2011年4月10日日曜日

盛岡市の応急給食に異論



盛岡市内55の小中学校は、被災地への配慮と物流の不安定さから、給食のおかずを通常の3品(汁ものを含む)から2品に減らす「応急給食」を順次実施するそうです。4月8日の付の河北新報を添付します。下記のHPは朝日新聞:岩手の4月8日の記事です。

盛岡市内で応急給食を実施
http://mytown.asahi.com/iwate/news.php?k_id=03000001104080005

私が調べた範囲では、盛岡市以外に応急給食を実施している教育委員会はありません(もしありましたら、ぜひ情報のご提供をよろしくお願いいたします)。なぜ食育の点でも栄養管理が大切な小中学生をターゲットにしているのでしょうか。この応急給食では、栄養価の基準を当然満たせないはずです。

物流が非常に不安定なために十分な給食の提供ができないというのであれば、おかずが減る日があってもやむを得ないかもしれません。小中学校に限らず、医療・福祉施設でも物流が不安定であったり栄養材の供給が不十分であったりという中で何とかやりくりしています。その分、おかずを増やす日もあることで対応すればよいと考えます。

しかし、河北新報の記事にある、市教育委員会学務教職員課の「盛岡でも被災地の痛みを分かち合えたらいい。摂取する熱量は減るが、家庭で十分な食事を取ってほしい」というコメントは、全く理解できません。

①盛岡市の小中学生が被災地の痛みを分かち合うことは必要でしょうか。そもそも小中学生が被災地の痛みを分かち合う必要はないと私は考えます。どうしても盛岡でも被災地の痛みを分かち合いたいのであれば、小中学生のような弱者ではなく、盛岡市の公務員が最初に分かち合うべきでしょう。盛岡市役所など行政関係のすべての食堂はもちろん、痛みを分かち合うために休業しているのでしょうね。

②小中学生が被災地の痛みを分かち合わせるとしても、その方法として給食のおかずを2品に減らすことが必要でしょうか。道路網はそれなりに復旧してきましたので、授業を1日休みにして、盛岡市の小中学生が順番に被災地の避難所や小中学校に行って、被災地の現場を見て被災した小中学生の話を聞くことのほうが、学習効果は格段に高いと考えます。おかずが少なくなることで、どれだけ被災地のことを理解できるようになるのでしょうか。

③物流が非常に不安定であれば、すべての小中学生が家庭で十分な食事を取ることは無理でしょう。その分、小中学校こそ、家庭で十分な食事を取ることができなのであれば、給食で栄養バランスのとれた十分な食事を取れるようにしましょうと逆に1品増やす対応をすべきだと考えます。同じ河北新報の記事にある一関市学校教育課の「子供にしっかり栄養を取ってもらうことが給食の役目」というのが当然でしょう。

④栄養価の基準を満たせない給食を提供しているのであれば、それに見合った授業内容にしなければいけません。例えば従来と同じような体育の授業を実施して、小中学生が怪我をしたり体重減少などの発育不良を認めたりしたら、その原因の1つは応急給食です。リハ栄養的には、適切な食事なしに適切な運動やスポーツはありえません。その責任は当然、盛岡市教育委員会にもあります。

盛岡市以外に応急給食を実施している小中学校の情報がないことからも、物流が非常に不安定なために十分な食材を確保できないということが応急給食の最大の理由とは思えません。盛岡市教育委員会の「被災地の痛みを小中学生に分かち合わせよう」という考えが最大の理由でしょう。それなら、上記のように応急給食という対応は全く間違っています。盛岡市の小中学生のために、1日も早い応急給食の中止を強く要望します。

7 件のコメント:

  1. 匿名4/11/2011

    風潮に流され、本質を見失い、
    自身の存在価値を貶める立派な立場の大人が多く驚きます。

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  2. 匿名さん、どうもありがとうございます。盛岡市教育委員会学務教職員課の職員のコメントには、私も驚きました。

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  3. この処置は、全くおかしいですね。
    若林さんのおっしゃるように、物資不足なのであれば、成長期の子供たちにしわ寄せではなく、大人たちの給食や食堂を優先すべきであり、「被災地の痛みを分かち合えたらいい」というのも、お祭り自粛と同様に正義という名を借りた誤った強制にすぎませんね。
    私のブログにも若林さんのこの日記を紹介させていただいてもよろしいでしょうか?

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  4. 山内惠子様、コメントどうもありがとうございます。
    物資不足でも物資確保に全力を当たるべきですし、しわ寄せの優先順位は大人たちの給食や食堂というのも同感です。
    ぜひ山内さんのブログに紹介していただければと思います。よろしくお願いいたします。

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  5. 早速ありがとうございます。

    ご紹介させていただきますね。

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  6. 匿名5/06/2011

    神奈川県立保健福祉大学栄養学科4年生の学生です。
    若林先生とは以前臨床栄養学の実習でお逢いしましたが、1・2回なので先生は覚えていないと思います。
    突然の書き込みですが、お許しください。
    大学で受けている授業で「給食のおかず1品減に」の話題が挙がりました。
    私も先生と同じく被災者の痛みが知りたいならばおかずを1品減らすのではなく、他に方法があるのではないかと考えました。
    授業後、大学の先生が盛岡市の問い合わせたところ、物流の不安定さのため、おかずを1品減らし、他のおかずの具は多めにするなどの対応をとっている。おかずを減らして、被災地の痛みを分かち合うつもりはない。新聞記事の表現が適切ではなかったと話していたそうです。
    盛岡市の真意はわかりませんが、この情報をお伝えしたくコメントを書かせていただきました。
    稚拙な文章で申し訳ございませんでした。

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  7. コメントどうもありがとうございます。盛岡市に問い合わせした結果も教えてくださり、とても参考になります。

    100%物流が不安定なためであれば、仮にパンと牛乳だけであってもやむを得ないと思います。ただ、やればできるのにやらないのであれば、それは大きな問題です。盛岡市ができなくて、近隣の岩手県の自治体ができているのはなぜでしょうか。それに1学期中と言わず、なるべく早期に元に戻すことも考えるべきではないでしょうか。まだまだ盛岡市の対応には疑問が残ります。

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