえのあるQ&Aも含まれています.

実践編は,臨床現場で実際に困ることが多い状況に関するQ&Aとしました.リハ栄養の実践に役立つ内容になっていると考えます.

臨床現場でリハ栄養をどのように実践すればよいかというQに、できる限りわかりやすく答えた書籍にしたつもりです。多くの方に読んでいただけると嬉しいです。よろしくお願い申し上げます。

目次

1 入門編
 Q1 リハ栄養とはなんですか.なぜリハで栄養が重要なのですか. [若林秀隆] 2
 Q2 リハをしている人には低栄養が多いのですか. [吉村芳弘] 3
 Q3 低栄養の原因はなんですか. [建宮実和] 4
 Q4 低栄養はどのように評価したらよいですか. [建宮実和] 5
 Q5 低栄養の対処方法は原因によって違うのですか. [建宮実和] 7
 Q6  PT・OTですが,NSTで何をしたらよいですか.PT・OTの役割を教えてください. [石川 淳,宮崎慎二郎] 8
 Q7 リハNSTとはなんですか. [若林秀隆] 9
 Q8 どうやって職場の仲間にリハ栄養の考え方を広めたらよいですか. [建宮実和] 10
 Q9 リハ栄養に興味があります.研究会はありますか. [若林秀隆] 11
 Q10 低栄養の時にレジスタンストレーニングは禁忌ですか. [若林秀隆] 12
 
II 知識編
 Q11 侵襲の異化期と同化期とはなんですか.なにが違うのですか. [建宮実和] 14
 Q12  悪液質=ターミナルではないのですか.悪液質のステージ分類を教えてください. [荒金英樹] 15
 Q13 在宅で検査ができません.それでも栄養状態を評価できますか. [佐藤千秋] 16
 Q14 肥満のためにリハが進みにくいことはありますか. [藤原 大] 17
 Q15 肥満パラドックス(obesity paradox)とはなんですか. [吉田貞夫] 18
 Q16  リハをしている人のエネルギー必要量はどのように考えればよいですか. [藤原 大] 21
 Q17 リハをしている人の蛋白必要量はどのように考えればよいですか. [藤原 大] 22
 Q18 メッツ(METs)とはなんですか. [鈴木 恵] 23
 Q19  PT・OTの運動強度がメッツでどのくらいなのかわかりません.何か目安はありませんか. [鈴木 恵] 24
 Q20 Frailty(フレイルティ,虚弱)とはなんですか. [鈴木 恵] 25
 Q21 サルコペニア,ダイナペニア,ミオペニアはどう違うのですか. [西谷 淳] 27
 Q22 サルコペニアの診断基準を教えてください. [西谷 淳] 29
 Q23 サルコペニアにはどう対処したらよいですか. [西谷 淳] 31
 Q24 サルコペニアには分岐鎖アミノ酸がよいのですか. [西谷 淳] 32
 Q25 サルコペニアにはビタミンDは有効ですか. [吉田貞夫] 33
 Q26 サルコペニアと骨粗鬆症は合併しやすいのですか. [西谷 淳] 34
 Q27 サルコペニアにカロリー制限は有用ですか. [西谷 淳] 35
 Q28 サルコペニア肥満とはなんですか.どう対処したらよいですか. [西谷 淳] 36
 Q29 サルコペニアで嚥下障害になることがあるのですか. [森 隆志] 38
 Q30  サルコペニアでは呼吸筋も障害されるのですか.また,呼吸筋トレーニングは有効なのですか. [宮崎慎二郎] 39
 Q31 大腿骨近位部骨折の後に嚥下障害になることがあるのはなぜですか. [高橋浩平] 41
 Q32 Presbyphagia(老嚥)とはなんですか. [金久弥生] 42
 Q33 口腔機能は低栄養の時に低下するのですか. [森 隆志] 44
 Q34 持久力低下の原因はなんですか. [黄 啓徳] 46
 Q35 全身持久力低下にはどう対処したらよいですか. [黄 啓徳] 47
 Q36 ICUAWとはなんですか.廃用症候群とは違うのですか. [高橋浩平] 48
 Q37 Muscle qualityとはなんですか.改善できますか. [高橋浩平] 50
 Q38 ERAS,ESSENSEとはなんですか. [宮田 剛] 51
 Q39 Prehabilitationとはなんですか. [高橋浩平] 52
 Q40 ロコモティブシンドロームで栄養は重要ですか. [若林秀隆] 53
 Q41 回復期リハ病棟での栄養管理は,急性期や維持期と違いますか. [吉村芳弘] 54
 Q42 筋緊張が高い人や不随意運動を認める人はやせやすいのですか. [植木昭彦] 55
 Q43 運動療法には抗炎症作用があるのですか. [宮崎慎二郎] 56
 Q44 EPAとはなんですか.悪液質にはよいのですか. [荒金英樹] 58
 Q45 知的障害の人には肥満やサルコペニアが多いのですか. [山川 治] 59
 Q46 重度心身障害者で痩せている人が多いのはなぜですか. [山川 治] 60
 Q47 廃用症候群の患者には低栄養が多いのですか. [若林秀隆] 61
 Q48 脳血管疾患の人には低栄養が多いのですか. [金久弥生] 62
 Q49 大腿骨近位部骨折の人には低栄養が多いのですか. [高橋浩平] 63
 Q50 低ナトリウムなどの電解質異常とリハの効果は関連がありますか. [佐藤千秋] 64
 Q51 インスリン抵抗性に対するリハと栄養のエビデンスはありますか. [吉田貞夫] 65
 Q52  食事摂取困難ですが,アルブミン値3.4だから栄養状態は悪くないといわれました.積極的なリハを行って大丈夫でしょうか. [園田明子] 67
 Q53  リハ室まで歩ける患者ですが,栄養状態が悪いから筋トレできないといわれました.食事は十分摂れているのですが,なぜでしょうか. [園田明子] 68
 Q54  下肢切断後の体重評価,栄養必要量の設定はどう考えればよいでしょうか. [吉田貞夫] 69
 Q55  管理栄養士です.リハカンファレンスに参加したいのですが,どうしたらよいですか. [吉村由梨,吉田貞夫] 71
 Q56  PT・OTです.NSTに参加したいのですが,上司が21単位(1単位=20分)やってから参加しなさいといいます.どうしたらよいですか. [石川 淳,宮崎慎二郎] 72
 Q57  歯科医師・歯科衛生士です.リハ栄養カンファレンスで自分たちの専門性
 をどういかしていけばよいですか. [山川 治] 73
 
III 実践編
 Q58 低栄養の時はどの程度活動すればよいのですか. [若林秀隆] 76
 Q59  嚥下リハで経口摂取可能になりましたが,1日エネルギー必要量に届かない時はどうしますか. [森 隆志] 77
 Q60  サルコペニアでも慢性腎臓病(CKD)の場合には低蛋白食にするべき
 ですか. [黄 啓徳] 79
 Q61 低栄養でも糖尿病の場合にはエネルギー制限食にすべきでしょうか. [吉田貞夫] 80
 Q62  リハ栄養で有用な検査項目はなんですか.検査値の見方を教えてください. [佐藤千秋] 82
 Q63 リハ栄養で注意したほうがよい薬剤はありますか. [藤原 大] 83
 Q64 サルコペニアでも肝硬変の場合には安静にすべきですか. [若林秀隆] 84
 Q65 機能訓練中~直後に栄養剤を飲むメリットはなんですか. [植木昭彦] 85
 Q66  機能訓練中~直後に栄養剤を飲ませたいのですが,コストはどうしたらよいですか. [植木昭彦] 86
 Q67 どんな人に機能訓練中に栄養剤を飲んでもらうのがよいですか. [植木昭彦] 87
 Q68  がんの人があまり食事を摂取できないのはなぜですか.どうしたらよいですか. [荒金英樹] 88
 Q69 がんの人には積極的に運動を行った方がよいですか. [高橋浩平] 90
 Q70  がんのrefractory cachexia(不応性悪液質)のリハ栄養管理はどうしたらよいですか. [荒金英樹] 91
 Q71 重度心身障害者の偏食・拒食にどう対処したらよいですか. [山川 治] 92
 Q72  重度心身障害者の麻痺の違いによるリハ栄養管理の注意点はありますか. [山川 治] 93
 Q73 認知症の方が食事を食べてくれません.どうしたらよいですか. [吉田貞夫] 94
 Q74  誤嚥性肺炎を発症した場合のリハ栄養管理はどうしたらよいですか. [吉村由梨,吉田貞夫] 95
 Q75  誤嚥性肺炎患者の急性期の栄養管理(栄養ルート,エネルギー量)はどうしたらよいですか. [吉村由梨,吉田貞夫] 97
 Q76  小脳出血で嘔気・嘔吐があり,食事が進まない患者のリハ・栄養ケアはどうしたらよいですか. [若林秀隆] 99
 Q77 脳卒中後にうつを合併しやすいのですか.どう対応したらよいですか. [藤原 大] 100
 Q78  栄養モニタリングはどの指標を,どんな間隔で再評価したらよいですか. [佐藤千秋] 101
 Q79  レジスタンストレーニングにおける蛋白質の摂取方法として,効率のよい内容と量とタイミングはありますか. [宮崎慎二郎] 102
 Q80 有酸素運動と筋トレのうまい組み合わせ方はありますか. [黄 啓徳] 104
 Q81  腎機能低下(軽度~中等度)のあるサルコペニアの方のリハ栄養管理はどうしたらよいですか. [黄 啓徳] 105
 Q82  気管切開があり,機能訓練をしている患者の水分管理はどう考えたらよいですか. [吉田貞夫] 106
 Q83  経管栄養で胃内容物が逆流・残留する場合の栄養管理はどうしたらよいですか. [吉田貞夫] 107
 Q84  リハの効果を高めるにはどのような経管栄養剤や補助食品がよいですか. [植木昭彦] 108
 Q85 イレウス(腸閉塞)の症例のリハ栄養管理はどうしたらよいですか. [吉田貞夫] 110
 Q86  COPDの人工呼吸器離脱に難渋しています.栄養ルートの選択とリハプランはどうしたらよいですか. [高橋浩平] 112
 Q87  COPDで体重減少が著しく,いくら食べても体重が増加しません.どうしたらよいですか. [高橋浩平] 114
 Q88  末梢静脈栄養で1日300kcalしか投与していませんが,口腔・嚥下の筋トレはやっても大丈夫ですか. [若林秀隆] 115
 Q89  回復期リハ病棟を退院後に低栄養,低ADLで再入院される方がいます.在宅でのリハ栄養をどうしたらよいですか. [吉村芳弘] 116
 Q90  リハをしている糖尿病の方の食事単位は,どのように決めたらよいですか. [吉村由梨,吉田貞夫] 117
 Q91  ゼリー訓練中の誤嚥性肺炎患者ですが,認知症もあり,経鼻経管チューブを自己抜去しました(胃ろうは家族が拒否).あと2~4週間くらいリハをしたら代替栄養なくミキサー食を食べられそうなのですが,その間どう栄養管理をしたらよいですか. [園田明子] 118
 Q92 浸出液の多い褥瘡や熱傷の方のリハ栄養管理はどうしたらよいですか. [吉村芳弘] 120
 Q93  入院中に急性感染症に罹患して隔離対策となった方へのリハ栄養で,注意すべき点はありますか. [吉田貞夫] 121
 Q94  誤嚥性肺炎をくり返すため経静脈栄養のみとしましたが,肺炎は再発し,リハの中断が続いています.どう対処すればよいでしょうか. [熊谷直子] 122
 Q95  高齢者の肥満(25≦BMI<35)の患者も,若い人と同じように積極的に減量した方がよいのでしょうか. [熊谷直子] 123
 Q96  減量時のNPC/Nの設定方法と,その評価法の目安があったら教えてください. [熊谷直子] 125
 Q97  回復期リハ病棟であるため,血液検査をなかなかオーダーしてくれません.血液検査以外にリハ栄養を評価する指標を教えてください. [吉村芳弘] 127
 Q98  リハ栄養アセスメントとして身体測定を実施,評価する上で,注意しなければならない点はありますか. [熊谷直子] 128
 Q99  食事の時は義歯を装着していますが,日常生活やリハ実施時は義歯をつけていなくても支障ありませんか. [金久弥生] 130
 Q100  高度栄養障害患者に対して栄養療法を開始する場合,注意すべき点はありますか. [熊谷直子] 131

2013年10月8日火曜日

日本の地域在住高齢者のサルコペニア

日本の地域在住高齢者のサルコペニアの有病割合を調査した論文を紹介します。京都大学の山田実先生らの研究です。

Minoru Yamada, et al. Prevalence of Sarcopenia in Community-Dwelling Japanese Older Adults. Journal of the American Medical Directors Association, Available online 3 October 2013.
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1525861013005045

対象は65-89歳の健康な地域在住高齢者で男性568人、女性1314人です。サルコペニアの有無はEWGSOPの診断基準をベースにした判定基準で、筋肉量(BIA)、筋力(握力)、身体機能(10mの通常歩行速度)のうち、筋肉量減少+(筋力低下もしくは身体機能低下)としています。

結果ですが、サルコペニアと判定されたのは男性21.8%、女性22.1%でした。サルコペニアの有病割合は年齢とともに増加し、特に75歳以上の男性、女性で顕著でした。サルコペニアは、young oldでは女性が多く、85歳以上では男性が多い結果でした。

さらに転倒および転倒恐怖は、サルコペニアを有する高齢者のほうが、サルコペニアでない高齢者と比較して、有意に多かったです。以上より、日本の健康な地域在住高齢者ではサルコペニアの有病割合が高く、サルコペニアは転倒および転倒恐怖と関連するという結論です。

日本の健康な地域在住高齢者の4-5人に1人がサルコペニアであり、転倒と転倒恐怖のリスクであるというのは、インパクトがあると考えます。図を見ると80歳以上で約4割、85歳以上で5割以上です。大腿骨近位部骨折になる前に何らかの早期発見、予防介入ができるといいですね。

Abstract

Background

Sarcopenia, the age-dependent loss of skeletal muscle mass, is highly prevalent among older adults in many countries; however, the prevalence of sarcopenia in healthy Japanese community-dwelling older adults is not well characterized.

Objective

The aim of this study was to evaluate the prevalence of sarcopenia and to examine the association of sarcopenia with falls and fear of falling in community-dwelling Japanese older adults.

Design

This is a cross-sectional study.

Setting and Subjects

Healthy men (568) and women (1314) aged 65 to 89 years participated in this research.

Measurements

For all participants, 3 measurements were taken: skeletal muscle mass measurement using bioelectrical impedance, 10 m at a usual walking speed, and handgrip strength. Sarcopenia was defined as the presence of both poor muscle function (low physical performance or low muscle strength) and low muscle mass.

Results

The prevalence of sarcopenia, determined using the European Working Group on Sarcopenia in Older People–suggested algorithm, in men and women aged 65 to 89 years was 21.8% and 22.1%, respectively. The prevalence of sarcopenia increased age-dependently, especially in those older than 75 years in both genders. In the young old, the prevalence of sarcopenia was higher in women than in men; however, in those older than 85 years, the prevalence of sarcopenia was lower in women than in men (P < .05). In addition, fall incidents and fear of falling were more prevalent in sarcopenic older adults than in nonsarcopenic older adults (P < .05).

Conclusions

These results suggest that sarcopenia is highly prevalent in community-dwelling Japanese older adults and is related to falls and fear of falling. 

2013年10月1日火曜日

運動+蛋白質摂取によるGFR変化

地域在住高齢者における12週間のレジスタンス運動+運動後のたんぱく質摂取によるGFR(糸球体濾過量)の変化を見た論文を紹介します。

Ramel A, Arnarson A, Geirsdottir OG, Jonsson PV, Thorsdottir I. Glomerular filtration rate after a 12-wk resistance exercise program with post-exercise protein ingestion in community dwelling elderly. Nutrition. 2013 May;29(5):719-23. doi: 10.1016/j.nut.2012.10.002.

レジスタンス運動は12週間、週3回実施しています。たんぱく質はホエイたんぱくもしくは牛乳たんぱくを1日20g摂取、運動後に摂取しています。GFRの平均値は70.7 ± 16.9で、25.4%が60未満でした。

結果ですが、 レジスタンス運動+たんぱく質20gの摂取によって、GFRは有意に改善しました(介入後平均75.1 ± 20.2)。また、GFR60未満の群でも介入で有意に改善しました(介入前:48.9 ± 10.3、介入後53.4 ± 12.9)。

以上より、地域在住高齢者における12週間のレジスタンス運動+運動後のたんぱく質20gの摂取は、GFRに悪影響を与えないという結論です。

CKDではたんぱく質摂取を制限することが推奨されがちです。しかし、GFR60未満の群(Stage3)では、12週間の運動+たんぱく質投与によるGFR悪化は認めず、むしろ改善しました。CKDStage3では運動+たんぱく質投与をむしろ行うべきかもしれません。

Abstract

OBJECTIVE:

Increased protein intake and resistance exercise can be beneficial for maintenance of lean body mass (LBM) in older adults. However, these factors could also negatively affect renal function. We investigated changes in renal function after a 12-wk resistance exercise program combined with protein supplementation in community dwelling older adults.

METHODS:

Patients (N = 237, 73.7 ± 5.7 y, 58.2% female) participated in a 12-wk resistance exercise program (3 times/wk) designed to increase strength and muscle mass of major muscle groups. Participants were randomly assigned to one of three dietary supplements consumed directly after training: whey protein drink (20 g whey protein, 20 g carbohydrates), milk protein drink (20 g milk protein, 20 g carbohydrates), or carbohydrate drink (40 g carbohydrates). Renal function was estimated as glomerular filtration rate (GFR, Cockcroft-Gault formula), and dietary intake was measured as 3-d-weighed food record at baseline and endpoint.

RESULTS:

During the intervention, energy intake did not increase. Carbohydrate intake increased in the carbohydrate group and protein intake increased in the milk group, both approximately in accordance with the supplementation. In the whey group, protein intake did not increase, but carbohydrate intake did. GFR increased after the intervention (+4.4 mL/min/1.73 m2; P < 0.001), and the changes were similar in men and women or in the age quartiles. Changes in GFR at endpoint were not associated with LBM, dietary supplements, or total protein intake.

CONCLUSIONS:

A 12-wk resistance exercise program combined with protein supplementation in community dwelling older adults does not negatively affect GFR. The supplementation had only minor effects on total dietary intake.