2012年9月9日日曜日

ESPEN参加感想初日

昨日からESPENに参加しています。タイミング的にずれていますが、初日の参加感想を記載します。特にネスレのシンポジウムSynergy in Motion: combining nutrition and exercise for optimal physical functionに参加した感想です。

内容紹介

 ①The role of nutrition in optimizing strength and function
サルコペニアでは低栄養と不活動(Inactivity)の評価、治療、予防が重要。

加齢による食欲不振はサルコペニアと関連。

全体的な低栄養と同時に部分的な低栄養(蛋白、ビタミンD、亜鉛)も重要。

サルコペニアの原因は多岐にわたるが、食欲不振、ビタミンD欠乏、廃用は介入可能。

10日間の不活動で蛋白合成は30%低下するが、蛋白投与量を増やすことで合成低下を軽減できる。

蛋白摂取量が多いとFrailtyの割合が少ない。

蛋白摂取のwhat kind, how much, whenのエビデンスは少ない。

身体活動、蛋白摂取(1g/kg/day以上)、ビタミンD欠乏改善でサルコペニアを予防する。
 

②Functional decline and nutritional status in the older adult
 
Disability Pathway

Non frail, prefrail, frail, disability IADL, disability ADL5段階。より前の段階で予防、早期発見、早期介入を行う。

FRADEA研究の紹介。

BMI20未満の群でFrailtyが最も多い。少ないのは25-3030-35の群。

BMI20未満の群で死亡率が最も高い。低いのは35以上の群。


③Physical activity programs for the older adult: Success factors
 
Poor Agingに対する不活動の影響は大きいのでは。

アメリカの女性で中等度以上の運動を行っている時間は1日当たり、6-11歳のみ70分。その他の年齢はすべて5-20分程度と不足。一方、テレビ視聴は13時間20分。

健康・長寿には、持久力トレーニング、レジスタンストレーニング、バランストレーニングが重要。

3回、11時間、6ヶ月の運動療法(上記3種)+栄養剤(糖質+蛋白質)のRCTを実施中。

個人の運動継続には、楽しくやることが最も重要。他には行動変容のステージを利用、希望する運動にする、バリアを理解することも重要。


以下、参加した感想です。思いついたことの箇条書きですみません。

・どの発表も基本的にサイエンス・エビデンス(英語の原著論文)に基づいている。エビデンスがないものは、エキスパートオピニオンとして述べている。エキスパートオピニオンではなく、エビデンスとして語れることが重要。

・栄養の学会でこれだけ運動に関する内容が多いことに感心した。JSPENでもPTOTSTNST専門療法士が少数ながら誕生し、今年は運動やリハと栄養に関する発表も増えたが、ESPENに比べたら全く不十分。

・一方、リハの学会で栄養に関する内容は、国際学会、国内学会どちらも少ない(~ない)。リハの世界における栄養への関心の低さと、ESPENでの運動への関心の高さは対照的ともいえる。

・そういった背景もあり、今回の発表はいずれも虚弱高齢者が主な対象であり、障害者が主な対象ではなかった。障害者にならないように運動と栄養で介入しようという内容ばかりであり、障害者になった場合の運動と栄養の介入をどうするかという視点はなかった。

・原因として、障害者に対する運動と栄養の介入のエビデンスが乏しいことがある。これは虚弱高齢者と比較すると、対象が多彩(個別性が高い)ために、臨床研究を行いにくいことが要因の1つであろう。

・健常ボランティアでの廃用研究と、患者での侵襲研究はそれぞれかなり行われている。しかし、高齢者で侵襲が加わって廃用となった場合の研究はあまり行われていない。多くの要因が絡んでいて、研究対象としにくいためか。廃用症候群の診断基準がないためか。

・発表者のエビデンスを中心にプレゼンすることが多いので仕方ないかもしれないが、日本発のエビデンスの紹介はほとんどなかった。ESPENの演題発表は最多にもかかわらず。英語で学会発表はしても英語で論文を執筆していないことが私も含めて疑われる。

・エビデンスがなければ(エキスパートオピニオンであれば)、こういった学会で報告されることはない。リハ栄養のエビデンスは日本で作り、日本から発信していくことが必要。

・発表のレベルはもちろんどれも高いが、日本でも質の高い発表はあり、それと比べて特別にレベルが高いということはなかった。日本の学会でも参加するプログラムを選べば、大差のないレベルで学習は可能と考える(11月の第2回日本リハビリテーション栄養研究会はそうあってほしい)。

・全体の発表の質は日本のほうが断然低い。しかし、初学者~初心者が発表して発表経験から学習できるというメリットもあるので、発表の質の低いことが一概に悪いわけではない。全国学会と地方会のすみ分けは必要かもしれないが。

・リハの臨床現場でのサルコペニアスクリーニング方法を決めて、予防や治療でリハ栄養介入すべき対象を決める簡単なフローチャートが必要。現状ではEWGSOPのサルコペニア診断とMNA-SFを初期評価時に行い、前サルコペニア、サルコペニア、重症サルコペニアの場合のリハ栄養介入内容を、低栄養の有無で決めるのがよさそう(サルコペニアがない場合も含めて低栄養の有無で4×2or3)。

・人に運動指導する前に、まず自分が日常的に運動習慣をつけることが大事(仕事の多忙を理由に運動を犠牲にしているのは、サルコペニア肥満のリスク群かも)。

・人に栄養指導する前に、まず自分が適切な飲食習慣をつけることが大事(仕事の多忙さを理由に適切な飲食を行わないのは、サルコペニア肥満のリスク群かも)。

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