2013年12月31日火曜日

大腿骨近位部骨折の体重・除脂肪量減少

大腿骨近位部骨折患者の発症後2カ月以内の身体組成変化を調査した論文を紹介します。

C. R. D'Adamo, et al. Short-term changes in body composition after surgical repair of hip fracture. Age Ageing (2013) doi: 10.1093/ageing/aft198 First published online: December 25, 2013

先行研究として発症後1年の身体組成変化(体重・除脂肪量減少)は、障害悪化、骨折再発、死亡と関連します。今回は、155人の大腿骨近位部骨折患者の体重、除脂肪量、骨密度を、DEXAで発症後3日、10日、2ヶ月の3回調査しました。

結果ですが、発症後3日と10日の間には有意差を認めませんでした。一方、発症後10日と2カ月の間に体重減少(−1.95 kg, P < 0.001)、除脂肪量減少(−1.73 kg, P < 0.001)、骨密度低下を認めました。脂肪は有意差なしでした。

以上より、大腿骨近位部骨折の発症後10日~2カ月の間に体重・除脂肪量減少を認めたという結論です。身体組成と予後を改善させる介入の最適なタイミングを知るために、さらなる研究が必要です。

発症前と発症後3日の比較はできませんので、発症後早期に身体組成に変化を認める可能性は否定できません。しかし今回の研究結果から、体重・除脂肪量を改善させる積極的なリハ栄養介入は、急性期より回復期のほうが重要と示唆されます。

抄録しか読めていないので、発症後10日~2カ月の間にどのようなリハや栄養管理が行われていたか不明です。ただしおそらく、通常のリハと栄養管理を行っていると、この間に体重・除脂肪量が減少するのだと推測されます。

日本では大腿骨近位部骨折の発症前から低栄養・サルコペニアの患者も少なくありませんので、発症後10日~2カ月の間で体重・除脂肪量が減少するのは大きな問題です。回復期リハ病棟での積極的な栄養管理の実施が重要と考えます。

Abstract
Background: the deleterious changes in body composition that occur during the year after hip fracture are associated with increased disability, recurrent fracture, and mortality. While the majority of these unfavourable changes have been shown to occur during the first 2 months after fracture, potential changes in body composition occurring earlier than 2 months post-fracture have not been studied. Accordingly, the aim of this study was to rigorously assess short-term changes in body composition after hip fracture.
                 
Methods: total body mass, lean mass, fat mass and total hip and femoral neck bone mineral density (BMD) were assessed via dual energy X-ray absorptiometry at 3 days, 10 days and 2 months post-fracture among 155 hip fracture patients from the Baltimore Hip Studies. Longitudinal regression analysis using mixed models was conducted to model short-term changes in body composition.
                 
Results: no significant changes in body composition were revealed from 3- to 10 days post-fracture. However, significant decreases from 10 days to 2 months post-fracture were noted in the total body mass (−1.95 kg, P < 0.001), lean mass (−1.73 kg, P < 0.001), total hip BMD (−0.00812 g/cm2, P = 0.04) and femoral neck BMD (−0.015 g/cm2, P = 0.03). No meaningful changes in fat mass were uncovered.
                 
Conclusions: the adverse changes in body composition during the first 2 months after hip fracture appear to have occurred primarily between 10 days and 2 months post-fracture. More research is needed to determine how these findings might help inform the optimal timing of interventions aimed at improving body composition and related outcomes after hip fracture.

2013年12月29日日曜日

2013年の振り返り2:リハ栄養・サルコペニア・悪液質



2013年の振り返り2として、医学中央雑誌での検索ヒット数の推移を2010年から2013年まで調べてみました。検索語は「リハビリテーション栄養」、「リハビリテーション栄養 若林秀隆」、「サルコペニア」、「悪液質」の4つです。

「リハビリテーション栄養」は2010年に初めて5件ヒットしました。その後2012年に39件まで増えましたが、2013年では33件となっています。本日検索しましたので、後日2013年の文献が医学中央雑誌に登録される可能性もあります。

とはいえ2011年から2012年にかけて急増したのに比べると、2013年はあまり変化が内容です。日本語での「リハビリテーション栄養」の学会発表や論文はまだまだ少ないと解釈できる結果です。

「リハビリテーション栄養 若林秀隆」で検索してみると、「リハビリテーション栄養」でヒットした件数の約半数は、私が学会発表や論文執筆したものであることがわかります。私以外の方が約半数ですが、私以外の方に頑張ってほしいです。

「サルコペニア」に関しては2010年以降、右肩上がりのヒット件数となっています。サルコペニアに対する関心が年々高まっていることの表れです。「リハビリテーション栄養」もサルコペニアと同じ勢いで増えてほしいのですが…。

「悪液質」に関しては2011年がピークでそれ以降、むしろ低下しています。リハ栄養的にはサルコペニアへの関心が高まれば、悪液質にも目を向けざるを得なくなると思うのですが、実際にはそうではないようです。

つまり、悪液質を含まない狭義のサルコペニアへの関心が高まっている可能性があります。今年はサルコペニア肥満がマスコミでよく取り上げられたましたが、これは悪液質をほとんど含んでいないと思われます。

来年は私以外の方にリハ栄養の学会発表や論文執筆を頑張っていただきたいと思います。そしてサルコペニアも大事ですが、リハ栄養的にはむしろ悪液質をターゲットにした臨床研究を行うことが重要かもしれません。

2013年12月27日金曜日

2013年の振り返り

若干早いですが、2013年の振り返りをしたいと思います。

学会発表・講演筆頭演者 2011年8回 → 2012年18回 → 2013年26回

講演(大学講義なども含め) 2011年69回 → 2012年95回 → 2013年77回

原著論文 2011年2本 → 2012年1本(筆頭ではありませんが) → 2013年1本

書籍(編著) 2011年 1冊 → 2012年 2冊 → 2013年3冊

総説・書籍など依頼原稿 2011年19本 → 2012年27本 → 2013年38本(うち英語のレビュー論文3本、ツ・ナ・ガ・ルの連載とNutrition Careの「症例でアプローチ!リハビリテーション栄養のススメ」のコメントは含んでいません)

日本リハビリテーション栄養研究会会員数 2011年末574人 → 2012年12月28日1917人 → 2013年12月27日現在3077人

ブログ執筆本数 2011年415本 → 2012年367本 → 2013年144本

テレビ・ラジオなど 2012年0回 →2013年4回

講演を減らそうと考えていましたが、学会発表と合わせると103回ということで、週2回ペースで1年間やり続けた計算になります。やりすぎですね。今年はかなりの講演依頼をお断りさせていただきましたが、来年は今年以上にお断りさせていただきたいと思います。申し訳ありませんが、よろしくお願い申し上げます。

原著論文はようやくImpact Factorのある雑誌に、リハ栄養の内容で掲載することができました。自分の中では大きな一歩です。来年もImpact Factorのある雑誌に1本は掲載しなければと考えています。他に日本語論文でアクセプトされたものが1つあります。

書籍は過去最高でしたが、これも多すぎですね。特に単著に関しては負担がかなり大きかったので、もう当分はやめようと思います。来年2月頃に「悪液質とサルコペニア」に関する書籍を出版予定ですが、それで十分かなと感じています。

サルコペニア関連の英語のレビュー論文を3本執筆できたことは、今年の収穫の1つでした。これはブログで何度も論文を紹介させていただいた、豊橋技術科学大学の佐久間邦弘先生のご指導のおかげです。とても感謝しております。来年もご指導いただく予定です。

日本語の依頼原稿も多すぎですね。今年はすべてお引き受けさせていただきましたが、来年は方針を変更したいと思います。できるところから日本リハビリテーション栄養研究会の世話人の方などに無茶ぶりをして、共著という形にしたいと考えています。よろしくお願い申し上げます。

日本リハビリテーション栄養研究会の会員数はおかげさまで毎月100人ペースで増加しています。Facebookの壁で入会できない方向けの研修会(リハ栄養フォーラム、学術集会)も今年は成功しました。来年もリハ栄養フォーラム、学術集会に多くの方に参加していただきたいと思います。

ブログに関しては来年はさらに執筆回数が少なくなると思います。現在はTwitterとFacebookで簡単に論文紹介することがメインになりました。興味のある方は私のTwilogを見ていただければ参考になるかと思います。

http://twilog.org/HideWakabayashi

今年はテレビやラジオに出演させていただくことが数回ありました。これも筑波大学の久野譜也先生がサルコペニア肥満について精力的に活動されていたおかげです。テレビ、ラジオに関しては目標設定するものではありませんが、タイミングが合えば協力させていただくつもりです。

来年も目標に関しては、別の機会に書きたいと思います。まずは振り返りまで。以下、2013年の私の業績です。

(原著論文)
Wakabayashi H, Sashika H: Malnutrition is associated with poor rehabilitation outcome in elderly inpatients with hospital-associated deconditioning: a prospective cohort study. J Rehabil Med doi: 10.2340/16501977-1258. 2013 [Epub ahead of print]

(総説)
Wakabayashi H, Sakuma K. Comprehensive Approach to Sarcopenia Treatment. Curr Clin Pharmacol 2013 [Epub ahead of print]
Wakabayashi H. Presbyphagia and sarcopenic dysphagia: association between aging, sarcopenia, and deglutition disorders. J Frailty Aging 2013 [Epub ahead of print]
Wakabayashi H, Sakuma K: Nutrition, exercise, and pharmaceutical therapies for sarcopenic obesity. J Nutr Ther 2(2):100-111, July 2013.
若林秀隆:今、なぜリハビリテーション栄養か.週刊医学界新聞3057p2, 2013年12月
若林秀隆:小児NST病態栄養シリーズ:在宅栄養のすべて‐摂食・嚥下リハビリテーションの問題点.小児外科45p1326-1329, 2013年12月
若林秀隆:サルコペニアに対する運動療法の実際.日本医事新報4677p32-36, 2013年12月
若林秀隆、他:サルコペニアと運動器の障害.Practice of Pain Management4(4)p4-13, 2013年11月
若林秀隆:栄養―低栄養例.Medical Rehabilitation163p420-423, 2013年11月
若林秀隆:研修医のための栄養療法入門.研修医通信50p8-11, 2013年10月
若林秀隆:高齢者の廃用症候群の機能予後とリハビリテーション栄養管理.静脈経腸栄養28p1045-1050, 2013年9月
若林秀隆:高齢者「主治医」事典―生活の質―高齢者と生き甲斐.JIM23p826-828, 2013年9月
若林秀隆:アンチエイジングとリハビリテーション―サルコペニア.総合リハビリテーション41(9)p809-816, 2013年9月
若林秀隆:「回復期リハ“栄養”病棟」という考え方.リハビリナース6(5)p8-13, 2013年9月
若林秀隆:誤嚥性肺炎と栄養管理―嚥下障害によるサルコペニアとその治療.臨床リハ22(9)p858-864 , 2013年9月
若林秀隆:摂食・嚥下障害と栄養管理―理学療法とリハビリテーション栄養管理.理学療法学40(5)p392-398, 2013年8月
若林秀隆:軽度の摂食・嚥下障害を初期から見抜く‐嚥下障害スクリーニングのための質問票“EAT-10”.エキスパートナース29(11)p13-17, 2013年8月
若林秀隆:サルコペニアとアンチエイジング‐栄養と運動.アンチ・エイジング医学9(4)p548-553, 2013年8月
若林秀隆:持久力低下とリハビリテーション栄養.ニュートリションケア 6(7)p92-94, 2013年6月
若林秀隆:サルコペニアの摂食・嚥下障害とリハビリテーション栄養.ヒューマンニュートリションケア 24p67-69, 2013年6月
若林秀隆:リハビリテーションに栄養の視点を.総合リハビリテーション41(6)p515, 2013年6月
若林秀隆:サルコペニアの呼吸障害とリハビリテーション栄養.ニュートリションケア 6(6)p84-86, 2013年5月
若林秀隆:リハビリテーションと栄養管理~リハと栄養管理はベストカップル~.急性・重症患者ケア2(2)p340-347, 2013年5月
若林秀隆:術後リハビリテーションの実際―ICU.総合リハビリテーション41(5)p431-437, 2013年5月
若林秀隆:サルコペニア肥満と栄養.体育の科学 63(5)p366-371, 2013年5月
若林秀隆:実地医家のための臨床栄養update―咀嚼・嚥下障害と栄養管理.日本医師会雑誌142(2)p279-281, 2013年5月
若林秀隆:サルコペニアの嚥下障害とリハビリテーション栄養.ニュートリションケア 6(5)p98-100, 2013年4月
若林秀隆:二次性サルコペニアのリハビリテーション栄養.ニュートリションケア 6(4)p92-94, 2013年3月
若林秀隆:原発性サルコペニアのリハビリテーション栄養.ニュートリションケア 6(3)p84-86, 2013年2月
若林秀隆:歯科衛生士に知ってほしい“リハビリテーション栄養”.DHstyle7(2)p48-52, 2013年1月
若林秀隆:悪液質のリハビリテーション栄養.ニュートリションケア 6(2)p60-62, 2013年1月
若林秀隆:サルコペニアの概要.リハニュースNo.56p2-3, 2013年1月

(著書)
【単著・編著】
若林秀隆:高齢者リハビリテーション栄養、カイ書林、2013年12月
栢下淳、若林秀隆:リハビリテーションに役立つ栄養学の基礎、医歯薬出版、2013年12月
若林秀隆:リハビリテーション栄養Q&A、中外医学社、2013年10月
【分担執筆】
若林秀隆:絶食.藤島一郎他編:Q&Aと症例でわかる!摂食・嚥下障害ケア、羊土社、pp325-327、2013年9月
若林秀隆:患者さんの栄養状態はどのように把握すればいいでしょうか?藤島一郎他編:Q&Aと症例でわかる!摂食・嚥下障害ケア、羊土社、pp46-50、2013年9月
若林秀隆:高齢者の栄養状態.全国歯科衛生士教育協議会監修:高齢者歯科第2版、医歯薬出版、pp97-103、2013年9月
若林秀隆:リハビリテーションと栄養.日本病態栄養学会編:病態栄養専門師のための病態栄養ガイドブック改訂第4版、メディカルレビュー社、pp307-311、2013年5月
若林秀隆:脳卒中とリハビリテーション.藤本篤士他編:5疾病の口腔ケア、医歯薬出版、pp80-83、2013年3月
若林秀隆:サルコペニアの早期発見・治療:病院─急性期病院.葛谷雅文、雨海照祥編:栄養・運動で予防するサルコペニア、医歯薬出版、pp42-47、2013年2月
若林秀隆:サルコペニア予防のための栄養管理とトレーニング.大村健二、葛谷雅文編:高齢者の栄養 はじめの一歩、羊土社、pp160-169、2013年2月

(学会発表・講演)
Wakabayashi H: Association between muscle strength of head lifting, dysphagia, and malnutrition in Japanese elderly: possibility of sarcopenic dysphagia. 7th International Conference of the Society on Sarcopenia, Cachexia and Wasting Disorders, Kobe, Japan, December 2013
Wakabayashi H: The sensitivity and specificity of EAT-10 for dysphagia and malnutrition in Japanese elderly with dysphagia or suspected dysphagia. 3rd Congress of the European Society for Swallowing Disorders, Malmö, Sweden, September 2013
Wakabayashi H: Importance of dysphagia management in rehabilitation. 20th IAGG World Congress of Gerontology and Geriatrics, Seoul, June 2013
若林秀隆:日本リハビリテーション栄養研究会の今後の展望.第3回日本リハビリテーション栄養研究会学術集会,福岡,2013年12月
若林秀隆:慢性期医療とリハビリテーション栄養.第21回日本慢性期医療学会,東京,2013年11月
若林秀隆:高齢者の栄養ケア〜今そこにある危機にチーム医療で立ち向かう〜:リハビリテーションの立場から―高齢者の栄養ケアがリハを変える.第55回全日本病院学会,埼玉,2013年11月
若林秀隆:摂食・嚥下の地域連携の課題.第52回全国自治体病院学会,京都,2013年10月
若林秀隆:Presbyphagia(老嚥)とサルコペニアの栄養管理.第19回日本摂食・嚥下リハビリテーション学会,倉敷,2013年9月
若林秀隆:サルコペニアとリハビリテーション栄養.第19回日本摂食・嚥下リハビリテーション学会,倉敷,2013年9月
若林秀隆:術後回復力強化プログラムにおけるプレハビリテーションの重要性.日本麻酔科学会関東甲信越・東京支部第53回合同学術集会,東京,2013年9月
若林秀隆:食事と栄養でロコモ・サルコペニア肥満を予防しよう.第25回日本運動器科学会,神戸,2013年7月
若林秀隆:緩和医療とリハビリテーション栄養.第18回日本緩和医療学会学術集会,横浜,2013年6月
若林秀隆:サルコペニアの摂食・嚥下障害とリハビリテーション栄養.第50回日本リハビリテーション医学会,東京,2013年6月
若林秀隆、佐鹿博信:Eating Assessment Tool(EAT-10)による嚥下スクリーニングの妥当性.第50回日本リハビリテーション医学会,東京,2013年6月
若林秀隆、佐鹿博信:高齢者の摂食嚥下障害と頭部挙上筋力・頸部周囲長の関連:横断研究.第50回日本リハビリテーション医学会,東京,2013年6月
若林秀隆:サルコペニアの摂食・嚥下障害とリハビリテーション栄養.第24回日本老年歯科医学会,大阪,2013年6月
若林秀隆:在宅リハビリテーション栄養とサルコペニア.第15回日本在宅医学会大会,愛媛,2013年3月
若林秀隆:回復期リハビリテーションにおける臨床栄養とサルコペニア.回復期リハビリテーション病棟協会第21回研究大会,金沢,2013年3月
若林秀隆:サルコペニアの摂食・嚥下障害とリハビリテーション栄養.第26回日本嚥下医学学会,京都,2013年3月
若林秀隆:廃用症候群の高齢入院患者における栄養評価と機能予後.第28回日本静脈経腸栄養学会,金沢,2013年2月
若林秀隆:リハビリテーション栄養の過去・現在・未来.第28回日本静脈経腸栄養学会,金沢,2013年2月
若林秀隆:脳卒中のリハビリテーション栄養管理.第28回日本静脈経腸栄養学会,金沢,2013年2月
若林秀隆:サルコペニアと摂食・嚥下障害.第28回日本静脈経腸栄養学会,金沢,2013年2月
若林秀隆:リハビリテーション栄養管理とサルコペニア.第28回日本静脈経腸栄養学会,金沢,2013年2月
若林秀隆:リハビリテーション栄養.第16回日本病態栄養学会,京都,2013年1月 若林秀隆:摂食嚥下障害.第16回日本病態栄養学会,京都,2013年1月

(研究助成金)
若林秀隆:CTによるサルコペニア指標の開発およびサルコペニアによる摂食・嚥下障害の解析.学術研究助成基金助成金 基盤研究(C) 195万円(内、間接経費45万円)、研究代表者
若林秀隆:地域・在宅高齢者における摂食嚥下・栄養障害に関する研究―特にそれが及ぼす在宅療養の非継続性と地域における介入システムの構築に向けて―.厚生労働科学研究費補助金(長寿科学総合事業)80万円、研究分担者

(その他:テレビ、ラジオ、雑誌)
若林秀隆:40代から要注意!あなたの知らないサルコペニア肥満.あさイチ、NHKテレビ、2013年7月18日
若林秀隆:サルコペニア肥満.ニュースなぜ太郎、テレビ朝日、2013年11月2日
若林秀隆:要注意!サルコペニア(筋肉減少)のやせ・肥満.ラジオあさいちばん、NHKラジオ、2013年12月2日~6日
若林秀隆:外見から分からない「サルコペニア肥満」.AERA 2013年12月23日号

2013年12月24日火曜日

高齢者リハビリテーション栄養:続報

若林秀隆著、新・臨床高齢者医学1「高齢者リハビリテーション栄養」、カイ書林の印刷が完成して、本日私の手元に届きました。ただネット上ではまだ入手できないようです。今週中にはアマゾンなどで入手できるようになると思います。

新・臨床高齢者医学シリーズが何冊まで出版されるかわかりませんが(笑)、最初が「高齢者リハビリテーション栄養」であるというのは、まさに「新」臨床高齢者医学だと思います。臨床高齢者医学でリハと栄養が重要であることは言うまでもありませんし。

リハ栄養ではサルコペニアが重要な対象ですので当然、高齢者に対するリハ栄養が多くなります。ただ高齢者のリハ栄養に特化した書籍は、今まで企画したことがありませんでした。今回は単著ですので、かなり個人的な意見も執筆させていただきました。

主な読者対象である総合医には、最初の藤沼先生からのインタビュー記事が一番面白いかもしれません。また医師以外の職種にも読みやすい内容だと思います。本書のコンセプトは、レジデントが寝る前に30分で読める本です。多くの方に読んでいただければと思います。よろしくお願い申し上げます。

目次
序:リハビリテーションなくして総合診療なし

第1章 総論
①総合診療医のための高齢者リハビリテーション
②ICFとCGA
③ADLとQOL
④SMARTなゴール設定
コラム:ブレイン・マシーンインターフェイス
⑤高齢者のリハビリテーション栄養

第2章 ケースで学ぶリハビリテーションなくして総合診療なし
①CKDに対して蛋白質制限を行わなかった脳卒中のケース
コラム:HAL
②老年症候群が進行し大腿骨近位部骨折を受傷したケース
③大腿骨近位部骨折から回復したケース
④軽度認知機能障害~初期認知症の外来ケース
⑤抑うつの改善でADLが改善した廃用症候群のケース
⑥がん悪液質を一時的に改善できたケース
⑦とりあえず安静・禁食にしなかった誤嚥性肺炎のケース

2013年12月23日月曜日

週刊医学界新聞:今,なぜリハビリテーション栄養か

週刊医学界新聞第3057号(2013年12月23日)に「今,なぜリハビリテーション栄養か」という寄稿を掲載していただきました。

今,なぜリハビリテーション栄養か
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03057_02

週刊医学界新聞では2011年に「筋肉は健康のバロメーター:サルコペニアを知ろう」を掲載していただきましたので、今回が二度目になります。ありがたいことです。

筋肉は健康のバロメーター:サルコペニアを知ろう
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02920_02

今回の原稿の内容は以下の4項目です。
・「栄養ケアなくして,リハビリテーションなし」の原点
・リハ栄養の視点でみた摂食嚥下障害の原因とは
・日本発の概念として,エビデンスの創出と発信を
・「日本リハビリテーション栄養研究会」の立ち上げと拡大

まだ短い期間しかありませんが、リハ栄養の歴史について振り返った内容となっています。多くの方の支援があってここまで来れたのだと改めて実感しています。多くの方に見ていただけると嬉しいです。よろしくお願い申し上げます。

2013年12月14日土曜日

リハビリテーションに役立つ栄養学の基礎

PT・OT・ST・看護師の学生向けの栄養、リハ栄養の教科書として作成した、栢下淳・若林秀隆編著「リハビリテーションに役立つ栄養学の基礎」、医歯薬出版が出版されました。

http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=214380

今まで学生向けではない卒後・生涯学習としてのリハ栄養の書籍は、何冊か執筆してきました。しかし、学生向けの栄養・リハ栄養の基礎を学べる教科書がないこともあり、PT・OT・STの卒前教育で、栄養を学ぶことはほとんどなかったと思います。

「リハビリテーションに役立つ栄養学の基礎」は、管理栄養士の学生向けの教科書ではなく、PT・OT・ST・看護師の学生向けの教科書です。ただし、第2章主な病態の栄養療法と第3章主な疾患の栄養療法に関しては、管理栄養士の学生にも知ってほしい内容です。

PT・OT・ST・看護師の学生向けの教科書ではありますが、すでに臨床で仕事をしているPT・OT・ST・看護師な多職種の方にとっても、栄養・リハ栄養の基礎を学習・復習できる書籍にはなっていると思います。あくまで基礎・初級レベルですが。

ぜひPT・OT・ST・看護師の多くの学校で教科書として採用して、栄養・リハ栄養の講義をしていただけると嬉しいです。PT・OT・ST・看護師にとって、栄養・リハ栄養の基礎は学生時代に学ぶべきことです。栄養ケアなくしてリハなしですので。

ただ、教科書の内容を教えることができる教員の存在も必要です。PT・OT・ST・看護師の教員にも、栄養・リハ栄養の基礎を学習していただければと思います。中には栄養とリハは関係ないとして、栄養やリハ栄養に無関心の方もいますので…。

日本リハビリテーション栄養研究会の会員やリハ栄養に関心のあるPT・OT・ST・看護師の皆様には、ぜひ母校に「リハビリテーションに役立つ栄養学の基礎」を紹介していただればと思います。場合によっては非常勤講師もお願いしますね(笑)。

目次

序章 リハビリテーションにおける栄養知識の重要性 1.栄養面から
   1 高齢社会と栄養 2 栄養と生命予後
 2.リハビリテーション面から
   1 なぜPT・OT・STに栄養の知識が必要なのか 2 リハビリテーション栄養とは 3 ICFと栄養
第1章 栄養の基礎
 1.栄養補給ルート
   1 栄養投与経路 2 経口摂取 3 経管栄養 4 経静脈栄養
 2.エネルギー代謝
   1 エネルギー消費量 2 基礎代謝量 3 身体活動レベル
   4 健康づくりのための身体活動基準2013
 3.5大栄養素の役割
  1)たんぱく質
   1 消化・吸収 2 代謝 3 アミノ酸 4 食品中の含量 5 必要量の考え方
   6 低栄養の判定
  2)脂質
   1 消化・吸収 2 代謝 3 リポたんぱく質 4 必要量の考え方 5 食品中の含量
  3)炭水化物(糖質・食物繊維)
   1 糖質 2 食物繊維 3 アルコール
  4)ビタミン
   1 ビタミンの代謝と働き 2 必要量の考え方
  5)ミネラル
   1 多量ミネラル 2 微量ミネラル
 4.運動時の栄養
   1 リハビリテーションを行う患者の必要栄養量 2 栄養素の必要量の考え方
   3 リハビリテーションと栄養素の働き
 5.栄養不良時の栄養
   1 栄養不良の分類 2 栄養不良時の代謝とリハビリテーションの留意点
   3 栄養不良の評価指標 4 refeeding症候群の予防と栄養管理
 6.侵襲時の栄養
   1 術前の栄養管理 2 術後の栄養管理
第2章 主な病態の栄養療法
 1.低栄養者の栄養管理
   1 低栄養とは 2 飢餓の病態生理 3 マラスムス型,クワシオルコル型,混合型
   4 侵襲下の飢餓の病態生理 5 悪液質の病態生理 6 栄養評価のポイント 7 栄養療法
 2.摂食・嚥下障害
   1 摂食・嚥下障害とは 2 器質的障害の病態生理 3 機能的障害の病態生理
   4 心理的原因の病態生理 5 栄養評価のポイント 6 栄養療法
   7 摂食・嚥下障害への対応
 3.サルコペニア
   1 サルコペニアとは 2 一次性サルコペニアの病態生理 3 二次性サルコペニアの病態生理
   4 サルコペニアの診断基準 5 サルコペニアと虚弱 6 栄養評価のポイント
   7 サルコペニアの栄養療法 8 サルコペニア肥満の栄養療法
   9 二次性サルコペニアへの対応:リハビリテーション栄養
 4.ロコモティブシンドローム
   1 ロコモティブシンドロームとは 2 ロコモティブシンドロームの病態生理
   3 ロコモティブシンドロームの診断基準 4 栄養評価のポイント
   5 ロコモティブシンドロームの栄養療法 6 ロコモティブシンドロームのトレーニング
 5.メタボリックシンドローム
   1 メタボリックシンドロームとは 2 日本のメタボリックシンドロームの診断基準
   3 メタボリックシンドロームの病態生理 4 栄養評価のポイント
   5 メタボリックシンドロームの栄養療法
第3章 主な疾患の栄養療法
 1.脳卒中
   1 病態生理と治療 2 脳卒中の種類 3 機能障害と機能訓練 4 栄養評価のポイント
   5 栄養療法 6 栄養ケアプラン
 2.誤嚥性肺炎
   1 病態生理と治療 2 機能障害と機能訓練 3 栄養評価のポイント
   4 栄養療法
 3.がん
   1 病態生理と治療 2 機能障害と機能訓練 3 栄養評価のポイント
   4 栄養療法
 4.脊髄損傷
   1 病態生理と治療 2 機能障害と機能訓練 3 栄養評価のポイント
   4 栄養療法
 5.大腿骨近位部骨折
   1 病態生理と治療 2 機能障害と機能訓練 3 栄養評価のポイント
   4 栄養療法
 6.下肢切断
   1 病態生理と治療 2 機能障害と機能訓練 3 栄養評価のポイント
   4 栄養療法
 7.関節リウマチ
   1 病態生理と治療 2 機能障害と機能訓練 3 栄養評価のポイント
   4 栄養療法
 8.慢性閉塞性肺疾患
   1 病態生理と治療 2 機能障害と機能訓練 3 栄養評価のポイント
   4 栄養療法
 9.慢性心不全
   1 病態生理と治療 2 機能障害と機能訓練 3 栄養評価のポイント
   4 栄養療法
 10.廃用症候群
   1 病態生理と治療 2 機能障害と機能訓練 3 栄養評価のポイント
   4 栄養療法
 11.褥瘡
   1 病態生理と治療 2 機能障害と機能訓練 3 栄養評価のポイント
   4 栄養療法
第4章 栄養関連事項
 1.NSTの実際
   1 目的 2 栄養評価の指標
 2.アルコールの影響
   1 代謝 2 疾患との関連 3 含有量
 3.タバコによる影響
   1 タバコに含まれる有害物質 2 タバコによる代謝の変化 3 タバコと疾患の関係
   4 タバコと低栄養

 索引

2013年12月12日木曜日

7th cachexia conference参加

12月9-11日と神戸で7th cachexia conferenceが開催されました。私は3日間フル参加してきました。

http://www.lms-events.com/19/index.php

私の見立てなのでかなり違うかもしれませんが、参加者は400(~500)人程度で、日本人の参加者は100人もいなかったのではと思います。世界中のサルコペニアと悪液質の一流の研究者が日本に集まっていたのに、とてももったいないことだと感じました。

サルコペニアへの関心はこの数年で高まってきましたが、悪液質の新しい考え方への関心はまったく高まっていないことがよくわかりました。日本でも悪液質への関心を高めるよう、努力しなければいけないと痛感しました。学会の宣伝不足の要素もありそうですが・・・。

参加者の多くは研究家であって、臨床家ではなさそうでした。臨床家ではリハ、循環器、緩和医療、呼吸器の医師がそれぞれ数人ずつ参加していたようです。リハ医は私を含めて6人でした。それだけ研究と発表のレベルは高く、日本が遅れていることを実感しました。

リハ栄養的に一番印象に残ったのは、悪液質の薬物療法の研究が進んでいますが、栄養、運動、心理社会サポートをしっかり行うことの重要性が繰り返し述べられていました。前悪液質・悪液質の早期発見と包括的対応といったリハ栄養を、臨床現場で実践できるよう還元したいです。

私はAssociation between muscle strength of head lifting, dysphagia, and malnutrition in Japanese elderly: possibility of sarcopenic dysphagiaという発表をしてきました。

口腔・嚥下に関する発表は、私と熊本リハ病院の吉村先生のAssessment of oral cavity function and its clinical significance: Is ROAG valuable for sarcopenia screening?だけでした。

つまり、口腔・嚥下のサルコペニア・悪液質に関しては未開の領域であり、ここでは日本が先行できる可能性があります。また、サルコペニア肥満の発表もほとんどありませんでした。ここは韓国が頑張っている領域ですが、日本も頑張れそうです。

アジアでのサルコペニアのコンセンサス論文が近日中に発表になると言っていました。重要な論文になりますので、納得できる内容の論文であれば日本で広めたいですし、そうでなければレター論文を書いてコメントしたいと思っています。できるかわかりませんが(笑)。

吉村先生に撮影していただいたポスター発表の様子の写真を掲載いたします。英語での発表やディスカッションをもっとできるようにしなければと思いつつ、なかなか改善できませんね(苦笑)。


2013年12月5日木曜日

リハ栄養フォーラム2014

リハ栄養フォーラム2014の日程が、下記ポスターのように決まりました。来年は全国7か所で開催させていただきます。この企画は、日本リハビリテーション栄養研究会の会員でなくても参加可能です。私は仙台以外の6か所で講演予定です。ぜひ多くの方にご参加いただければと思います。

参加申し込みの開始時期は来年2月以降ですが、今から来年の手帳やカレンダーに予定を書いておいていただけると嬉しいです。よろしくお願い申し上げます。


2013年12月3日火曜日

がん悪液質とGlasgow Prognostic Score

がん悪液質とGlasgow Prognostic Scoreのレビュー論文を紹介します。

Euan Douglas, Donald C McMillan. Towards a simple objective framework for the investigation and treatment of cancer cachexia: The Glasgow Prognostic Score. Cancer Treatment Reviews.

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0305737213002600

Glasgow Prognostic Scoreのスコアで悪液質の有無とステージを評価して、どんな介入をするかを表で示しています。主観的な項目がないので、簡単な診断基準といえます。個人的にはCRPが1mg/dl以上でないと悪液質と判断できないのは気になります。


Abstract

Progress in the treatment of progressive involuntary weight loss in patients with cancer (cancer cachexia) remains dismally slow. Cancer cachexia and its associated clinical symptoms, including weight loss, altered body composition, poor functional status, poor food intake, and poorer quality of life, have long been recognised as indicators of poorer prognosis in the patient with cancer. In order to make some progress a starting point is to have general agreement on what constitutes cancer cachexia. In recent years a plethora of different definitions and consensus statements have been proposed as a framework for investigation and treatment of this debilitating and terminal condition. However, there are significant differences in the criteria used in these and all include poorly defined or subjective criteria and their prognostic value has not been established.
The aim of the present review was to examine the hypothesis that a systemic inflammatory response accounts for most of the effect of cancer cachexia and its associated clinical symptoms on poor outcome in patients with cancer. Furthermore, to put forward the case for the Glasgow Prognostic Score to act a simple objective framework for the investigation and treatment of cancer cachexia.

2013年12月1日日曜日

第3回日本リハ栄養研究会の会長講演資料

第3回日本リハビリテーション栄養研究会学術集会in福岡が終わり、横浜に戻りました。金久さんはじめ実行委員会の皆様に改めて感謝いたします。どうもありがとうございました。

会長講演は、私の考えていることに賛成であれ反対であれ、少しでも理解していただければ幸いです。会長講演の配布資料は1週間限定公開ということで終了させていただきました。

2013年11月29日金曜日

高齢者リハビリテーション栄養

今日のカイ書林メールマガジンで、12月刊行予定の新著が紹介されました。現在最終校正中です。皆様よろしくお願い申し上げます。

若林秀隆著「高齢者リハビリテーション栄養」、カイ書林

本書は「臨床高齢者医学シリーズ」の第1作です。高齢者リハの科学的根拠も交えて,卒前教育の不十分さもカバーしています.脳卒中,大腿骨近位部骨折,転倒,認知症,廃用,虚弱,老年症候群,栄養について,リサーチ・ベーストの記述が展開されています。高齢社会ではリハはキーなので,本書を通して「リハなくして総合診療なし」というメッセージが伝わればと願っています.

2013年11月28日木曜日

NHKラジオ:ラジオあさいちばん

12月2日~6日までNHKのラジオあさいちばんの健康ライフに「要注意!サルコペニア(筋肉減少)のやせ・肥満」というテーマで出演します。朝5時37分~44分頃です。早起きできないという方は、番組HPからのポッドキャストも可能です。よかったら聞いてくださいね。

https://pid.nhk.or.jp/pid04/ProgramIntro/Show.do?pkey=702-20131202-05-70108

2013年11月23日土曜日

脳卒中は急性期病院入院中に栄養状態悪化

この論文も、急性期脳卒中患者の栄養状態が、入院後10日間で悪化することを示した報告です。

Mosselman MJ, Kruitwagen CL, Schuurmans MJ, Hafsteinsdóttir TB. Malnutrition and risk of malnutrition in patients with stroke: prevalence during hospital stay. J Neurosci Nurs. 2013 Aug;45(4):194-204. doi: 10.1097/JNN.0b013e31829863cb.

対象は73人の脳卒中患者で、10日間フォローできたのは23人のみです。23人の栄養状態は入院時、91%栄養状態良好、9%低栄養のおそれあり、0%低栄養でした。10日後は35%栄養状態良好、39%低栄養のおそれあり、26%低栄養でした。

以上より急性期病院入院後10日間で、急性期脳卒中患者の栄養状態が悪化することが示唆され、入院時だけでなく入院期間中の栄養スクリーニングが重要といえます。

急性期病院での栄養評価の推移に関する研究は難しい、と個人的に思っていました。しかし、このような形の研究であれば日本でも実現できますね。より多くの対象者数や他の疾患でも同様な研究をすることで、急性期病院での栄養評価と栄養管理の重要性を訴えたいですね。

Abstract

BACKGROUND:

Although various studies have shown high prevalence of malnutrition in hospitalized patients with stroke, recent studies on how the nutritional status of patients with acute stroke develops during the first weeks of hospital stay are scarce. Information is lacking concerning the identification of patients with stroke who are at risk of malnutrition during an acute hospital stay, because these patients may have a significant chance to improve their nutritional status.

PURPOSE:

This study aimed to investigate the prevalence of malnutrition and risk of malnutrition of patients with acute stroke during the first 10 days of hospitalization.

METHODS:

A prospective, descriptive study was conducted in a neurological department of a university hospital in The Netherlands. Seventy-three patients with acute stroke were included, of which 23 patients could be followed up after 10 days. The nutritional status was determined with the Mini Nutritional Assessment at admission and after 10 days.

RESULTS:

At admission, 5% of the patients (n = 73) were malnourished, 14% were at risk of malnutrition, and 81% were well nourished. Of the patients who could be followed up (n = 23), at admission, no patients were malnourished, 9% were at risk of malnutrition, and 91% were well nourished; whereas 10 days later, 26% of these patients were malnourished, 39% were at risk of malnutrition, and 35% were well nourished. This means that, within the followed-up group, the proportion of patients with malnutrition or risk of malnutrition increased significantly during hospital stay from 9% to 65%.

CONCLUSIONS:

Our study shows that the prevalence of malnutrition and risk of malnutrition in patients with acute stroke increases strongly during the first 10 days of admission. Therefore, screening of the nutritional status of these patients throughout this period is highly recommended to enable timely nutritional intervention and nutritional management of these patients.

10日間の入院で脳疾患の低栄養2倍

10日間の入院で、神経疾患患者(約半数が脳卒中)の低栄養の割合が約2倍になるという報告です。MNAで調査して良好、At risk、低栄養が入院時59%、34%、7%だったものが、10日後に21%、57%、22%になっています。急性期病院で栄養状態が悪化するという1つのエビデンスです。

Hafsteinsdóttir TB, Mosselman M, Schoneveld C, Riedstra YD, Kruitwagen CL. Malnutrition in hospitalised neurological patients approximately doubles in 10 days of hospitalisation. J Clin Nurs. 2010 Mar;19(5-6):639-48. doi: 10.1111/j.1365-2702.2009.03142.x.

急性期病院で栄養状態が悪化する理由として、①神経疾患・手術による侵襲、②不適切な栄養管理による飢餓が考えられます。急性期病院で低栄養になり、この状態で回復期リハ病院に転院するので、回復期でも低栄養が多いことになります。

Abstract

AIMS AND OBJECTIVES:

To measure the nutritional status of neurological patients during admission and after 10 days, with a special focus on those with malnutrition and those at risk of malnutrition, and to measure the association of clinical variables and nutritional status, which may be important for the early detection of patients at risk of malnutrition.

BACKGROUND:

Studies have shown high prevalence of malnutrition in hospitalised patients and recommend structured screening and nutritional intervention for these patients. There is a lack of information concerning the nutritional status of neurological patients.

DESIGN:

A prospective descriptive study.

METHOD:

Neurological patients (n = 196) were included from departments of neurology and neurosurgery in Dutch university hospital. Nutritional status was measured with the Mini Nutritional Assessment and functional status with the Barthel Index and the Rankin Scale at admission to the hospital and after 10 days.

RESULT:

Of the patients, 34% were at risk of malnutrition, 7% were malnourished, whereas 59% of the patients were well nourished according to the MNA. After 10 days, 57% were at risk of malnutrition, 22% were malnourished and 21% were well nourished. The total group of patients malnourished and at risk of malnutrition was 41% at admission, which had grown to 79% in 10 days. Significant association was found between various clinical variables and nutritional status.

CONCLUSIONS:

A large group of neurological patients is malnourished and at risk of malnutrition during hospital admission, and the nutritional status of most patients worsens in 10 days. Various clinical variables may be of importance in detecting malnourished patients.

RELEVANCE TO CLINICAL PRACTICE:

Nurses need to observe the symptoms of malnutrition and provide evidence-based nutritional interventions to these patients. Improved education of nurses and good collaboration between the professionals and the facilitation of hospital management is essential to improve nutritional care of neurological patients.

2013年11月21日木曜日

亜急性期高齢脳卒中の低栄養と予後

亜急性期の高齢脳卒中患者では、栄養状態が悪いと入院期間が長く、18カ月後の機能予後が悪く、死亡率が高いという報告です。MNAで30%が低栄養、53%が低栄養のおそれありです。回復期のリハ栄養的に重要な論文だと思います。

Charlton K, Nichols C, Bowden S, Milosavljevic M, Lambert K, Barone L, Mason M, Batterham M. Poor nutritional status of older subacute patients predicts clinical outcomes and mortality at 18 months of follow-up. Eur J Clin Nutr. 2012 Nov;66(11):1224-8.

Abstract

BACKGROUND/OBJECTIVES:

Older malnourished patients experience increased surgical complications and greater morbidity compared with their well-nourished counterparts. This study aimed to assess whether nutritional status at hospital admission predicted clinical outcomes at 18 months follow-up.

SUBJECTS/METHODS:

A retrospective analysis of N=2076 patient admissions (65+ years) from two subacute hospitals, New South Wales, Australia. Analysis of outcomes at 18 months, according to nutritional status at index admission, was performed in a subsample of n = 476. Nutritional status was determined within 72 h of admission using the Mini Nutritional Assessment (MNA). Outcomes, obtained from electronic patient records, included hospital readmission rate, total Length of Stay (LOS), change in level of care at discharge and mortality. Survival analysis, using a Cox proportional hazards model, included age, sex, Major Disease Classification, mobility and LOS at index admission as covariates.

RESULTS:

At baseline, 30% of patients were malnourished and 53% were at risk of malnutrition. LOS was higher in malnourished and at risk, compared with well-nourished patients (median (interquartile range): 34 (21, 58); 26 (15, 41); 20 (14, 26) days, respectively; P<0 .001="" 0.001="" 1.07-10.87="" 16.9="" 3.41="" 33.1="" 4.9="" a="" and="" at-risk="" care="" confidence="" death="" discharge="" for="" group.="" group="" hazard="" higher="" in="" interval:="" is="" level="" malnourished="" of="" p="" patients="" rate="" residential="" respectively="" the="" times="" to="" was="" well-nourished="">

CONCLUSION:

Malnutrition in elderly subacute patients predicts adverse clinical outcomes and identifies a need to target this population for nutritional intervention following hospital discharge.

2013年11月19日火曜日

MNA-SFとリハのアウトカム

MNA-SFが高齢リハ患者の臨床的なアウトカムを予測できるかを調査した論文です。オーストラリアの栄養士の論文です。

Andrew Slattery, et al. Does the Mini Nutrition Assessment—Short Form predict clinical outcomes at six months in older rehabilitation patients? Nutrition & Dietetics, DOI: 10.1111/1747-0080.12094

対象はリハ目的で入院した65歳以上の高齢者181人で、後ろ向きコホートのようです。アウトカムは入院期間、入院中の合併症、リハ活動への参加、入院中の機能変化、退院6ヶ月間の急性期病院への再入院と死亡です。

結果ですが、MNA-SFで栄養状態良好は22%、低栄養のおそれありは54%、低栄養は24%でした。低栄養のおそれあり・低栄養群では、入院期間が長く、リハ活動への参加が少なかったです。低栄養群は入院時機能が最も低く、入院中に最も改善しました。

以上より3/4の高齢リハ患者が低栄養のおそれあり・低栄養で、入院時の昨日低下、入院期間、リハ活動への参加と関連していました。低栄養はリハのアウトカムに影響を与えるため、さらなる研究と入院中の栄養状態への注意が必要という結論です。

まさにリハ栄養の論文ですし、後ろ向き研究ですから日本でも十分実現可能な研研究ですし、管理栄養士に行ってほしいです。日本で同じような調査を行えばMNA-SFで低栄養のおそれあり・低栄養の方はより多く、低栄養はリハのアウトカムに影響するでしょう。

Abstract

Aims

This study aimed to determine if nutritional status as assessed by the revised Mini Nutritional Assessment—Short Form is predictive of relevant clinical outcomes within six months in older rehabilitation patients, and to investigate the relationship between admission diagnosis and nutritional status.

Methods

A consecutive retrospective case note audit of 181 patients ≥ 65 years admitted to rehabilitation between May and November 2010 at the Repatriation General Hospital was performed. Nutritional status was assessed using the revised Mini Nutritional Assessment—Short Form. Outcomes measured included length of stay in rehabilitation, complications during admission, participation in rehabilitation activities and change in function during admission. Acute readmissions and mortality were assessed at six months post discharge from rehabilitation.

Results

Thirty-nine (22%) patients had normal nutritional status, 98 (54%) were at risk of malnutrition and 43 (24%) were malnourished. Patients at risk of malnutrition/malnourished had a longer length of stay (P = 0.008) and were more likely to be poor participators in rehabilitation activities (P = 0.006). Malnourished patients had poor function on admission to rehabilitation (P < 0.001) and had the greatest improvement in function during the rehabilitation admission (P = 0.012).

Conclusions

Over three-quarters of older rehabilitation patients were identified as malnourished or at risk of malnutrition, and this was associated with poorer function on admission, increased length of stay and poorer participation in rehabilitation activities. Thus, the issue of malnutrition is a concern as it impacts on clinical outcomes of rehabilitation and therefore, further investigation and attention to nutritional status during admission is required.

プレハビリテーションのメタ解析

プレハビリテーションのメタ解析の論文を紹介します。

D. Santa Mina, et al. Effect of total-body prehabilitation on postoperative outcomes: a systematic review and meta-analysis. Physiotherapy, http://dx.doi.org/10.1016/j.physio.2013.08.008

成人外科患者に対するプレハビリテーションの系統的レビューとメタ解析です。結果ですが、系統的レビューではプレハビリテーションで術後疼痛、入院期間、身体機能は改善しましたが、健康関連QOL、生命予後、有酸素能力は一貫した結果ではありませんでした。

メタ解析では、術後の入院期間が有意に短縮しました。これよりプレハビリテーションは入院期間短縮と術後の身体機能改善に有用な可能性がありますが、論文の質が中~低いためバイアスの可能性があるという結論です。

整形外科領域でのプレハビリテーションは賛否両論のところがありますが、外科領域でのプレハビリテーションは有用なようです。今後はどのようなプレハビリテーション介入(例えば運動+栄養+心理)がより有用かの検証が重要と思われます。

Abstract

Objective

To systematically review the evidence of pre-operative exercise, known as ‘prehabilitation’, on peri- and postoperative outcomes in adult surgical populations.

Design

Systematic review and meta-analysis.

Data sources

CENTRAL, Medline, EMBASE, CINAHL, PsycINFO and PEDro were searched from 1950 to 2011.

Methods

Two reviewers independently examined relevant, English-language articles that examined the effects of pre-operative total-body exercise with peri- and postoperative outcome analysis. Given the nascence of this field, controlled and uncontrolled trials were included. Risk of bias was assessed using the Cochrane Risk of Bias Assessment tool. Only data on length of stay were considered eligible for meta-analysis due to the heterogeneity of measures and methodologies for assessing other outcomes.

Results

In total, 4597 citations were identified by the search strategy, of which 21 studies were included. Trials were generally small (median = 54 participants) and of moderate to poor methodological quality. Compared with standard care, the majority of studies found that total-body prehabilitation improved postoperative pain, length of stay and physical function, but it was not consistently effective in improving health-related quality of life or aerobic fitness in the studies that examined these outcomes. The meta-analysis indicated that prehabilitation reduced postoperative length of stay with a small to moderate effect size (Hedges’ g = -0.39, P = 0.033). Intervention-related adverse events were reported in two of 669 exercising participants.

Conclusion

The literature provides early evidence that prehabilitation may reduce length of stay and possibly provide postoperative physical benefits. Cautious interpretation of these findings is warranted given modest methodological quality and significant risk of bias.

2013年11月13日水曜日

Yahooニュース掲載

高齢入院患者の廃用症候群の低栄養について調査したJ Rehabil Medの論文が、Yahooニュースに紹介されました。リハ栄養やサルコペニアへの関心が高まるきっかけになれば嬉しいです。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131113-00000001-cbn-soci

以下、上記HPからの引用です。

入院中に廃用症候群となった65歳以上の169人に対する調査で、88%にあたる148人が低栄養で残りの21人は低栄養のリスクがあり、栄養状態に問題がない人はいないことが分かった。横浜市立大附属市民総合医療センターリハビリテーション科助教の若林秀隆氏ら研究グループによる、入院中に起きた廃用症候群と栄養状態の関連性を調べた前向きコホート研究の中で明らかになった。リハ分野の学術誌「Journal of Rehabilitation Medicine」への掲載が決まっており、同誌のウェブサイトで概要が公開されている。【香西杏子】

2013年11月10日日曜日

Malnutrition is associated with poor rehabilitation outcome in elderly inpatients with hospital-associated deconditioning a prospective cohort study

J Rehabil Medに投稿していた高齢の廃用症候群の低栄養とリハの予後に関する論文が、ようやくEpub ahead of printになりました。まだオープンアクセスではないはずですが、下記のHPで全文見れます。

Wakabayashi H, Sashika H. Malnutrition is associated with poor rehabilitation outcome in elderly inpatients with hospital-associated deconditioning a prospective cohort study. J Rehabil Med, DOI: 10.2340/16501977-1258, Epub ahead of print

http://www.medicaljournals.se/jrm/content/?doi=10.2340%2F16501977-1258&preview=1


この研究をする中で、廃用症候群における廃用性筋萎縮は、サルコペニアを考慮したリハ栄養の視点で考えて対応しないといけないことを確信しました。その点でリハ栄養の考え方を生みだすきっかけとなった研究といえます。

今まできちんとした研究をしないで学会発表、講演、依頼原稿執筆ばかりしてきました。ようやくImpact Factorが2.134でリハのTop journalの1つであるJ Rehabil Medに論文を掲載できて、ほっとしています。

リハ栄養という言葉や考え方は3-4年前に比べればいくらか普及したと思いますが、リハ栄養の土台(エビデンス)作り(IFのある英語雑誌への原著論文掲載)は遅れていました。でもようやく土台作りの第一歩を踏み出すことができました。

今後は一発屋で終わらないように自分がリハ栄養のエビデンスを発信し続けることと、リハ栄養のエビデンスを発信できる仲間を増やすことが、当面の私の使命です。とはいえ研究だけでなくリハ栄養の臨床、教育、管理面でも頑張ります。

Abstract:

Objective: To investigate the association between nutritional status and rehabilitation outcome in elderly inpatients with hospital-associated deconditioning. Design: A prospective cohort study. Subjects/patients: One hundred sixty-nine consecutive elderly inpatients diagnosed with hospital-associated deconditioning. Methods: Nutritional status at referral was assessed by the Mini Nutritional Assessment Short Form at the University Medical Center. Body mass index, haemoglobin, albumin, total lymphocyte count, C-reactive protein, cause of malnutrition, and feeding route were also investigated. Primary outcome was Barthel Index score at discharge. Results: A total of 148 patients (87.6%) were malnourished, and 21 were at risk for malnutrition. There were no patients with normal nutritional status. Malnourished patients had a lower Barthel Index score at discharge than those at risk for malnutrition. Chronic disease-related malnutrition, oral intake, and parenteral nutrition were associated with the Barthel Index score at discharge. There were significant correlations between the Barthel Index score at discharge and nutritional score, albumin, and total lymphocyte count. In multiple regression analysis, Mini Nutritional Assessment Short Form, albumin, and chronic disease-related malnutrition were significantly associated with the Barthel Index score at discharge. Conclusion: Most elderly inpatients with hospital-associated deconditioning are malnourished. Nutritional status, albumin, and chronic disease-related malnutrition are associated with poor rehabilitation outcome in hospital-associated deconditioning.

2013年11月7日木曜日

7th Cachexia Conference抄録

12月9-11日に神戸で7th Cachexia Conferenceが開催されます。

http://www.lms-events.com/19/

その抄録がJ Cachexia Sarcopenia Muscleに掲載されていました。下記HPで抄録集を全文見ることができます。

http://download.springer.com/static/pdf/941/art%253A10.1007%252Fs13539-013-0123-9.pdf?auth66=1383947904_2ac3d168a46b5f6c5797c045b5fcd7b9&ext=.pdf

全部で演題は100弱程度です。口腔・嚥下関連の発表は、熊本リハ病院の吉村先生(番号1-22)と私(番号1-21)だけのようです。ポスターも隣になっていました。吉村先生のような美しいポスターは作れませんが、頑張ります。

2013年11月1日金曜日

Presbyphagia and sarcopenic dysphagia

Journal of Frailty and AgingのCurrent Issueに知らぬ間に(笑)、自分の論文が出ていました。

http://www.jfrailtyaging.com/current-issue.html

Wakabayashi H. Presbyphagia and sarcopenic dysphagia: association between aging, sarcopenia, and deglutition disorders.

http://www.jfrailtyaging.com/all-issues.html?article=149

Summaryだけは上記のHPで見れますが、ここにも記載しておきます。本文では先日の第19回日本摂食・嚥下リハ学会のシンポジウム「サルコペニアと摂食嚥下リハ」で発表した診断基準案も紹介させていただきました。

Summary
Presbyphagia refers to age-related changes in the swallowing mechanism in the elderly associated with a frailty in swallowing. Presbyphagia is different from dysphagia. Sarcopenic dysphagia is difficulty swallowing due to sarcopenia of generalized skeletal muscles and swallowing muscles. Age-related loss of swallowing muscle mass becomes evident in the geniohyoid muscle and tongue. Elderly subjects with both sarcopenia and dysphagia may have not only disease-related dysphagia but also sarcopenic dysphagia. In cases of aspiration pneumonia, deterioration in activity-, disease-, and nutrition-related sarcopenia of generalized skeletal muscles and swallowing muscles may develop into sarcopenic dysphagia. Assessment of sarcopenic dysphagia includes evaluation of both dysphagia and sarcopenia. The 10-item Eating Assessment Tool (EAT-10) and a water test combined with pulse oximetry are useful for dysphagia screening. Assessment of the multi-factorial causes of sarcopenia including nutritional review is important, because rehabilitation of sarcopenic dysphagia differs depending on its etiology. Consensus diagnostic criteria for sarcopenic dysphagia were proposed at the 19th Annual Meeting of the Japanese Society of Dysphagia Rehabilitation. Rehabilitation for sarcopenic dysphagia includes treatment of both dysphagia and sarcopenia. The core components of dysphagia rehabilitation are oral health care, rehabilitative techniques, and food modification. The causes of adult malnutrition may also contribute to the etiology of secondary sarcopenia and sarcopenic dysphagia. Therefore, nutrition management is indispensable for sarcopenic dysphagia rehabilitation. In cases of sarcopenia with numerous complicating causes, treatment should include pharmaceutical therapies for age-related sarcopenia and comorbid chronic diseases, resistance training, early ambulation, nutrition management, protein and amino acid supplementation, and non-smoking.

2013年10月31日木曜日

11月2日「ニュースなぜ太郎」

先週は台風で延期になりましたが、11月2日(土)の「ニュースなぜ太郎」でサルコペニア肥満の紹介をすることになりました。

初めての生放送出演でかなり緊張しますが、土曜日早起きできる方は見ていただければ嬉しいです。よろしくお願い申し上げます

tv-asahi.co.jp/nazetaro/

2013年10月28日月曜日

第3回緩和口腔ケア研究会

1月18日(土)に東京で第3回緩和口腔ケア研究会が開催されます。私は司会と運営を担当します。

https://system.smhf.or.jp/smn/oral/

 今回は「在宅における緩和口腔ケア」をテーマに、五島朋幸先生と秋山正子さんに講演していただきます。その後にパネルディスカッションを行います。この内容で参加費1000円ですし、ぜひ多くの方にご参加いただければと思います。下記HPより参加登録可能です。皆様のご参加のほどよろしくお願い申し上げます。

https://system.smhf.or.jp/smn/oral/form.cgi

2013年10月25日金曜日

低栄養は嚥下障害の原因となるか

低栄養は嚥下障害の原因となるか、という1992年の論文を紹介します。恥ずかしながら、サルコペニアの嚥下障害を考える上で重要な論文であったにも関わらず、見落としていました。

Veldee MS, Peth LD. Can protein-calorie malnutrition cause dysphagia? Dysphagia. 1992;7(2):86-101.

栄養不足が筋肉や神経の機能変化を起こすことは、1992年以前よりわかっていました。嚥下の神経・筋肉に関する研究は1992年時点でありませんが、低栄養で嚥下障害は増加・悪化し、誤嚥のリスクと関連すると推測されます。

低栄養と嚥下障害の関連をみる研究が必要です。重度の低栄養患者では、経口摂取を開始する前に栄養改善を行うことを提案します。栄養改善によって筋肉の機能が改善することで、嚥下機能の改善を期待できるためです。

蛋白カロリー低栄養が嚥下機能に負の影響を与える可能性があり、一部のケースでは臨床的に重要です。健常者の低栄養による嚥下への悪影響は少ないですが、嚥下障害患者では低栄養でより嚥下機能が悪化する可能性があります。

しかし、低栄養による嚥下障害は、他の嚥下障害の原因疾患でマスクされるため、その存在を同定することは困難です。

蛋白カロリー低栄養の呼吸機能への悪影響に関しては、素晴らしいレビュー論文があります。低栄養によって呼吸筋力が低下する結果、肺活量が減少し、残気量が増加し、最大呼吸量が減少します(呼吸筋のサルコペニアですね)。

9. Pingleton SK, Harmon GS: Nutritional management in acute respiratory failure. JAMA 257:3094-3099, 1987
10. Lewis MI, Lebman M J: Nutrition and the respiratory muscles.
Clin Chest Med 9:337-347, 1988
11. Arora NS, Rochester DF: Respiratory muscle strength and maximal voluntary ventilation in undernourished patients.
Am Rev Respir Dis 126:5-8, 1982

サルコペニアに関する記載はもちろんありませんが、飢餓による低栄養だけでなく、悪液質やストレス(侵襲)に関する記載はあります。経口摂取より栄養改善を優先すべき場合があるというのは、リハ栄養的にもうなづけます。

サルコペニアの嚥下障害の参考になるだけでなく、呼吸筋のサルコペニア、サルコペニアの呼吸障害に関する記載と参考文献がこれだけあることにも驚きました。文献検索、先行文献の重要性を改めて認識しました。

Abstract

Nutrient deprivation has previously been shown to cause alterations in muscle and nerve function. Although an effect has never been studied in the neuromusculature of deglutition, the authors argue that an effect is likely. The proposed result is an increase in swallowing impairment in dysphagic individuals and associated risk of aspiration. Research studying the relationship between malnutrition and dysphagia is needed to verify clinical significance. Until controlled studies are completed, the authors suggest alternative alimentation in repleting severely malnourished dysphagic patients prior to attempting oral diet. A review of nutritional status indices is included to aid in identifying dysphagic patients at nutritional risk. Early identification of nutritional compromise and intervention can prevent malnutrition and its deleterious effects.

2013年10月23日水曜日

ニュースなぜ太郎

「ニュースなぜ太郎」でのサルコペニア肥満の放送ですが、台風のため延期となりました。11月2日放送予定です。よろしくお願い申し上げます。

なかなかブログ更新できず申し訳ありません。毎日、原稿執筆、校正、講演準備、講演などに追われており、FacebookとTwitterまでしか手が回らない状況です。

今日はテレビ朝日の「ニュースなぜ太郎」の取材がありました。内容はもちろんサルコペニア肥満です。台風が来なければ26日(土)の朝6時~8時のどこかで放送されるはずですが、台風で翌週に延期になりそうな気がします。サルコペニア肥満に関心のある方はよかったら見てくださいね。よろしくお願い申し上げます。

http://www.tv-asahi.co.jp/nazetaro/

2013年10月10日木曜日

リハビリテーション栄養Q&A

日本リハビリテーション栄養研究会世話人のメンバーで執筆したリハビリテーション栄養Q&Aが、中外医学社から出版となりました。臨床現場でのリハ栄養の実践に役立つ書籍にしたいと考えて作りました。

https://www.chugaiigaku.jp/modules/shop/index.php?main_page=product_info&products_id=1376

若林 秀隆編著:リハビリテーション栄養Q&A、中外医学社、B5判 138頁、定価3,360円(本体3,200円+税)

内容は入門編,知識編,実践編の3つに分かれています.入門編は,リハ栄養の実践に欠かせない最低限の考え方・知識・実践に関するQ&Aとしました.

知識編は,サルコペニアを中心に,リハ栄養で重要な疾患・障害に関するQ&Aとしました.一部,難易度が高く読みごたえのあるQ&Aも含まれています.

実践編は,臨床現場で実際に困ることが多い状況に関するQ&Aとしました.リハ栄養の実践に役立つ内容になっていると考えます.

臨床現場でリハ栄養をどのように実践すればよいかというQに、できる限りわかりやすく答えた書籍にしたつもりです。多くの方に読んでいただけると嬉しいです。よろしくお願い申し上げます。

目次

1 入門編
 Q1 リハ栄養とはなんですか.なぜリハで栄養が重要なのですか. [若林秀隆] 2
 Q2 リハをしている人には低栄養が多いのですか. [吉村芳弘] 3
 Q3 低栄養の原因はなんですか. [建宮実和] 4
 Q4 低栄養はどのように評価したらよいですか. [建宮実和] 5
 Q5 低栄養の対処方法は原因によって違うのですか. [建宮実和] 7
 Q6  PT・OTですが,NSTで何をしたらよいですか.PT・OTの役割を教えてください. [石川 淳,宮崎慎二郎] 8
 Q7 リハNSTとはなんですか. [若林秀隆] 9
 Q8 どうやって職場の仲間にリハ栄養の考え方を広めたらよいですか. [建宮実和] 10
 Q9 リハ栄養に興味があります.研究会はありますか. [若林秀隆] 11
 Q10 低栄養の時にレジスタンストレーニングは禁忌ですか. [若林秀隆] 12
 
II 知識編
 Q11 侵襲の異化期と同化期とはなんですか.なにが違うのですか. [建宮実和] 14
 Q12  悪液質=ターミナルではないのですか.悪液質のステージ分類を教えてください. [荒金英樹] 15
 Q13 在宅で検査ができません.それでも栄養状態を評価できますか. [佐藤千秋] 16
 Q14 肥満のためにリハが進みにくいことはありますか. [藤原 大] 17
 Q15 肥満パラドックス(obesity paradox)とはなんですか. [吉田貞夫] 18
 Q16  リハをしている人のエネルギー必要量はどのように考えればよいですか. [藤原 大] 21
 Q17 リハをしている人の蛋白必要量はどのように考えればよいですか. [藤原 大] 22
 Q18 メッツ(METs)とはなんですか. [鈴木 恵] 23
 Q19  PT・OTの運動強度がメッツでどのくらいなのかわかりません.何か目安はありませんか. [鈴木 恵] 24
 Q20 Frailty(フレイルティ,虚弱)とはなんですか. [鈴木 恵] 25
 Q21 サルコペニア,ダイナペニア,ミオペニアはどう違うのですか. [西谷 淳] 27
 Q22 サルコペニアの診断基準を教えてください. [西谷 淳] 29
 Q23 サルコペニアにはどう対処したらよいですか. [西谷 淳] 31
 Q24 サルコペニアには分岐鎖アミノ酸がよいのですか. [西谷 淳] 32
 Q25 サルコペニアにはビタミンDは有効ですか. [吉田貞夫] 33
 Q26 サルコペニアと骨粗鬆症は合併しやすいのですか. [西谷 淳] 34
 Q27 サルコペニアにカロリー制限は有用ですか. [西谷 淳] 35
 Q28 サルコペニア肥満とはなんですか.どう対処したらよいですか. [西谷 淳] 36
 Q29 サルコペニアで嚥下障害になることがあるのですか. [森 隆志] 38
 Q30  サルコペニアでは呼吸筋も障害されるのですか.また,呼吸筋トレーニングは有効なのですか. [宮崎慎二郎] 39
 Q31 大腿骨近位部骨折の後に嚥下障害になることがあるのはなぜですか. [高橋浩平] 41
 Q32 Presbyphagia(老嚥)とはなんですか. [金久弥生] 42
 Q33 口腔機能は低栄養の時に低下するのですか. [森 隆志] 44
 Q34 持久力低下の原因はなんですか. [黄 啓徳] 46
 Q35 全身持久力低下にはどう対処したらよいですか. [黄 啓徳] 47
 Q36 ICUAWとはなんですか.廃用症候群とは違うのですか. [高橋浩平] 48
 Q37 Muscle qualityとはなんですか.改善できますか. [高橋浩平] 50
 Q38 ERAS,ESSENSEとはなんですか. [宮田 剛] 51
 Q39 Prehabilitationとはなんですか. [高橋浩平] 52
 Q40 ロコモティブシンドロームで栄養は重要ですか. [若林秀隆] 53
 Q41 回復期リハ病棟での栄養管理は,急性期や維持期と違いますか. [吉村芳弘] 54
 Q42 筋緊張が高い人や不随意運動を認める人はやせやすいのですか. [植木昭彦] 55
 Q43 運動療法には抗炎症作用があるのですか. [宮崎慎二郎] 56
 Q44 EPAとはなんですか.悪液質にはよいのですか. [荒金英樹] 58
 Q45 知的障害の人には肥満やサルコペニアが多いのですか. [山川 治] 59
 Q46 重度心身障害者で痩せている人が多いのはなぜですか. [山川 治] 60
 Q47 廃用症候群の患者には低栄養が多いのですか. [若林秀隆] 61
 Q48 脳血管疾患の人には低栄養が多いのですか. [金久弥生] 62
 Q49 大腿骨近位部骨折の人には低栄養が多いのですか. [高橋浩平] 63
 Q50 低ナトリウムなどの電解質異常とリハの効果は関連がありますか. [佐藤千秋] 64
 Q51 インスリン抵抗性に対するリハと栄養のエビデンスはありますか. [吉田貞夫] 65
 Q52  食事摂取困難ですが,アルブミン値3.4だから栄養状態は悪くないといわれました.積極的なリハを行って大丈夫でしょうか. [園田明子] 67
 Q53  リハ室まで歩ける患者ですが,栄養状態が悪いから筋トレできないといわれました.食事は十分摂れているのですが,なぜでしょうか. [園田明子] 68
 Q54  下肢切断後の体重評価,栄養必要量の設定はどう考えればよいでしょうか. [吉田貞夫] 69
 Q55  管理栄養士です.リハカンファレンスに参加したいのですが,どうしたらよいですか. [吉村由梨,吉田貞夫] 71
 Q56  PT・OTです.NSTに参加したいのですが,上司が21単位(1単位=20分)やってから参加しなさいといいます.どうしたらよいですか. [石川 淳,宮崎慎二郎] 72
 Q57  歯科医師・歯科衛生士です.リハ栄養カンファレンスで自分たちの専門性
 をどういかしていけばよいですか. [山川 治] 73
 
III 実践編
 Q58 低栄養の時はどの程度活動すればよいのですか. [若林秀隆] 76
 Q59  嚥下リハで経口摂取可能になりましたが,1日エネルギー必要量に届かない時はどうしますか. [森 隆志] 77
 Q60  サルコペニアでも慢性腎臓病(CKD)の場合には低蛋白食にするべき
 ですか. [黄 啓徳] 79
 Q61 低栄養でも糖尿病の場合にはエネルギー制限食にすべきでしょうか. [吉田貞夫] 80
 Q62  リハ栄養で有用な検査項目はなんですか.検査値の見方を教えてください. [佐藤千秋] 82
 Q63 リハ栄養で注意したほうがよい薬剤はありますか. [藤原 大] 83
 Q64 サルコペニアでも肝硬変の場合には安静にすべきですか. [若林秀隆] 84
 Q65 機能訓練中~直後に栄養剤を飲むメリットはなんですか. [植木昭彦] 85
 Q66  機能訓練中~直後に栄養剤を飲ませたいのですが,コストはどうしたらよいですか. [植木昭彦] 86
 Q67 どんな人に機能訓練中に栄養剤を飲んでもらうのがよいですか. [植木昭彦] 87
 Q68  がんの人があまり食事を摂取できないのはなぜですか.どうしたらよいですか. [荒金英樹] 88
 Q69 がんの人には積極的に運動を行った方がよいですか. [高橋浩平] 90
 Q70  がんのrefractory cachexia(不応性悪液質)のリハ栄養管理はどうしたらよいですか. [荒金英樹] 91
 Q71 重度心身障害者の偏食・拒食にどう対処したらよいですか. [山川 治] 92
 Q72  重度心身障害者の麻痺の違いによるリハ栄養管理の注意点はありますか. [山川 治] 93
 Q73 認知症の方が食事を食べてくれません.どうしたらよいですか. [吉田貞夫] 94
 Q74  誤嚥性肺炎を発症した場合のリハ栄養管理はどうしたらよいですか. [吉村由梨,吉田貞夫] 95
 Q75  誤嚥性肺炎患者の急性期の栄養管理(栄養ルート,エネルギー量)はどうしたらよいですか. [吉村由梨,吉田貞夫] 97
 Q76  小脳出血で嘔気・嘔吐があり,食事が進まない患者のリハ・栄養ケアはどうしたらよいですか. [若林秀隆] 99
 Q77 脳卒中後にうつを合併しやすいのですか.どう対応したらよいですか. [藤原 大] 100
 Q78  栄養モニタリングはどの指標を,どんな間隔で再評価したらよいですか. [佐藤千秋] 101
 Q79  レジスタンストレーニングにおける蛋白質の摂取方法として,効率のよい内容と量とタイミングはありますか. [宮崎慎二郎] 102
 Q80 有酸素運動と筋トレのうまい組み合わせ方はありますか. [黄 啓徳] 104
 Q81  腎機能低下(軽度~中等度)のあるサルコペニアの方のリハ栄養管理はどうしたらよいですか. [黄 啓徳] 105
 Q82  気管切開があり,機能訓練をしている患者の水分管理はどう考えたらよいですか. [吉田貞夫] 106
 Q83  経管栄養で胃内容物が逆流・残留する場合の栄養管理はどうしたらよいですか. [吉田貞夫] 107
 Q84  リハの効果を高めるにはどのような経管栄養剤や補助食品がよいですか. [植木昭彦] 108
 Q85 イレウス(腸閉塞)の症例のリハ栄養管理はどうしたらよいですか. [吉田貞夫] 110
 Q86  COPDの人工呼吸器離脱に難渋しています.栄養ルートの選択とリハプランはどうしたらよいですか. [高橋浩平] 112
 Q87  COPDで体重減少が著しく,いくら食べても体重が増加しません.どうしたらよいですか. [高橋浩平] 114
 Q88  末梢静脈栄養で1日300kcalしか投与していませんが,口腔・嚥下の筋トレはやっても大丈夫ですか. [若林秀隆] 115
 Q89  回復期リハ病棟を退院後に低栄養,低ADLで再入院される方がいます.在宅でのリハ栄養をどうしたらよいですか. [吉村芳弘] 116
 Q90  リハをしている糖尿病の方の食事単位は,どのように決めたらよいですか. [吉村由梨,吉田貞夫] 117
 Q91  ゼリー訓練中の誤嚥性肺炎患者ですが,認知症もあり,経鼻経管チューブを自己抜去しました(胃ろうは家族が拒否).あと2~4週間くらいリハをしたら代替栄養なくミキサー食を食べられそうなのですが,その間どう栄養管理をしたらよいですか. [園田明子] 118
 Q92 浸出液の多い褥瘡や熱傷の方のリハ栄養管理はどうしたらよいですか. [吉村芳弘] 120
 Q93  入院中に急性感染症に罹患して隔離対策となった方へのリハ栄養で,注意すべき点はありますか. [吉田貞夫] 121
 Q94  誤嚥性肺炎をくり返すため経静脈栄養のみとしましたが,肺炎は再発し,リハの中断が続いています.どう対処すればよいでしょうか. [熊谷直子] 122
 Q95  高齢者の肥満(25≦BMI<35)の患者も,若い人と同じように積極的に減量した方がよいのでしょうか. [熊谷直子] 123
 Q96  減量時のNPC/Nの設定方法と,その評価法の目安があったら教えてください. [熊谷直子] 125
 Q97  回復期リハ病棟であるため,血液検査をなかなかオーダーしてくれません.血液検査以外にリハ栄養を評価する指標を教えてください. [吉村芳弘] 127
 Q98  リハ栄養アセスメントとして身体測定を実施,評価する上で,注意しなければならない点はありますか. [熊谷直子] 128
 Q99  食事の時は義歯を装着していますが,日常生活やリハ実施時は義歯をつけていなくても支障ありませんか. [金久弥生] 130
 Q100  高度栄養障害患者に対して栄養療法を開始する場合,注意すべき点はありますか. [熊谷直子] 131

2013年10月8日火曜日

日本の地域在住高齢者のサルコペニア

日本の地域在住高齢者のサルコペニアの有病割合を調査した論文を紹介します。京都大学の山田実先生らの研究です。

Minoru Yamada, et al. Prevalence of Sarcopenia in Community-Dwelling Japanese Older Adults. Journal of the American Medical Directors Association, Available online 3 October 2013.
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1525861013005045

対象は65-89歳の健康な地域在住高齢者で男性568人、女性1314人です。サルコペニアの有無はEWGSOPの診断基準をベースにした判定基準で、筋肉量(BIA)、筋力(握力)、身体機能(10mの通常歩行速度)のうち、筋肉量減少+(筋力低下もしくは身体機能低下)としています。

結果ですが、サルコペニアと判定されたのは男性21.8%、女性22.1%でした。サルコペニアの有病割合は年齢とともに増加し、特に75歳以上の男性、女性で顕著でした。サルコペニアは、young oldでは女性が多く、85歳以上では男性が多い結果でした。

さらに転倒および転倒恐怖は、サルコペニアを有する高齢者のほうが、サルコペニアでない高齢者と比較して、有意に多かったです。以上より、日本の健康な地域在住高齢者ではサルコペニアの有病割合が高く、サルコペニアは転倒および転倒恐怖と関連するという結論です。

日本の健康な地域在住高齢者の4-5人に1人がサルコペニアであり、転倒と転倒恐怖のリスクであるというのは、インパクトがあると考えます。図を見ると80歳以上で約4割、85歳以上で5割以上です。大腿骨近位部骨折になる前に何らかの早期発見、予防介入ができるといいですね。

Abstract

Background

Sarcopenia, the age-dependent loss of skeletal muscle mass, is highly prevalent among older adults in many countries; however, the prevalence of sarcopenia in healthy Japanese community-dwelling older adults is not well characterized.

Objective

The aim of this study was to evaluate the prevalence of sarcopenia and to examine the association of sarcopenia with falls and fear of falling in community-dwelling Japanese older adults.

Design

This is a cross-sectional study.

Setting and Subjects

Healthy men (568) and women (1314) aged 65 to 89 years participated in this research.

Measurements

For all participants, 3 measurements were taken: skeletal muscle mass measurement using bioelectrical impedance, 10 m at a usual walking speed, and handgrip strength. Sarcopenia was defined as the presence of both poor muscle function (low physical performance or low muscle strength) and low muscle mass.

Results

The prevalence of sarcopenia, determined using the European Working Group on Sarcopenia in Older People–suggested algorithm, in men and women aged 65 to 89 years was 21.8% and 22.1%, respectively. The prevalence of sarcopenia increased age-dependently, especially in those older than 75 years in both genders. In the young old, the prevalence of sarcopenia was higher in women than in men; however, in those older than 85 years, the prevalence of sarcopenia was lower in women than in men (P < .05). In addition, fall incidents and fear of falling were more prevalent in sarcopenic older adults than in nonsarcopenic older adults (P < .05).

Conclusions

These results suggest that sarcopenia is highly prevalent in community-dwelling Japanese older adults and is related to falls and fear of falling. 

2013年10月1日火曜日

運動+蛋白質摂取によるGFR変化

地域在住高齢者における12週間のレジスタンス運動+運動後のたんぱく質摂取によるGFR(糸球体濾過量)の変化を見た論文を紹介します。

Ramel A, Arnarson A, Geirsdottir OG, Jonsson PV, Thorsdottir I. Glomerular filtration rate after a 12-wk resistance exercise program with post-exercise protein ingestion in community dwelling elderly. Nutrition. 2013 May;29(5):719-23. doi: 10.1016/j.nut.2012.10.002.

レジスタンス運動は12週間、週3回実施しています。たんぱく質はホエイたんぱくもしくは牛乳たんぱくを1日20g摂取、運動後に摂取しています。GFRの平均値は70.7 ± 16.9で、25.4%が60未満でした。

結果ですが、 レジスタンス運動+たんぱく質20gの摂取によって、GFRは有意に改善しました(介入後平均75.1 ± 20.2)。また、GFR60未満の群でも介入で有意に改善しました(介入前:48.9 ± 10.3、介入後53.4 ± 12.9)。

以上より、地域在住高齢者における12週間のレジスタンス運動+運動後のたんぱく質20gの摂取は、GFRに悪影響を与えないという結論です。

CKDではたんぱく質摂取を制限することが推奨されがちです。しかし、GFR60未満の群(Stage3)では、12週間の運動+たんぱく質投与によるGFR悪化は認めず、むしろ改善しました。CKDStage3では運動+たんぱく質投与をむしろ行うべきかもしれません。

Abstract

OBJECTIVE:

Increased protein intake and resistance exercise can be beneficial for maintenance of lean body mass (LBM) in older adults. However, these factors could also negatively affect renal function. We investigated changes in renal function after a 12-wk resistance exercise program combined with protein supplementation in community dwelling older adults.

METHODS:

Patients (N = 237, 73.7 ± 5.7 y, 58.2% female) participated in a 12-wk resistance exercise program (3 times/wk) designed to increase strength and muscle mass of major muscle groups. Participants were randomly assigned to one of three dietary supplements consumed directly after training: whey protein drink (20 g whey protein, 20 g carbohydrates), milk protein drink (20 g milk protein, 20 g carbohydrates), or carbohydrate drink (40 g carbohydrates). Renal function was estimated as glomerular filtration rate (GFR, Cockcroft-Gault formula), and dietary intake was measured as 3-d-weighed food record at baseline and endpoint.

RESULTS:

During the intervention, energy intake did not increase. Carbohydrate intake increased in the carbohydrate group and protein intake increased in the milk group, both approximately in accordance with the supplementation. In the whey group, protein intake did not increase, but carbohydrate intake did. GFR increased after the intervention (+4.4 mL/min/1.73 m2; P < 0.001), and the changes were similar in men and women or in the age quartiles. Changes in GFR at endpoint were not associated with LBM, dietary supplements, or total protein intake.

CONCLUSIONS:

A 12-wk resistance exercise program combined with protein supplementation in community dwelling older adults does not negatively affect GFR. The supplementation had only minor effects on total dietary intake.

2013年9月23日月曜日

EAT-10日本語版ダウンロード

本日の日本摂食・嚥下リハ学会のランチョンセミナーで「Presbyphagia(老嚥)とサルコペニアの栄養管理」という講演を行いました。その中で紹介したEAT-10日本語版を、以下のHPからダウンロードできるようにしました。

www.maff.go.jp/j/shokusan/seizo/kaigo/pdf/eat-10.pdf

今日紹介したEAT-10の研究成果は、栢下先生と一緒に執筆済みです。「摂食嚥下障害スクリーニング質問紙票EAT-10の日本語版作成と信頼性・妥当性の検証」という論文が、雑誌「静脈経腸栄養」にアクセプトされました。

要点は以下の通りです。EAT-10が実施困難もしくは3点以上の場合、軽度問題以下の嚥下障害を認める可能性(特異度)が高く、誤嚥の有無の判定に有用である。EAT-10が0-2点の場合でも、感度が低いため、嚥下障害の可能性を否定しにくい。

つまり、EAT-10で実施困難もしくは3点以上の場合、Presbyphagia(老嚥)もしくはDysphagia(嚥下障害)が疑われるため、スクリーニングテストでの評価や、VE、VFの実施による精査が必要と判断できます。

 一方、嚥下障害の病識がない方もいます。この場合、嚥下障害があってもEAT-10は0点となるため、EAT-10が0-2点の場合でも、嚥下障害がないとは言い切れません。疑わしい方の場合には、スクリーニングテストや食事場面の観察が必要です。

ただ、EAT-10日本語版をネットで入手することは、本日時点で困難でした。そのため、HPからEAT-10日本語版をダウンロードできるようにしました。この件に関しては、ネスレさんの承諾を得ておりますので、安心してご利用ください。

入院時栄養スクリーニングと同様に入院時嚥下スクリーニングとして実施することや、在宅や調剤薬局で嚥下スクリーニングとして実施することが有用かと考えます。一方、明らかに嚥下障害があると判断できる人にはメリットは少ないでしょう。

Presbyphagia(老嚥)は、嚥下のFrailty(虚弱)といえます。従来、嚥下障害はあり、なしの2択で考えてきました。これからは、なし(Health)、Presbyphagia(老嚥)、あり(Dysphagia)の3択で考えましょう。

Presbyphagia(老嚥)の高齢者が、誤嚥性肺炎を契機に「サルコペニアの嚥下障害」になるケースが増えていると思います。Presbyphagia(老嚥)の時点で早期発見して誤嚥性肺炎を予防することが重要だと考えます。

老年医学の世界では、Frailty(虚弱)という考え方は普及していますが、Presbyphagia(老嚥)はこれからだと思っています。Presbyphagia(老嚥)とDysphagia(嚥下障害)の線引きをどうするかは、今後の課題です。

サルコペニアの嚥下障害:診断基準案

本日、第19回日本摂食・嚥下リハ学会でシンポジウム3「サルコペニアと摂食嚥下リハ」の座長と発表をしてきました。

http://www.jsdr2013.jp/

事前にシンポジストと藤島一郎先生でメーリングリストで打ち合わせを行い、診断基準案を考えました。シンポジウムの最後で藤島先生が発表されましたが、口頭だけでしたので、ここに文章として記載しておきます。

サルコペニアの嚥下障害:診断基準案20130923

①嚥下障害が存在している
②全身のサルコペニアと診断されている(画像検査もしくは身体計測)
③画像検査で嚥下筋のサルコペニアがあると診断されている(これは現時点では困難です)
④嚥下障害の原因として、サルコペニア以外の疾患が存在しない(実際には高齢者では、潜在的なものも含めて脳卒中を合併することは多いですが)
⑤嚥下障害の原因として、サルコペニアが主要因と考えられる(サルコペニア以外の疾患が、嚥下障害の原因として存在してもよい)
Definite diagnosis:①、②、③、④
Probable diagnosis:①、②、④
Possible diagnosis:①、②、⑤

①、②は必須です。つまり、「サルコペニアの嚥下障害」という言葉では、全身にも嚥下筋にも筋肉量低下、筋力低下、機能低下があることを想定しています。嚥下筋のみの筋肉量低下、筋力低下による嚥下障害は、別の疾患(筋炎など)と考えます。

また「サルコペニアの嚥下障害」という言葉では、狭義のサルコペニアである「加齢による筋肉量低下」ではなく、広義のサルコペニアである「加齢以外の原因も含めた筋肉量低下、筋力低下、機能低下(嚥下では嚥下障害)」という意味とします。

ただし、広義のサルコペニアでも、疾患(特に神経筋疾患)のみで筋肉量低下、筋力低下、嚥下障害を生じている場合に「サルコペニアの嚥下障害」とは呼ばないほうがよいと考えます。加齢、活動、低栄養の要素のほうが大きい場合は別ですが。

①、②、④があれば⑤にも該当しますので、①、②、④がある場合には⑤を記載していません。ただ、①、②、③、⑤の場合と①、②、③の場合がありえますね。前者はProbable、後者はPossibleでしょうか。

ただ現時点では、画像検査(CT、MRI、エコー)で嚥下筋を評価するにしても、基準値がないので、③は困難です。ということでProbable diagnosis:①、②、④、Possible diagnosis :①、②、⑤が実用的となります。

臨床的には①、②、⑤でサルコペニアの嚥下障害の可能性があると評価することが、最も現実的です。もちろん他に嚥下障害の原因疾患がないかどうかの評価も重要ですが、Possible diagnosisでリハ栄養介入を行うという流れがよいと考えます。

本日のシンポジウムが終わりではなくスタートして、今後も今回のシンポジウムのメンバーを中心として、引き続き「サルコペニアの嚥下障害」について考え研究していきます。今後ともよろしくお願い申し上げます。

2013年9月21日土曜日

移動障害のある高齢者の低栄養

移動障害のある高齢者における低栄養の役割に関するレビュー論文を紹介します

Cederholm T, Nouvenne A, Ticinesi A, Maggio M, Lauretani F, Ceda GP, Borghi L, Meschi T. The Role of Malnutrition in Older Persons with Mobility Limitations. Curr Pharm Des. 2013 Sep 18. [Epub ahead of print]

栄養と障害は密接に関連しているというエビデンスが増えてきています。低栄養は機能障害の原因の1つとなります。一方、障害自体が低栄養の原因や悪化となります。虚弱高齢者において栄養の重要性の認識は高まりつつあります。

地中海ダイエットや高蛋白質の食事、カロテノイド、セレン、ビタミンDに関する内容がレビューされています。

虚弱高齢者における低栄養の評価と管理は当然重要ですが、障害のある高齢者ではより低栄養の評価と管理が重要になります。リハ栄養の重要性が高まりつつあることを実感できる論文です。

Abstract

Movement disability has a high prevalence in elderly population, either healthy or with chronic disease. Impaired nutritional status is a very common condition in geriatric patients too, especially if we consider elderly subjects admitted to hospital. There are growing evidences that nutrition and disability are strictly interconnected. On the one side, nutritional status is one of the multiple elements that influence the onset and the course of a functional disability; on the other side, disability itself may contribute to malnutrition onset and worsening. Nutrition may not be the sole factor involved in movement impairment in the elderly, but consciousness of its importance in frail elderly population is growing among clinicians and scientific community. In this paper we review the existing knowledge of these complex relationships, discussing the main observational and interventional studies that explored the role of nutrition in movement disability onset and recovery. We also point out how specific kinds of diet, such as Mediterranean diet or high-protein diet, are involved in disability prevention. Finally, we take a look at the existing evidence of the role of single nutrient dietary intake, such as carotenoids, selenium or vitamin D, in mobility impairment in the elderly population.

2013年9月19日木曜日

Q&Aと症例でわかる!摂食・嚥下障害ケア

藤島一郎,谷口 洋,藤森まり子,白坂誉子/編、Q&Aと症例でわかる!摂食・嚥下障害ケア、羊土社を紹介します。今週末の日本摂食・嚥下リハ学会でお披露目になると思います。

https://www.yodosha.co.jp/medical/book/9784758109703/index.html

私は、第1章Q10の「患者さんの栄養状態はどのように把握すればいいでしょうか」と、第4章の3.摂食・嚥下障害に影響を与える医療の4)絶食について、執筆させていただきました。臨床現場で役に立つ書籍ですので、多くの方に見ていただければと思います。

目次

第1章 エキスパートに聞く! なるほどQ&A

1.アセスメント・評価・診断

Q1 摂食・嚥下障害を見逃さないためには、どのようなことに注意すればよいでしょうか【白坂誉子】
Q2 摂食・嚥下障害が疑われる患者さんにまず何をすればいいでしょうか【鈴木友子】
Q3 質問紙やスクリーニングテストとはどのようなものですか【鎌倉やよい】
Q4 精度の高いスクリーニングテストはありますか【鎌倉やよい】
Q5 嚥下造影検査は、どのように行いますか【武原 格】
Q6 嚥下造影の見方を教えてください【武原 格】
Q7 嚥下内視鏡検査はどのように行いますか【西村 立】
Q8 嚥下内視鏡のみかたを教えてください【佐藤友里】
Q9 患者さんにとって適切な検査はどのように選べばよいですか【福村直毅】
Q10 患者さんの栄養状態はどのように把握すればいいでしょうか【若林秀隆】

2.治療

Q1 脳疾患の急性期において、絶食の状態からどのように経口摂取をはじめるのがよいでしょうか【小山珠美】
Q2 神経筋疾患の進行によって嚥下機能が悪化してきた場合は、どのように援助するのがよいでしょうか【寺尾聡子】
Q3 長期にわたり気管挿管されていた患者さんへのアプローチはどのように行うのがよいでしょうか【柿沼香里】
Q4 誤嚥性肺炎で絶食だった患者さんの摂食はどのようにはじめるのがよいでしょうか【鈴木友子】
Q5 経鼻胃管が挿入されている患者さんは経口摂取をしてよいのでしょうか【泉澤孝枝】
Q6 脳卒中でミキサー食が続いている患者さんが、次の段階の調整食を摂取できるようになるためにはどのような援助を行うのがよいでしょうか【宇佐美康子】
Q7 食事中ときどきむせる患者さんがいます。どのように対応するのがいいでしょうか【宇佐美康子】
Q8 手術により経口摂取を可能にすることができますか【兵頭政光】

3.リハビリ・ケア

Q1 摂食機能療法はどのように行いますか【大熊るり】
Q2 リハビリを行う際にまず考えるべきことは【大野 綾】
Q3 リハビリ訓練にはどのような種類がありますか【三鬼達人】
Q4 基礎訓練の適応と方法を教えてください【三鬼達人】
Q5 患者さんに合わせた口腔ケアの方法と注意点を教えてください【鈴木千佳代】
Q6 歯科医へのコンサルテーションはどのような場合に行いますか【鈴木千佳代】
Q7 直接訓練の進め方を教えてください【三鬼達人】
Q8 誤嚥しにくい姿勢について教えてください【三鬼達人】
Q9 嚥下反射が起こりにくい場合はどうすればいいですか【森脇元希】
Q10 患者さんが自己摂取しやすい環境調整のポイントを教えてください【佐野亜花里】
Q11 在宅療養に向けた家族への指導で、注意していることはありますか【佐野亜花里】

第2章 実践力が身につく! 症例編

1.疾患別

1)脳血管障害─球麻痺【今田智美】
2)偽性球麻痺【中野みさと】
3)パーキンソン病【臼井晴美】
4)筋萎縮性側索硬化症(ALS)【寺尾聡子】
5)脊髄小脳変性症【臼井晴美】
6)ギラン・バレー症候群【宇佐美康子】
7)認知症【鈴木葉子/伊藤史朗】
8)高次脳機能障害【鈴木葉子/伊藤史朗】
9)口腔がん、咽頭がん【青山真弓】
10)舌がん【青山真弓】
11)食道がん【鈴木恭子】
12)放射線治療の後遺症【鈴木恭子】

2.生活環境別

1)重症集中治療室【柿沼香里/杉山理恵】
2)回復期リハビリテーション【木本ちはる】
3)重症心身障害児施設【吉野綾子】
4)介護保険指定施設【田中靖代】
5)在宅療養・外来通院【藤森まり子/藤島一郎】

第3章 嚥下調整食の基本とコツ

1)嚥下調整食の特徴【栢下 淳】
2)嚥下調整食の種類と適応【栢下 淳】
3)とろみ調整食品とゲル化剤の使い方【栢下 淳】
4)介護者の負担を減らす調理方法の工夫【大塚純子】
5)嚥下調整食のレシピと市販品の利用方法【大塚純子】

第4章 摂食・嚥下障害の基礎知識

1.摂食・嚥下のメカニズム

1)「口から食べる」とはどういうことか【谷口 洋】
2)解剖・生理の基礎知識【谷口 洋】
3)小児の特徴【弘中祥司】
4)高齢者の特徴(加齢による解剖学的変化・生理学的変化)【谷口 洋】

2.定義・病態

1)摂食・嚥下障害とは【白坂誉子】
2)摂食・嚥下障害の原因【谷口 洋】
3)摂食・嚥下障害の病態【白坂誉子】
4)誤嚥と窒息(嚥下前の誤嚥、嚥下中の誤嚥、嚥下後の誤嚥)【重松 孝】
5)摂食・嚥下障害によって起こる合併症【杉山育子】

3.摂食・嚥下障害に影響を与える医療

1)気管切開【金沢英哲】
2)人工呼吸器装着【神津 玲】
3)経管栄養【田中直美】
4)絶食【若林秀隆】
5)点滴・酸素吸入【片桐伯真】
6)摂食・嚥下障害を引き起こす薬剤【中村智之】
7)吸引【大石佐奈美】

Column

摂食・嚥下障害看護認定看護師に期待すること【鎌倉やよい】

LIP:Liquid Intake Procedure【鮫島菜緒】

リハビリテーションにおけるゴール【藤島一郎】

段階的摂食訓練の意義【藤島一郎】

摂食・嚥下リハビリに期待すること【落合芙美子】

スタッフとともにつくり上げるケアの確立【外塚恵理子】

“食べることを支援する”看護の魅力とちから【戸田浩司】

プレゼンテーションの秘訣【金澤典子】

窒息【國枝顕二郎】

「合併症」と「併存症」について【杉山育子】

2013年9月16日月曜日

総合リハビリテーション2013年9月号

総合リハビリテーションの最新号(2013年9月号)で、アンチエイジングとリハビリテーションが特集されています。

http://www.igaku-shoin.co.jp/journalDetail.do?journal=35354

現状と課題、サルコペニア、骨粗鬆症、動脈硬化症、認知障害-運動療法の可能性に関する内容となっています。私はサルコペニアのところを執筆させていただきました。今まで日本語で執筆した論文の中では一番、文献が多いと思います。

ハイライトは下記HPで見ることができます。サルコペニアやアンチエイジングとリハに関心のある方はぜひ見ていただけると嬉しいです。よろしくお願い申し上げます。
http://www.igaku-shoin.co.jp/misc/pdf/sogoriha_hl/4109.pdf

2013年9月15日日曜日

第3回ヨーロッパ嚥下障害学会(ESSD)参加報告

9月13-14日とスウェーデンのマルメで開催された第3回ヨーロッパ嚥下障害学会(ESSD)に参加してきました。第1回、第2回とも参加できず、一度は参加したいと思っていた学会でした。

http://www.myessd.org/

日本からの参加者は10人強というところでした。全体の参加者はざっくり300~400人くらいです。全体的にいうと、嚥下はヨーロッパより日本のほうが進んでいるように感じました。アメリカからの講師が多かったのもあるかもしれません。

私が一番聞きたかったPresbyphagiaのセッションでは、PresbyphagiaはDysphagiaではないと言っていました。Presbyphagiaの時点で発見して筋トレなどでDysphagiaへの移行を予防することが重要です。

Presbyphagiaの話の中で、サルコペニアという言葉が数回出てきました。サルコペニアだけがPresbyphagiaの原因ではありませんが、重要な一因ではあると考えます。

しかし、嚥下筋のサルコペニア研究の紹介はありませんでした。Sarcopenic dysphagiaという言葉も出てきませんでした。他のセッションも含めて、論文で入手できないほどの新しい情報は、サルコペニア関連ではありませんでした。

一方、EAT-10を使用した研究は、私の発表も含めて150弱の演題中、5演題もありました。EAT-10に関する論文はまだ少ないですが今後、増えてくることが予測されます。ESSDとしてもEAT-10を推奨している雰囲気がありました。

増粘剤に関しては、2年前に比べれば今のほうが改善されていましたが、まだまだ日本のほうが断然進んでいます。物性に関するセッションもありましたが、液体に関する話のみで固形物に関する話はありませんでした。

嚥下の世界では日本のほうが全体的に進んでいるとはいえ、進んでいることを英語で十分発信していないので、ヨーロッパに伝わっていないというのは今回も感じました。毎回ですが英語での発信の重要性を再認識しました。

来年の第4回ESSD(ヨーロッパ嚥下障害学会)は10月23-25日にブリュッセルで開催されます。私は参加しない予定ですが(笑)、興味のある方は日程をチェックしておいてください。

2013年9月2日月曜日

3種類のサルコペニア肥満

サルコペニアの話をするときは、その定義を狭義(加齢のみによる筋肉量低下)なのか、広義(加齢、活動、栄養、疾患による筋肉量低下、筋力低下、身体機能低下)なのかを明確にしないと、話がかみ合わなくなります。

サルコペニア肥満の話をするときも同様だと私は考えています。健常者、高齢者、障害者の3種類のサルコペニア肥満に分けて考えないと、話がかみ合わなくなります。

健常者(高齢者でも障害者でもない)の場合、加齢によるサルコペニアの影響は少なく、疾患によるサルコペニアの影響はありません。つまり、健常者のサルコペニア肥満の主な原因は、活動量・運動不足と栄養(高エネルギー・低蛋白食)ということになります。

高齢者(ADLは自立していてFrailty・虚弱を含む)の場合、加齢によるサルコペニアの影響が大きいです。活動、栄養、疾患によるサルコペニアの要素を認めることも認めないこともあります。おそらく活動量・運動不足と栄養(高エネルギー食)は合併しているでしょう。

障害者(高齢者だけでなく若年者も含みます)の場合、加齢によるサルコペニアの影響は認めることも認めないこともあります。活動、栄養、疾患によるサルコペニアの要素は、認めることが多いです。活動量・運動不足と栄養(高エネルギー食)もあるでしょう。

サルコペニア肥満の種類によって、研究者も変わってきます。健常者のサルコペニア肥満は体育科学、高齢者のサルコペニア肥満は老年科学、障害者のサルコペニア肥満はリハ栄養学となります。

サルコペニア肥満の診断基準は、健常者、高齢者、障害者とも同じものを使用することは可能だと考えます。そして、主な治療が運動(有酸素運動+筋トレ)と栄養(低エネルギー・高蛋白食)であることも同じでしょう。しかし、具体的な治療内容は対象によってやや異なります。

最近、マスコミで取り上げられる機会が増えつつあるのは、健常者のサルコペニア肥満です。もちろんこれを放置すると将来、Frailty・虚弱や障害に至る可能性がより高くなるため、その早期発見と対応は大事です。私も他人事ではありません(苦笑)。

しかし、より重篤なのは高齢者と障害者のサルコペニア肥満です。そして、障害者ではサルコペニア肥満より、やせのサルコペニアを認めることが多いのが現状です。サルコペニア肥満だけでなく、やせのサルコペニアにもより関心を持っていただけると個人的には嬉しいです。

2013年9月1日日曜日

protein-energy wasting (PEW)の認知度

昨日は第35回腎臓セミナーで、「高齢者CKD/ESKD患者の低栄養・サルコペニアの病態と治療」という講演をさせていただきました。

http://www.congre.co.jp/jinsemi/program.html

高齢者CKD/ESKD患者の低栄養・サルコペニアの病態であれば当然、protein-energy wasting (PEW)に触れないわけには行きませんので、講演中にPEWの診断基準を日常的に使用している方は…と質問しました。

PEWの診断基準は、ISRNM(国際腎臓栄養代謝学会)によって、生化学的検査(アルブミン値など)、体格検査(BMI、体重減少など)、筋肉量、食事摂取量の4項目のうち、3項目以上に該当した場合と定義されています。

しかし、会場内ではPEWの診断基準を用いていると挙手された方は、誰もいませんでした…。実際、私も使っていませんので、他人のことは言えませんが、PEWが日常臨床にはほとんどとりこまれていないということですね。

ISRNMは今年になって、PEWの病因に関する論文や、PEWの予防と治療という論文を発表しています。

CKDのPEWコンセンサス論文
http://rehabnutrition.blogspot.jp/2013/02/ckdpew.html

PEWの予防・治療:ISRNMコンセンサス
http://rehabnutrition.blogspot.jp/2013/08/pewisrnm.html

国際的には関心が高まっているようですが、日本では医学中央雑誌でprotein-energy wastingで検索しても、25件しか引っ掛かりません。今年のJSPEN金沢のシンポジウムで取り上げられた程度です。

CKD/ESKD患者の栄養障害というと、過栄養、糖尿病、蛋白制限、カリウム・リン制限となりがちです。しかし、PEW・悪液質、低栄養、サルコペニア、エネルギー・蛋白強化といったところにも、より注目が集まれば嬉しいですね。

2013年8月28日水曜日

IAGGのpress article

6月にソウルで開催されたIAGG(国際老年学会)で発表した内容が、press articleとしてネスレヘルスサイエンスのHPにアップされました。vicious cycle of dysphagia-sarcopenia-dysphagiaがキーワードです。

http://www.nestlehealthscience.com/newsroom/press-releases/iagg-2013---screen-and-intervene--key-steps-to-proactively-address-geriatric-syndromes

上記HPで紹介されている内容のうち、私の発表に関連する部分だけ、ブログで紹介させていただきます。ただ、英語での発信は、発表だけでなく論文でもしていかないといけませんね。

The vicious cycle of dysphagia-sarcopenia-dysphagia
Dysphagia is a key cause of malnutrition leading to sarcopenia. But sarcopenia itself may weaken the muscles involved in swallowing, and lead to more severe dysphagia and the related risks of aspiration and pneumonia6. The importance of dysphagia management in the rehabilitation of frail elderly was addressed by Dr Hidetaka Wakabayashi of Yokohama City University Medical Center, Department of Rehabilitation Medicine, Japan. In a study of Japanese older adults with swallowing difficulty, sarcopenic dysphagia was suggested by an association between thin mid-upper arm circumference and poor swallowing function7. “A general reduction in lean body mass including those muscles involved in swallowing is responsible for this association” explained Dr Wakabayashi. These results suggest the novel concept of sarcopenic dysphagia; “however, a definition and diagnostic criteria are yet to be established”.

Screen for malnutrition and dysphagia to help those under threat of adverse events
An estimated 75% of dysphagia sufferers are undiagnosed, so Dr Wakabayashi emphasized the importance of identifying those elderly people at risk of, or already suffering from, dysphagia and malnutrition. The gold standard for screening elderly for malnutrition is the Mini Nutritional Assessment (MNA®), a simple 6-item questionnaire on appetite, weight loss, mobility, acute disease, depression/dementia and body mass index or calf circumference8. Dr Wakabayashi described a new dysphagia screening tool that has recently been developed: the 10-item Eating Assessment Tool (EAT-10). EAT-10 is a questionnaire comprising 10 questions measuring a person’s perceptions of swallowing difficulty. It is designed to rapidly identify dysphagia symptom severity. A score of three or higher indicates dysphagia risk.

 An EAT-10 validation study has been conducted in a Japanese population of 393 frail elderly people (130 men, 263 women), with a mean age of 83 years. The results, publication in press, were described. Only 21% (n=82) of respondents had normal swallowing; 44% (n=172) had dysphagia with aspiration (material in the airway) and 35% (n=139) had dysphagia without aspiration. “Although more testing is required, I am confident that the high sensitivity and specificity of EAT-10 will make it an effective tool for future routine screening for dysphagia” said Dr Wakabayashi. Rehabilitation is the next step for those people identified to suffer dysphagia, and multidomain intervention with oral hygiene, resistance exercise, and modified foods and liquids is important to combat sarcopenic dysphagia, prevent pneumonia, and avoid the spiral of decline into severe frailty.

Key References
6. Wakabayashi H, Fujimoto A. Dysphagia due to sarcopenia: potential and practice of rehabilitation nutrition. 2012. Ishiyaku, Tokyo [Japanese]
7. Kuroda Y, Kuroda R. Relationship between thinness and swallowing function in Japanese older adults: implications for sarcopenic dysphagia. J Am Geriatr Soc. 2012;60(9):1785-6.

2013年8月27日火曜日

嚥下調整食の国際コンセンサス




嚥下調整食の用語や定義に関する国際コンセンサスに向けた現状の論文を紹介します。日本からは栢下淳先生が参加しています。

Julie A. Y. Cichero, et al. The Need for International Terminology and Definitions for Texture-Modified Foods and Thickened Liquids Used in Dysphagia Management: Foundations of a Global Initiative. Current Physical Medicine and Rehabilitation Reports, doi: 10.1007/s40141-013-0024-z

下記のHPで全文見ることができますので、嚥下調整食に関心のある方はぜひ読んでください。

http://link.springer.com/content/pdf/10.1007%2Fs40141-013-0024-z.pdf

嚥下調整食は国内では日本摂食・嚥下リハ学会が基準化に向けて活動していますが、国際的にはInternational Dysphagia Diet Standardisation Initiative (IDDSI)が活動しそうです。

http://www.iddsi.org/

特筆すべきは日本の嚥下調整食が最も進んでいるようであることが、本文中に明記されていることです。これは栢下先生のお力が非常に大きいと思います。以下、論文からの引用です。

The Japanese Society of Dysphagia Rehabilitation
(JSDR) appears to be the most advanced in providing
measurable specifications for both liquids and foods. The
JSDR is also in the process of converting rheological
measures for liquids expressed in mPa s to line-spread
measure values (cm) [41]. The Japanese system of identifying
texture-modified foods is very advanced, incorporating
energy content (kcal), protein (g) and measures of
hardness, adhesiveness and cohesiveness for each food
level. Measures are also differentiated on whether the food
is served cold (15 C) or warm (45 C). With extremely
texture-modified foods, Japanese clinicians also determine
whether pure´e or jelly textures are safer or easier to
swallow. The Japanese system also includes a recommendation
for 30–40 % weight/volume for barium sulfate to be
added to foods/liquids to ensure substances are radiopaque
for videofluoroscopy examination. Addition rates of locally
available thickening agents (gels, powder thickener, agar)
per 100 ml liquid barium are also available.

以上、引用です。日本の嚥下調整食の基準がそのまま国際基準になるかどうかはわかりませんが、最も進んでいる日本抜きで話が進むようではとても困るのでよかったです。最初に示した表3、表4にも日本のトロミ、嚥下食ピラミッドの基準が明記されています。

ただ、文献を見ると日本からのものは46論文中、2つしかなさそうです。他人事ではありませんが、日本での取り組みを英語できちんと発信していかなければいけないと改めて実感しました。

Abstract
 Conservative estimates suggest that dysphagia
(difficulty swallowing) affects approximately 8 % of the
world’s population. Dysphagia is associated with malnutrition,
dehydration, chest infection and potentially death.
While promising treatments are being developed to
improve function, the modification of food texture and
liquid thickness has become a cornerstone of dysphagia
management. Foods are chopped, mashed or pure´ed to
compensate for chewing difficulties or fatigue, improve
swallowing safety and avoid asphyxiation. Liquids are
typically thickened to slow their speed of transit through
the oral and pharyngeal phases of swallowing, to avoid
aspiration of material into the airway and improve transit to
the esophagus. Food texture and liquid modification for
dysphagia management occurs throughout the world.
However, the names, the number of levels of modification
and characteristics vary within and across countries. Multiple
labels increase the risk to patient safety. National
standardization of terminology and definitions has been
promoted as a means to improve patient safety and interprofessional
communication. This article documents the
need for international standardized terminology and definitions
for texture-modified foods and liquids for individuals
with dysphagia. Furthermore, it documents the
research plan and foundations of a global initiative dedicated
to this purpose.

2013年8月25日日曜日

患者さんがこんなに変わる!基礎からわかるリハ栄養

雑誌リハビリナースの最新号(2013年5号)で「患者さんがこんなに変わる!基礎からわかるリハ栄養」という特集を組んでいただきました。発売は8月27日予定です。

http://www.medica.co.jp/catalog/m/4748

今回は特に回復期リハ病棟に勤務する看護師向けということを意識した内容にさせていただきました。執筆陣は日本リハビリテーション栄養研究会の会員の看護師に依頼しました。多くの看護師に読んでいただければと思います。よろしくお願い申し上げます。

 <1総論>
A:「回復期リハ“栄養”病棟」という考え方
 横浜市立大学附属市民総合医療センター 若林秀隆
B:低栄養と過栄養の病態
 京都府立医科大学附属病院 安江友世


<2回復期リハ病棟でのリハ栄養の基礎知識>
A:回復期リハ病棟での栄養評価
 筑波大学 日高紀久江
B:回復期リハ病棟での栄養療法と栄養モニタリング
 浅草病院 建宮実和


<3疾患・症状ごとのリハ栄養と看護>
A:脳卒中の回復期リハ栄養と看護の役割
 宇治徳洲会病院 岡田裕子
B:大腿骨頚部骨折の回復期リハ栄養と看護師の役割
 仁風会日高病院 英 裕子
C:誤嚥性肺炎における看護師の役割
 協立総合病院 近藤奈美


<4リハ栄養カンファレンス>
◆リハ栄養カンファレンスの実際
 湯布院厚生年金病院 木本ちはる

2013年8月22日木曜日

第3回日本リハ栄養研究会学術集会のご案内

11月30日、12月1日にアクロス福岡で、第3回日本リハ栄養研究会学術集会が開催されます。

https://sites.google.com/site/nutrition1130/home

事前参加登録は上記の学術集会HPから可能となっています。Facebookのために日本リハビリテーション栄養研究会に入会したくない方にも配慮して、非会員の方も事前参加登録が可能となっています(参加費は事前参加登録で8000円、当日参加で10000円です)。

私も講演させていただきますが、その他に吉田貞夫先生の「日本を元気にする!リハビリテーション栄養~超高齢社会を迎えた日本での役割~」や、百崎良先生の「臨床研究のすすめ」、大村健二先生の「リハと栄養はベストカップル」など魅力的な講演があります。

一般演題発表は、ラーニングバー形式で行います。国際学会では学会中にお酒を飲みながらディスカッションをすることもあるかと思いますが、国内学会では稀だと思います。多くの工夫をしている学術集会ですので、皆様のご参加の程よろしくお願い申し上げます。

2013年8月14日水曜日

サルコペニアとアンチエイジング

雑誌「アンチ・エイジング医学」の最新号(2013年8月号)で、サルコペニアとアンチエイジングが特集されています。雑誌HPではまだ6月号が紹介されているようです。

http://www.m-review.co.jp/magazine/id/46

私は「サルコペニアとアンチエイジング‐栄養と運動」の原稿を執筆させていただきました。特にゲノム解析や筋ジストロフィーの筋肉研究に関する原稿は、私が普段あまり目にしない内容でしたので勉強になりました。多くの方に読んでいただければ嬉しいです。よろしくお願い申し上げます。

1.サルコペニアの概念と現状ならびに診断について
2.サルコペニアのゲノム解析
3.サルコペニアの病因と疾患メカニズム
4.筋肉研究の最前線‐筋ジストロフィー
5.サルコペニアとアンチエイジング‐栄養と運動
6.サルコペニアとアンチエイジング‐ホルモンと薬剤

2013年8月8日木曜日

私のTwilog:大半の論文はこちらで紹介

最近、ブログの更新頻度が週1回程度になってきました。リハ栄養・サルコペニアでとても重要だと思う論文は、今後もブログで紹介したいと思います。ただ、ほとんどの論文はTwitterでつぶやくようになりました。

https://twitter.com/HideWakabayashi

私のTwilogのページからツイート検索していただければ、どんな論文をつぶやいているかがわかります。リハ栄養・サルコペニアに関心のある方は、私のTwitterのフォローもしくはTwilogでの検索をよろしくお願い申し上げます。

http://twilog.org/HideWakabayashi

2013年8月5日月曜日

PEWの予防・治療:ISRNMコンセンサス

ISRNM(国際腎臓栄養代謝学会)による慢性腎臓病(CKDのStage3~5)のPEW(protein energy wasting) の予防と治療に関するコンセンサス論文を紹介します。

Ikizler TA, Cano NJ, Franch H, Fouque D, Himmelfarb J, Kalantar-Zadeh K, Kuhlmann MK, Stenvinkel P, Terwee P, Teta D, Wang AY, Wanner C. Prevention and treatment of protein energy wasting in chronic kidney disease patients: a consensus statement by the International Society of Renal Nutrition and Metabolism. Kidney Int. 2013 May 22. doi: 10.1038/ki.2013.147. [Epub ahead of print]

系統的レビューではないので偏りがあるかもしれません。栄養療法の有用性はかなり強調されています。栄養介入で死亡率を改善したという大規模RCTはありませんが、栄養状態が改善することで生命予後も改善するのではと考えられています。

現状では栄養療法に蛋白同化ステロイド、成長ホルモン、運動療法を併用した統合的な治療が最も有用なようです。これはまさにリハ栄養ですね。PEWに対する薬物療法のRCTがこれほど多く行われているとは知りませんでした…。日本でもやっているのでしょうか。

Abstract

Protein energy wasting (PEW) is common in patients with chronic kidney disease (CKD) and is associated with adverse clinical outcomes, especially in individuals receiving maintenance dialysis therapy. A multitude of factors can affect the nutritional and metabolic status of CKD patients requiring a combination of therapeutic maneuvers to prevent or reverse protein and energy depletion. These include optimizing dietary nutrient intake, appropriate treatment of metabolic disturbances such as metabolic acidosis, systemic inflammation, and hormonal deficiencies, and prescribing optimized dialytic regimens. In patients where oral dietary intake from regular meals cannot maintain adequate nutritional status, nutritional supplementation, administered orally, enterally, or parenterally, is shown to be effective in replenishing protein and energy stores. In clinical practice, the advantages of oral nutritional supplements include proven efficacy, safety, and compliance. Anabolic strategies such as anabolic steroids, growth hormone, and exercise, in combination with nutritional supplementation or alone, have been shown to improve protein stores and represent potential additional approaches for the treatment of PEW. Appetite stimulants, anti-inflammatory interventions, and newer anabolic agents are emerging as novel therapies. While numerous epidemiological data suggest that an improvement in biomarkers of nutritional status is associated with improved survival, there are no large randomized clinical trials that have tested the effectiveness of nutritional interventions on mortality and morbidity.Kidney International advance online publication, 22 May 2013; doi:10.1038/ki.2013.147.

2013年8月3日土曜日

dysmobility syndrome

骨粗鬆症、サルコペニア、肥満(サルコペニア肥満)を別々に評価せず、で障害、転倒、骨折のリスクが高い高齢者をdysmobility syndromeと呼ぼうという論文です。内容的には日本のロコモに似ている気もします。リハ栄養でも重要です。

リハはそもそもdysmobility(運動障害)対策として発展してきた面があります。この論文では障害の前段階の用語として、dysmobilityを使おうと提言しています。虚弱やロコモと近い概念だと思いますが、やや違和感があります。

Binkley N, Krueger D, Buehring B: What's in a name revisited: should osteoporosis and sarcopenia be considered components of "dysmobility syndrome?" Osteoporos Int. 2013 Aug 1. [Epub ahead of print]

Abstract
Sarcopenia and osteoporosis are age-related declines in the quantity and quality of muscle and bone respectively, with shared pathogeneses and adverse health consequences. Both absolute and relative fat excess, i.e., obesity and sarcopenic obesity, contribute to disability, falls, and fractures. Rather than focusing on a single component, i.e., osteoporosis, sarcopenia, or obesity, we realized that an opportunity exists to combine clinical factors, thereby potentially allowing improved identification of older adults at risk for disability, falls, and fractures. Such a combination could be termed dysmobility syndrome, analogous to the approach taken with metabolic syndrome. An arbitrary score-based approach to dysmobility syndrome diagnosis is proposed and explored in a small cohort of older adults. Further evaluation of such an approach in large population-based and prospective studies seems warranted.

2013年7月29日月曜日

科研費:サルコペニアと嚥下障害

今年の科研費には、サルコペニアと嚥下障害に関する研究課題がいくつか採択されていました。

・サルコペニアによる摂食・嚥下機能低下の予防を目的とした電気的筋肉刺激装置の開発

・嚥下関連筋におけるサルコペニアの診断法の確立

・iPS細胞を用いた舌、咀嚼筋のサルコペニア治療法開発の試み

・近赤外分光法(NIRS)を用いた顎口腔サルコペニアの評価法

・加齢と廃用による嚥下障害に対する分岐鎖アミノ酸の効果に関する基礎的・臨床的研究

この他に、CTによるサルコペニア指標の開発およびサルコペニアによる摂食・嚥下障害の解析という課題で私も採択されましたので、合計6つですね。他にも採択されなかった課題の中に含まれていた可能性もあります。

書籍「サルコペニアの摂食・嚥下障害」の出版前が締切だったにもかかわらず、これほどサルコペニアと摂食・嚥下の課題が多いとは驚きました。それだけ関心が高い領域なのだと再認識しました。自分の研究を頑張らないといけませんね。

2013年7月22日月曜日

高齢者の最適な蛋白質摂取量

エビデンスに基づいた高齢者の最適な蛋白質摂取量に関する方針論文Position Paper を紹介します。

Jürgen Bauer, et al: Evidence-based Recommendations for Optimal Dietary Protein Intake in Older People: A Position Paper From the PROT-AGE Study Group. JAMDA, in press

下記のHPで全文読めると思います。

http://www.jamda.com/article/S1525-8610(13)00326-5/fulltext

高齢者では少なくとも1-1.2g/kg/日の蛋白質摂取が推奨されます。持久性トレーニングとレジスタンストレーニングの実施も推奨され、これらを実施している場合には1.2-1.5g/kg/日の蛋白質摂取が推奨されます。

ただし、重度の腎疾患(例:eGFRが30未満)で透析を行っていない場合には、このルールは当てはまりません。蛋白質の質、摂取のタイミング、他の栄養素摂取に関するエビデンスはまだ不十分です。

運動をしている場合に1.2-1.5g/kg/日の蛋白質摂取が推奨されることは、リハ栄養的にも重要です。また、CKDのStage3(eGFRが30以上)であれば、蛋白質摂取の制限を必要としない(特に運動を行う場合)かもしれません。これも重要ですね。

Abstract
New evidence shows that older adults need more dietary protein than do younger adults to support good health, promote recovery from illness, and maintain functionality. Older people need to make up for age-related changes in protein metabolism, such as high splanchnic extraction and declining anabolic responses to ingested protein. They also need more protein to offset inflammatory and catabolic conditions associated with chronic and acute diseases that occur commonly with aging. With the goal of developing updated, evidence-based recommendations for optimal protein intake by older people, the European Union Geriatric Medicine Society (EUGMS), in cooperation with other scientific organizations, appointed an international study group to review dietary protein needs with aging (PROT-AGE Study Group). To help older people (65 years and older) maintain and regain lean body mass and function, the PROT-AGE study group recommends average daily intake at least in the range of 1.0 to 1.2 g protein per kilogram of body weight per day. Both endurance- and resistance-type exercises are recommended at individualized levels that are safe and tolerated, and higher protein intake (ie, ≥1.2 g/kg body weight/d) is advised for those who are exercising and otherwise active. Most older adults who have acute or chronic diseases need even more dietary protein (ie, 1.2–1.5 g/kg body weight/d). Older people with severe kidney disease (ie, estimated GFR less than 30) but who are not on dialysis, are an exception to this rule; these individuals may need to limit protein intake. Protein quality, timing of ingestion, and intake of other nutritional supplements may be relevant, but evidence is not yet sufficient to support specific recommendations. Older people are vulnerable to losses in physical function capacity, and such losses predict loss of independence, falls, and even mortality. Thus, future studies aimed at pinpointing optimal protein intake in specific populations of older people need to include measures of physical function.