2011年12月31日土曜日

リハ栄養の学習の高速道路論

梅田望夫著、ウェブ時代をゆく ‐いかに働き、いかに学ぶか(ちくま新書 687)を参考に、リハ栄養の学習の高速道路論を紹介します。これはリハ栄養の山登りをしようと思っている医療人への新年メッセージです。

まず、学習の高速道路論を紹介します。以下、著書からの引用です。

「将棋の羽生善治二冠は、その変化の本質を「学習の高速道路と大渋滞」という概念として提示した。(中略)いったん言語化された知がネットを介して用意に共有されるこれからの時代は、ある分野を極めたいという意思さえ持てば、あたかも高速道路を疾走するかのようなスピードで、効率よく過去の叡智を吸収できる。」

ITとネットの進化によって、リハ栄養を学習するための高速道路ができつつあります。私がリハ栄養の山登り(山作り)をしようと決めたのが2006年、それから5年かかってようやくリハ栄養の山が見えてきたのが現状です。しかし、これからリハ栄養の山登りをする医療人は、今の私と同じところまで登るのに5年もかける必要はありません。

まず栄養面の学習ですが、医師はJSPENの認定医・指導医、コメディカルはJSPENのNST専門療法士の取得を目指すのが1つの目標になります。歯科医師に取得できる資格がJSPENにないのは問題ですが・・・。

ネットで栄養を自己学習できるツールはすでにかなり整っています。一例を紹介しますと、

バーチャル臨床栄養カレッジ
http://www.v-eiyo-college.jp/

キーワードでわかる臨床栄養
http://www.nutri.co.jp/dic/

ESPENのLLL (英語)
http://www.espen.org/lllprogramme.html

があります。特にLLLはかなりレベルが高く、認定医やNST専門療法士の取得後の自己学習に最適です。これでかなりのところまで学べるはずです。英語が大丈夫であればですが・・・。山登りするための道具・スキルがFDになりますが、その中でもITと英語は自己学習に重要なスキルです。

次にリハ栄養の学習ですが、ネットでおすすめするのはこのブログと、以下の雑誌のサイトです。

Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle (英語)
http://www.springerlink.com/content/2190-5991/

この雑誌は無料で全文見ることができます。悪液質やサルコペニアに関する基礎研究、臨床研究が掲載されますので、英語ですがおすすめです。他にも日本語でリハと栄養に関するブログがいくつか出てきています。もっと増えると嬉しいですね。

日本リハ栄養研究会への入会もおすすめします。これはFacebookベース(もちろんネット上ですね)の研究会で、リハ栄養に関する情報交換や交流ができます。
https://sites.google.com/site/rehabnutrition/

ネットではありませんが、リハ栄養の学習には、やはり以下の3冊は必須です。上から順番にリハ栄養のWhy、What、Howの書籍です。

PTOTSTのためのリハビリテーション栄養-栄養ケアがリハを変える.医歯薬出版、2010

リハビリテーション栄養ハンドブック.医歯薬出版、2010

リハビリテーション栄養ケーススタディ‐臨床で成果を出せる30症例.医歯薬出版、2011

その気になって(ここに壁がありますが)これらを駆使すれば、医療人なら誰でも数か月でリハ栄養の高速道路を走りきることは可能な環境となりました。NST専門療法士の取得も1-2年あれば十分可能です。そしてすでにリハ栄養の高速道路を走りきり、NST専門療法士を取得した医療人も増えつつあります。

高速道路を走りきっていない医療人はまず走りきることが目標になりますが、走りきった先には今後、大渋滞が起こってきます。高速道路を走りきる医療人は今後も増えていきますが、走りきった先には整備された道路がないからです。何をすればよいのかわからず走りきった後に立ち止まっている医療人もいます。以下、梅田望夫氏の著書からの引用です。

「学習の高速道路も、高速道路を走りきったなと思ったあたり(「その道のプロ」寸前)で大渋滞が起こるのだと羽生は言う。同質の勉強の仕方でたどりつけるのはそこまで。誰にでも機会が開かれるゆえ参入者も増え、しかも後の世代も次々に失踪してきては「その道のプロ」寸前での大渋滞にはまる。「その道のプロ」として飯を食い続けていけるかどうかは、大渋滞に差し掛かったあとにどう生きるかの創造性にかかっている。」

リハ栄養の高速道路を走りきった医療人はその後、どうすればよいのでしょうか。梅田望夫氏は2つの道を提示しています。以下、引用です。

「大渋滞の先でサバイバルするには、大渋滞を抜けようと「高く険しい道」を目指すか、大渋滞に差し掛かったところで高速道路を降りて標識のない「けものみち」を歩いていくか、その二つの選択肢があると私は思う。そのどちらの道を目指すにせよ、自らの「向き不向き」と向き合い、みずからの嗜好性を強く意識し(それが戦略性そのもの)、「好きを貫く」ことこそが競争力を生むと私は考える。」

著書では「高く険しい道」よりも「けものみち」のほうを推奨しているようにみえます。これは梅田氏が「けものみち」を歩いてきたからかもしれません。しかし、私は「高く険しい道」を歩いていますので、私はこちらを主に推奨したいと思います。

リハ栄養の場合、今のところ「高く険しい道」はそれほど高くも険しくもないというのが、私の考えです。リハ栄養の高速道路を走りきった医療人がまだ少ないからです。

リハ栄養の「高く険しい道」を進むには、疾患・障害を1つにしぼって、その1つの疾患・障害について深く学習して、研究テーマ(PECO作り)を持ち、観察研究(可能なら介入研究でも構いませんが)を行い、日本語の原著論文(可能なら英語がよいですが)を執筆することです。

私の場合、廃用症候群1つにしぼって、廃用症候群と栄養に関する先行研究が少ないことを知り、研究テーマ(P:廃用症候群の患者は、E:低栄養の場合、C:栄養状態良好の場合と比較して、O:リハのADL予後が悪い)を持ち、観察研究を行い、日本語と英語の原著論文を執筆しました。

Hidetaka Wakabayashi, Hironobu Sashika: Association of nutrition status and rehabilitation outcome in the disuse syndrome: a retrospective cohort study. General Medicine 12(2)p69-74, December 2011
若林秀隆、佐鹿博信:入院患者における廃用症候群の程度と栄養障害の関連: 横断研究.臨床リハ20(8)p781-785, 20118

ただし、「高く険しい道」は高速道路と異なり、数か月で走りきることはできません。日本語の原著論文が掲載されるまで、2-3年程度かかると考えておいたほうがよいでしょう。中長期計画をもたなければ、この道を進むことは困難です。でも私はこの道を多くの医療人に歩いてほしいですし、そのお手伝いを日本リハ栄養研究会で行いたいと考えています。

次にリハ栄養の「けものみち」ですが、こちらはリハ栄養というツール、スキルを活用して、リハ栄養とは別の山を登ることになります。例えば呼吸リハ、心臓リハ、腎臓リハ、肝臓リハといった内部障害リハの山登りを選択したとします。この際、リハ栄養を知っているほうが内部障害リハの山登りがかなり有利となります。

内部障害リハで栄養が重要なことは言うまでもありませんが、栄養の重要性を漠然と知っているだけの医療人と、NST専門療法士を取得しリハ栄養の高速道路を走りきった医療人との違いは大きいです。臨床でも研究でも山登りに大差がつくと私は考えています。

リハ栄養の高速道路を走りきったところで、次に「高く険しい道」を行くか「けものみち」を行くか、一定の考える時間はあってもよいと思います。でも長いこと立ち止まるのはよいことだとは思いません。ずっと立ち止まるくらいなら、まずは日本リハ栄養研究会で「高く険しい道」を一緒に歩いてみませんか。

2011年12月28日水曜日

2011年の振り返り

まだ4日ありますが、2011年の自分の成果を振り返ってみたいと思います。

学会発表筆頭演者 2010年13つ → 2011年8つ

講演(大学講義なども含め) 2010年40回 → 2011年69回

書籍 2010年 リハビリテーション栄養ハンドブック → 2011年 リハビリテーション栄養ケーススタディ 他分担執筆2つ
 

総説など依頼原稿 2010年8つ → 2011年19つ ツ・ナ・ガ・ルの連載は含めていません。 

原著論文 2010年1つ→2011年2つ ようやく英語の原著論文を執筆できました。

日本リハビリテーション栄養研究会立ち上げ 今日時点で会員数は574人です。

ブログ執筆本数 2010年353つ → 2011年415つ(これも含めて)

1年を振り返ってみると、学会発表は少なくなりましたが、講演や執筆は大幅に増えました。その内容はリハ栄養、サルコペニアに関するものが大半ですが、嚥下やFD関連もありました。量的にはもうこれで限界というのが正直なところです。質的には改善の余地が大きいですが。

なお2012年の学会発表や講演の予定は、現時点ですでに約60つあります。ですので、日にちと場所を指定された講演依頼に関しては、先約のためにお断りする機会が増えています。そうでなくても日程調整が難しいのが現状です。本当に申し訳ありません。

来年の目標は、私以外でリハ栄養の講演や執筆をできる人を全国につくることです。個人的な成果よりもずっと大事な目標ですし、これに力を注ぎます。そうすれば私が講演や執筆を引き受けることができなくても、安心して別の方を推薦できるようになりますし。

以下、今年の私の業績です。ただし、講演は記載していません。

(原著論文)

Hidetaka Wakabayashi, Hironobu Sashika: Association of nutrition status and rehabilitation outcome in the disuse syndrome: a retrospective cohort study. General Medicine 12(2)p69-74, December 2011

若林秀隆、佐鹿博信:入院患者における廃用症候群の程度と栄養障害の関連: 横断研究.臨床リハ20(8)p781-785, 20118

 (総説)

若林秀隆:リハ栄養とは.リハビリナース5(1)p72-75, 201112

若林秀隆:リハビリテーション栄養.ドクターサロン55(12)p888-893, 201112

若林秀隆:リハビリテーション栄養学:オーバービュー.臨床リハ20(11)p1000-1008, 201111

若林秀隆:経口栄養の実際を知ろう! 嚥下機能の評価.Nutrition Care 2011秋季増刊 p218-225, 201111

若林秀隆:リハビリテーションと栄養管理(総論).静脈経腸栄養26(6)p3-8, 201111

若林秀隆:リハビリテーションと栄養―回復期リハビリテーション病棟で働く皆さんへ.全国回復期リハ病棟連絡協議会機関誌10(3)p24-29, 201110

若林秀隆:「動けない……」のは栄養の問題ではありませんか? 在宅・地域における「リハビリテーション栄養」の重要性.訪問看護と介護16(10)p826-831, 201110

若林秀隆:ビタミンDと身体機能評価.臨床検査55(10)p1017-1020, 201110

若林秀隆:摂食・嚥下モデル-5期モデルとプロセスモデル.リハビリナース4(5)p489-491, 20119

若林秀隆:摂食・嚥下関連の解剖.リハビリナース4(5)p487-488, 20119

若林秀隆:NSTの形態と運営.総合リハ39(8)p765-769, 20118

若林秀隆:ブログを設けたい.臨床リハ20(7)p692-694, 20117

若林秀隆:高齢者栄養ケアの実際‐高齢者リハビリテーションと栄養.臨床栄養118(6)p687-692, 20115

若林秀隆:低栄養の病態とリハビリテーション.総合リハ39(5)p449-454, 20115

若林秀隆:リハビリテーションと臨床栄養.The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine 48(4)p270-281, 20114

若林秀隆:高齢者でよくみられる症状・疾患‐低栄養への対応.月刊薬事53(4) p491-495, 20114

若林秀隆:自分の強みを知ってさらに伸ばそう!  Nutrition Care 4(3): 283, 20113

若林秀隆:筋肉は健康のバロメーター-サルコペニアを知ろう.週刊医学界新聞2920p2, 20113

若林秀隆、中村亜紀子:横浜南部地域一体型NSTによる地域栄養連携の推進(1).臨床栄養118(1)p14-15, 20111


(著書)

若林秀隆編著:リハビリテーション栄養ケーススタディ-臨床で成果を出せる30症例.医歯薬出版、201112

若林秀隆:脳血管障害後、経口摂取が可能となった患者.吉田貞夫(編)見てわかる 静脈栄養・PEGから経口摂取へ.Nursing Mook65号.学研、pp140-144, 20116

若林秀隆:NST活動による栄養状態改善により劇的に改善した患者.出江紳一他(編)事例でわかる摂食・嚥下リハビリテーション―現場力を高めるヒント.中央法規出版、pp163-16520113


(学会発表)

Hidetaka Wakabayashi, Hironobu Sashika: Frequency and cause of malnutrition in disuse syndrome. 6th World Congress of the International Society of Physical and Rehabilitation Medicine. Puerto Rico, June 2011

若林秀隆、佐鹿博信:入院患者における廃用症候群の低栄養の有無と原因.第48回日本リハビリテーション医学会,幕張,201111

若林秀隆:神奈川摂食・嚥下リハビリテーション研究会による摂食・嚥下への支援.第12回日本認知症ケア学会,横浜,20119

若林秀隆:サルコペニアに対する周術期リハビリテーション栄養.第48回日本外科代謝栄養学会,名古屋,20117

若林秀隆:廃用症候群の高齢入院患者における低栄養の有無と原因.第2回日本プライマリ・ケア連合学会,札幌,20117

若林秀隆:入院患者における廃用症候群の低栄養の病因は何か-飢餓・侵襲・前悪液質.第26回日本静脈経腸栄養学会,名古屋,20112

若林秀隆:NSTによってもたらされたもの-リハビリテーション栄養の過去・現在と将来展望.第26回日本静脈経腸栄養学会,名古屋,20112

若林秀隆:筋萎縮による摂食・嚥下障害のリハビリテーション栄養管理.第14回日本病態栄養学会,横浜,20111

2011年12月27日火曜日

アンチエイジングとサルコペニア

アンチエイジングとサルコペニアに関するレビュー論文を紹介します。

Burks TN, Cohn RD. One size may not fit all: anti-aging therapies and sarcopenia. Aging (Albany NY). 2011 Dec 16. [Epub ahead of print]

下記のHPで全文PDFで見ることができます。

http://www.impactaging.com/papers/v3/n12/pdf/100409.pdf

アンチエイジングではカロリー制限が長寿に有効とされていますが、その原因は不明です(オートファジーが絡んでいるとは思いますが)。一方、サルコペニアに対しては運動と栄養の併用が最も有効とされていますが、サルコペニアの進行を止めるものではありません。

そうすると加齢によるサルコペニアに対しても、アンチエイジングとしての有効性が示されているカロリー制限による改善が期待されます。しかし、サルコペニアの原因は加齢以外にもあるため、カロリー制限のみではサルコペニア対策として不十分です(One size may not fit all)。

特に栄養(飢餓)によるサルコペニアの場合、カロリー制限はむしろ禁忌となります。加齢以外の要因がまったくないサルコペニアでむしろサルコペニア肥満傾向であれば、カロリー制限+運動のよい適応になりますが、サルコペニアの要因を考えずに何でもカロリー制限というのは危険だと思います。

Abstract
Sarcopenia refers to age-related loss of muscle mass and function. Several age-related changes occur in skeletal muscle including a decrease in myofiber size and number and a diminished ability of satellite cells to activate and proliferate upon injury leading to impaired muscle remodeling. Although the molecular mechanisms underlying sarcopenia are unknown, it is tempting to hypothesize that interplay between biological and environmental factors cooperate in a positive feedback cycle contributing to the progression of sarcopenia. Indeed many essential biological mechanisms such as apoptosis and autophagy and critical signaling pathways involved in skeletal muscle homeostasis are altered during aging and have been linked to loss of muscle mass. Moreover, the environmental effects of the sedentary lifestyle of older people further promote and contribute the loss of muscle mass. There are currently no widely accepted therapeutic strategies to halt or reverse the progression of sarcopenia. Caloric restriction has been shown to be beneficial as a sarcopenia and aging antagonist. Such results have made the search for caloric restriction mimetics (CRM) a priority. However given the mechanisms of action, some of the currently investigated CRMs may not combat sarcopenia. Thus, sarcopenia may represent a unique phenotypic feature of aging that requires specific and individually tailored therapeutic strategies.

低栄養脳卒中患者は機能予後不良

急性期脳卒中患者において低栄養が長期機能予後に与える影響をみた台湾の観察研究を紹介します。

Shen HC, Chen HF, Peng LN, Lin MH, Chen LK, Liang CK, Lo YK, Hwang SJ. Impact of nutritional status on long-term functional outcomes of post-acute stroke patients in Taiwan. Arch Gerontol Geriatr. 2011 Sep-Oct;53(2):e149-52.

483人の初回脳卒中患者のうち、95人(19.7%)が低栄養で、310人が6ヶ月後に生存し、244人が機能予後が良好でした。多変量解析で機能予後不良に関連する独立した因子は、高齢、入院時のNIHSS得点、低栄養でした。以上より脳卒中では急性期  より低栄養に配慮すべきとしています。

急性期脳卒中で低栄養の場合に機能予後が悪いことはFOOD Trialで検証されていますが、今回も同様の結果です。脳卒中が重症で侵襲が高度の場合に低栄養になりやすく、このような患者で予後が悪い可能性もありますが、急性期から栄養管理が重要であることは確かだと考えます。

Abstract
Nutritional status is important in stroke care, but little is known regarding to the prognostic role of nutritional status on long-term functional outcomes among stroke survivors. The main purpose of this study was to evaluate to the prognostic role of nutritional status on long-term functional outcomes among stroke survivors. Data of acute stroke registry in Kaohsiung Veterans General Hospital were retrieved for analysis. Overall, 483 patients (mean age = 70.7 ± 10.3 years) with first-ever stroke were found. Among them, 95 patients (19.7%) were malnourished at admission, 310 (mean age = 70.4 ± 10.1 years, 63.5% males) survived for 6 months, and 244 (78.7%) had good functional outcomes. Subjects with poor functional outcomes were older (74.7 ± 8.9 vs. 69.0 ± 10.1 years, p < 0.001), more likely to be malnourished (56.2% vs. 26.6%, p < 0.001), to develop pneumonia upon admission (23.3% vs. 12.7%, p = 0.027), had a longer hospital stay (23.5 ± 13.9 vs. 12.5 ± 8.2 days, p < 0.001), had a higher National Institutes of Health Stroke Scale (NIHSS) score (12.9 ± 9.3 vs. 4.9 ± 4.3, p < 0.001), poorer stroke recovery (NIHSS improvement: 6.9% vs. 27.4%, p = 0.005), and poorer functional improvement (Barthel index = BI improvement in the first month: 31.4% vs. 138%, p < 0.001). Older age (odds ratio = OR) = 1.07, 95% confidence interval (CI = 1.03-1.11, p<0.001), baseline NIHSS score (OR = 1.23, 95%CI = 1.15-1.31, p < 0.001) and malnutrition at acute stroke (OR = 2.57, 95%CI: 1.29-5.13, p<0.001) were all independent risk factors for poorer functional outcomes. In conclusion, as a potentially modifiable factor, more attentions should be paid to malnutrition to promote quality of stroke care since the acute stage.

2011年12月26日月曜日

ロールモデル思考法

梅田望夫著、ウェブ時代をゆく‐いかに働き、いかに学ぶか、ちくま新書687のより、第4章のロールモデル思考法を紹介します。

http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480063878/

目次
序章 混沌として面白い時代
第1章 グーグルと「もうひとつの地球」
第2章 新しいリーダーシップ
第3章 「高速道路」と「けものみち」
第4章 ロールモデル思考法
第5章 手ぶらの知的生産
第6章 大組織vs.小組織
第7章 新しい職業
終章 ウェブは自ら助くる者を助く

まず、ロールモデル思考法について、斎藤孝×梅田望夫対談「大人の作法」前編のHPより引用します。このHPも面白いです。
http://www.chikumashobo.co.jp/new_chikuma/saitou_umeda/01_3.html

梅田 『ウェブ時代をゆく』では、これまで僕自身が実践してきた考え方を「ロールモデル思考法」と名付けて詳述しました。自分が生きていく上で、自分と合った信号をいろんなところから受け取りながら自分の行く道を決めていく。ロールモデルを常に設定しながら生きていくことによって、自分のやりたいことや好きなこと、個性を見いだしていこう、という考え方です。

以上、引用です。 キャリアを考える上で、できること、やりたいこと、やるべきこと(価値あること)の3つが重なった山を登ればよいといいますが、やりたいこと探しはなかなか大変です。一定の経験は必要ですし、考えることも必要です。考えてばかりで経験を積まないとそもそもキャリアを歩めませんし、経験ばかりで振り返ったり考えたりしないと漂流しがちです。

そこで、「ある人の生き方のある部分」「ある仕事に流れるこんな時間」「誰かの時間の使い方」「誰かの生活の場面」など、人生のありとあらゆる局面に関するたくさんの情報から、自分と波長の合うロールモデルを丁寧に収集します。そしてなぜその対象に惹かれたのかを考え続ける。それを繰り返していくと、たくさんのロールモデルを発見することが、すなわち自分を見つけることなのだとだんだんわかってくるそうです。

振り返ってみれば自分も何人かロールモデルとなる方を決めて、その方に近づけるように努力してきたところが大きいです。ロールモデルを設定して考えて行動して振り返って、また新たなロールモデルを設定するという経験学習モデルをまわし続けることが、やりたいこと探しの近道だなと感じました。今度のキャリアデザインワークショップで使おうと思います。

ちなみに私のロールモデルの共通点をいくつか考えてみると、

・講演や話が面白い
・その道(専門)に関して第一人者である
・講演や執筆・著書が多い
・美味い食事と酒をよく知っている
・コメディカルを大切にしている
・異性にモテる
・大学病院に勤務していない

ですね(笑)。そう思うと、私はロールモデルに程遠いです…。

第4章の最後の言葉もなかなかよいので引用させていただきます。言うは易く、行うは難しですが、以下引用です。

物事がうまくいかず、悔しい思いをすることも人生では多々ある。そんなときは「いずれ幸福に暮らすことが最高の復讐だ」「幸福とは、いつか自分が好きを貫いて生きている状態になることだ」とでも思って「負のエネルギー」を「正のエネルギー」に変え。「好きを貫く」長期戦を生きてほしいと思う。

2011年12月25日日曜日

細胞が自分を食べる‐オートファジーの謎

水島昇著、細胞が自分を食べる‐オートファジーの謎、PHPサイエンス・ワールド新書を紹介します。

http://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-80071-4

最初にオートファジーの定義をWikipediaから引用します。以下、下記HPからの引用です。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%B8%E3%83%BC
「オートファジー (Autophagy) は、細胞が持っている、細胞内のタンパク質を分解するための仕組みの一つ。自食(じしょく)とも呼ばれる。酵母からヒトにいたるまでの真核生物に見られる機構であり、細胞内での異常なタンパク質の蓄積を防いだり、過剰にタンパク質合成したときや栄養環境が悪化したときにタンパク質のリサイクルを行ったり、細胞質内に侵入した病原微生物を排除することで生体の恒常性維持に関与している。」

以上、引用です。

この書籍はオートファジーに関する初めての書籍で、わかりやすく解説されています。リハ栄養やサルコペニアとの関連でいうと、飢餓や侵襲のとき、オートファジーが亢進して、筋肉などの蛋白質の分解が増えます。適度なオートファジーは生体に必須であり、オートファジーが起こらないとアミノ酸プールを満たすことができず、飢餓や侵襲を乗りきることが難しくなります。

一方、侵襲時の過度なオートファジーは多くの細胞死につながります。そのため、外科代謝・侵襲分野での関心が高く、Surgery Frontierの2011年6月号では、オートファジーが特集されています。

http://www.m-review.co.jp/shop/goods.html?item_base_id=3167&PHPSESSID=jp6cec6h9lv8u9qp0594lfj6u3

特集によせて
1.オートファジーの膜形成機構と生体における役割
2.オートファジー研究の位置付けと動向
3.オートファジーの測定・解析方法
4.オートファジー関連疾患
5.癌に対する新規治療とオートファジー

また、アンチエイジング領域では、カロリー制限で寿命が延長することが報告されています。この要因の1つとして、カロリー制限(一時的もしくは軽度の飢餓)によってオートファジーが亢進して、細胞内をきれいにできる(機能の低下したミトコンドリアを処理することで酸化ストレスを少なくする)ことの可能性はあります。

線虫の研究では断続的なカロリー制限(いわゆるプチ断食)でも寿命延長効果があることがわかっているそうです。ただし、オートファジーが関連しているかどうかは不明とのことです。栄養とオートファジーの関連が深いことは確かなようですので、関心のある方は、この書籍でオートファジーの基本を学ぶことをお勧めします。

目次
第1章 オートファジー、細胞内の大規模分解系
第2章 酵母でブレークしたオートファジー研究
第3章 自分を食べて飢餓に耐える
第4章 細胞の性質を変えるためのオートファジー、発生と分化
第5章 細胞内を浄化するオートファジー
第6章 相手をねらいうちする「選択的オートファジー」
第7章 免疫系でも活躍するオートファジー
第8章 オートファジーの研究最前線

なお「オートファジーの現場をとらえる-細胞が自分を食べる理由-」というHPも参照になりますので、あわせて紹介しておきます。

http://www.brh.co.jp/seimeishi/journal/45/research_21.html

2011年12月24日土曜日

静脈経腸栄養のリハ栄養特集

雑誌「静脈経腸栄養」のVol26(6)で「リハビリテーションの栄養管理」の特集記事が組まれていますが、その原稿が下記のHPでPDFで公開されました。

http://www.jstage.jst.go.jp/browse/jjspen/26/6/_contents/-char/ja/

「静脈経腸栄養」ではじめてのリハ特集ですし力作ばかりですので、まだ読んでいない方はぜひ一度見ていただければと思います。よろしくお願いいたします。

リハビリテーションと栄養管理 (総論) 1339-1344 若林 秀隆
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspen/26/6/1339/_pdf/-char/ja/

リハビリテーションの栄養管理における薬剤師の役割 1345-1350 林 宏行
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspen/26/6/1345/_pdf/-char/ja/

リハビリテーション栄養における看護師の役割 1351-1358 小山 珠美
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspen/26/6/1351/_pdf/-char/ja/

リハビリテーションにおける栄養管理の効果判定 1359-1364 開 登志晃, 田村 聡子
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspen/26/6/1359/_pdf/-char/ja/ 

術後早期のリハビリテーションの栄養管理 1365-1370 佐藤 弘
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspen/26/6/1365/_pdf/-char/ja/ 

脳卒中後の嚥下リハビリテーションの栄養管理 1371-1378 三原 千惠
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspen/26/6/1371/_pdf/-char/ja/

摂食・嚥下リハビリテーションにおける歯科医師, 歯科衛生士の役割 1379-1383 藤本 篤士
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspen/26/6/1379/_pdf/-char/ja/

2011年12月22日木曜日

世界一受けたいリハ栄養の授業

雑誌「リハビリナース」で最新号(2012年1号)から、「世界一受けたいリハ栄養の授業」という6回予定の連載が始まりました。リハ栄養の連載は、今回が初めてかもしれません。嬉しいですね。

http://www.medica.co.jp/magazine/view?id=2267

初回は私が「リハ栄養とは」というテーマで執筆しました。2回目から6回目は私ではなく、私のほうで厳選(という名の無茶ぶり・笑)をした看護師の方たちに執筆していただく予定です。

看護師以外の職種がリハビリナースを読むことは少ないので、多くの看護師に見ていただき、リハ栄養の基本を知っていただければと思います。よろしくお願いいたします。

2011年12月21日水曜日

初めてのリハ栄養英語論文掲載

今日、自分の執筆した論文が掲載されたGeneral Medicineが届きました。ここまでに来るには本当にいろいろありましたが、初めての英語論文です。いつか下記のHPでPDFで読めるようになるはずですが、抄録だけここで紹介しておきます。

http://www.jstage.jst.go.jp/browse/general/_vols/-char/ja

自分の論文なので批判的吟味はしません(笑)。というか欠点は十分承知しております。廃用症候群でリハ栄養の研究に関心があるという方は、この論文の考察の最後に限界をいくつか記載していますので、私と同じ失敗をしないようにしてくださいね。

Hidetaka Wakabayashi, Hironobu Sashika: Association of nutrition status and rehabilitation outcome in the disuse syndrome: a retrospective cohort study. General Medicine 12(2)p69-74, 2011

Abstract:
Background: To determine whether nutrition is associated with rehabilitation outcome in the disuse syndrome.
Methods: A retrospective cohort study was performed in 223 inpatients admitted to a university hospital who were diagnosed by physicians in the rehabilitation department as having the disuse syndrome, and subsequently prescribed physical therapy. Malnutrition was defined as a body mass index<18.5 kg/m2, hemoglobin level<10.0 g/dl, serum albumin level<3.0 g/dl, or total lymphocyte count<1200 cells/mm3. Rehabilitation outcome was defined as whether or not the ADL score improved during rehabilitation. Nutritional status was assessed at referral using the Onodera’s prognostic nutritional index (PNI).
Results: The study cohort included 136 men and 87 women (mean age 67.5 years; median duration between admission and referral 17 days; median rehabilitation duration 32 days). A total of 202 patients (91%) were defined as being malnourished. Mean PNI was 32.9, with the ADL score improving in 135 patients (61%) during rehabilitation. Rehabilitation outcome was better in patients with normal nutrition compared to malnourished patients (relative risk: 0.72, p=0.04). Patients with a hemoglobin level>10.0 g/dl (relative risk: 0.69, p=0.001), total lymphocyte count>1200 cells/mm3 (relative risk: 0.78, p=0.03), or PNI>35.0 (relative risk: 0.74, p=0.01) had a better rehabilitation outcome. Logistic regression analysis showed that hemoglobin level was associated independently with rehabilitation outcome (odds ratio 2.34, p=0.005).
Conclusions: Malnutrition is common in patients with the disuse syndrome. Patients with low hemoglobin level and PNI at referral are more likely to have a poor rehabilitation outcome.

頭頚部がんの周術期栄養療法

頭頚部がん患者に対する周術期栄養療法の研究を紹介します。

Weed HG, Ferguson ML, Gaff RL, Hustead DS, Nelson JL, Voss AC. Lean body mass gain in patients with head and neck squamous cell cancer treated perioperatively with a protein- and energy-dense nutritional supplement containing eicosapentaenoic acid. Head Neck. 2011 Jul;33(7):1027-33. doi: 10.1002/hed.21580.

体重減少を認め手術予定の頭頚部がん患者31人を対象に、手術2週間以内に通常の食事もしくは経管栄養に加えて、プロシュア(1本300kcal、蛋白16g、EPA1.08g)を投与しました。術前に平均1.8本、入院期間中に平均1.5本摂取しました。

その結果、70%の患者で入院前の体重を維持もしくは改善できました。平均の体重増加は入院時で0.71kg、退院時で0.66kgでした。退院時に除脂肪体重は3.2kg増加し、脂肪は3.19kg減少しました。以上よりプロシュアは、体重減少を認め手術予定の頭頚部がんの除脂肪体重増加に有効かもしれないとしています。

EvansやFearonの悪液質診断基準は使用していませんが、22人がstage4であり、平均12%の体重減少を認めていますので、今回の対象患者の多くが悪液質と推測されます。ただし、対照群のない前後研究ですので、EPAがよいのか蛋白がよいのかエネルギー摂取がよいのかプラセボでも同じなのかは不明です。

ただし、周術期栄養療法が有効な可能性はあります。リハ栄養的には、術前から入院中、退院後にかけて、栄養療法と運動療法を併用するPrehabilitationを行いたいと思います。

Abstract
BACKGROUND: Cancer-associated weight loss may be mediated by an inflammatory response to cancer. Eicosapentaenoic acid (EPA) may suppress this response.

METHODS: Beginning no later than 2 weeks before surgery, patients with head and neck cancer and with weight loss, who were undergoing major resection with curative intent consumed a protein- and energy-dense nutritional supplement containing EPA from fish oil, in addition to usual diet or tube feed.

RESULTS: Thirty-one subjects consumed an average of 1.8 containers/day before surgery and 1.5/day during hospitalization (per container: 300 kilocalories, 16 grams (g) protein, 1.08 g EPA). Seventy percent of subjects maintained or gained weight before hospital admission. Mean weight gain was 0.71 kg at admission and 0.66 kg at discharge. At discharge lean body mass increased by 3.20 kg (p < .001) and fat decreased by 3.19 kg (p < .001).

CONCLUSIONS: An EPA-containing protein- and energy-dense nutritional supplement may help increase perioperative lean body mass in patients with head and neck cancer-related weight loss.

2011年12月20日火曜日

サルコペニアとインスリン抵抗性・ミトコンドリア機能障害

サルコペニアとインスリン抵抗性・ミトコンドリア機能障害に関するレビュー論文を紹介します。

Abbatecola AM, Paolisso G, Fattoretti P, Evans WJ, Fiore V, Dicioccio L, Lattanzio F. Discovering pathways of sarcopenia in older adults: a role for insulin resistance on mitochondria dysfunction. J Nutr Health Aging. 2011;15(10):890-5.

サルコペニアの正確な原因は不明ですが、インスリン抵抗性と加齢によるミトコンドリア機能障害が骨格筋減少の一因であることは明らかです。そこで仮説として、高度のインスリン抵抗性がミトコンドリアの機能変化を介してサルコペニアと関連していることを提唱しています。

インスリン抵抗性とミトコンドリア機能障害の関連は確かなようですが、どちらが原因でどちらが結果か、因果関係にないのかは不明です。インスリン抵抗性に対して食事・運動・薬物療法を行いますが、加齢によるサルコペニアを認める高齢者にそのまま食事・運動・薬物療法を行えばよいかどうかは今後の研究課題ですね。

Abstract
The precise cause of sarcopenia, skeletal muscle loss and strength, in older persons is unknown. However, there is a strong evidence for muscle loss due to insulin resistance as well as mitochondrial dysfunction over aging. Considering that epidemiological studies have underlined that insulin resistance may have a specific role on skeletal muscle fibre atrophy and mitochondrial dysfunction has also been extensively shown to have a pivotal role on muscle loss in older persons, a combined pathway may not be ruled out. Considering that there is growing evidence for an insulin-related pathway on mitochondrial signaling, we hypothesize that a high degree of insulin resistance will be associated with the development of sarcopenia through specific alterations on mitochondrial functioning. This paper will highlight recent reviews regarding the link between skeletal muscle mitochondrial dysfunction and insulin resistance. We will specifically emphasize possible steps involved in sarcopenia over aging, including potential biomolecular mechanisms of insulin resistance on mitochondrial functioning.

蛋白摂取と骨折リスク:症例対照研究

高齢者の蛋白摂取と骨折リスクを調査した症例対照研究を紹介します。

María José Martínez-Ramírez, et al: Protein intake and fracture risk in elderly people: A case-control study. Clinical Nutrition doi:10.1016/j.clnu.2011.11.016

65歳以上の高齢者の低エネルギー骨折症例167例と、年齢と性別でマッチさせた骨折の既往のない高齢者167人を対照として、蛋白・カルシウムなども含めた食事摂取を調査しました。

結果ですが、動物性蛋白質に関して対照群のほうが摂取量が有意に多かったです(植物性蛋白質と比較しても)。また、蛋白摂取量が1日エネルギー摂取量の15%以下の場合、骨折のオッズ比が2.86倍と有意に高くなりました。これより動物性蛋白質や蛋白質全般の摂取量が少ない場合に、骨折リスクが高くなる可能性があります。

ただ、今回の研究では症例と対照のBMI、筋肉量、栄養状態などが示されていません。対照群のほうが筋肉量が多く、栄養状態や全身状態がよいため、食事バランスもよく骨折が少ない可能性があります。高齢者でも蛋白摂取量を多めにすべき(CKD除く)だとは思っていますが、今回の研究だけでは不十分かと感じます。

Summary

Background and aims
We investigated whether protein intake (PI) is related to osteoporotic fractures (OP) in the elderly by analyzing vegetable protein intake (VPI), animal protein intake (API), and animal/vegetable protein intake ratio (AVR) and by calcium intake (CaI).

Methods
 A 1:1 matched by age and sex case–control study with 167 cases was carried out at the Hospital of Jaen (Spain). Cases were patients aged ≥65 years with a low-energy fracture. Controls were people without previous fractures. Diet was assessed by a food frequency questionnaire. Multivariable analyses were fitted using analysis of covariance (for comparison of adjusted means) and conditional logistic regression (estimating adjusted odds ratios [ORs]).

Results The control-group showed a higher API (p = 0.046) even when CaI was < 800 mg/day (p = 0.041). ORs for AVR were 0.68 (0.38–1.19) and 0.38 (0.15–0.98), respectively with a p for trend = 0.046. A PI < 15% of the total energy intake showed an OR of 2.86 (1.10–7.43).

Conclusions Patients with fracture history have lower API suggesting that high API reduce the occurrence of OP in elderly even if CaI is < 800 mg/day. A PI < 15% of total calories were associated with an increased risk of OP in elderly.

2011年12月19日月曜日

今日から使える医療統計学講座:交互作用

週刊医学界新聞第2958号、2011年12月19日に「今日から使える医療統計学講座【Lesson8】交互作用」が紹介されています。

http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02958_03

最初に「交互作用(または相互作用)は,臨床疫学において交絡と並ぶ重要なコンセプトですが,その交絡と交互作用の違いをきちんと理解している人は少ないようです。」とありますが、私もその1人です…。
以下、引用です。
「交互作用は英語ではInteractionと呼ばれ,「2つ以上のファクターが互いに影響を及ぼし合うこと」と定義されています。よく知られている例ですが,ワルファリンの服用中に納豆などのビタミンKを多く含む食事を制限するのは,ワルファリンとビタミンKが交互作用するからです。」

ちなみに交絡因子の定義は下記の通りです。

・その因子がアウトカムに対する既知のリスク要因である。
・その因子が要因とアウトカムの両方に関連する。
・原因と結果の中間因子ではない。

例えば「ライターを持っている人に肺癌が多い」場合、確かにそうかもしれませんが、交絡因子としてのたばこ・喫煙の影響が極めて大きいですよね。たばこ・喫煙は、交互作用とは確かに違います。

交絡因子は測定さえしておけば、多変量解析で比較的容易に調整が可能ですが、交互作用の解析は非常に難しいそうです。統計の専門家に相談しなければ太刀打ちできない気がします。最後にまとめとしてのReviewを引用します。以下、引用です。

「Review
*臨床研究では,交互作用をEffect Modificationとしてとらえると理解しやすいです。
*サブグループごとの解析の有意差のみでは,交互作用は判断できません。
*効果がサブグループ間で変わるかどうかは,統計的なエビデンスが必要です。
*交互作用の解析はパワーが落ちます。サンプル数の計算時に注意が必要です。
*交互作用を調べる項目は,プロトコールに記載しておきます。」

2011年12月17日土曜日

筋トレで骨格筋の悪液質改善:症例報告

関節リウマチに対するレジスタンストレーニングは骨格筋の悪液質と筋肉の機能を改善させるという症例報告を紹介します。

Salaheddin Sharif, et al: Resistance Exercise Reduces Skeletal Muscle Cachexia and Improves Muscle Function in Rheumatoid Arthritis. Case Reports in MedicineVolume 2011 (2011), Article ID 205691, 7 pages doi:10.1155/2011/205691

下記のHPで全文見ることができます。

http://www.hindawi.com/journals/crim/2011/205691/

関節リウマチで悪液質の患者を対象に、16週間のレジスタンストレーニングを行い、筋トレの前後で外側広筋の筋生検を行いました。その結果、筋肉の核がわずかに増加し、アポトーシスをおこした筋肉の核がわずかに減少しました。これより筋トレが関節リウマチの悪液質に有効な可能性があるとしています。

有酸素運動やレジスタンストレーニングには、悪液質への抗炎症作用があると考えていますが、今回の症例ではCRPは筋トレ前後とも正常範囲内でした。抗炎症作用以外にも悪液質患者に運動が有効なメカニズムがあるのかもしれません。

Abstract
Rheumatoid arthritis (RA) is a chronic, systemic, autoimmune, inflammatory disease associated with cachexia (reduced muscle and increased fat). Although strength-training exercise has been used in persons with RA, it is not clear if it is effective for reducing cachexia. A 46-year-old woman was studied to determine: (i) if resistance exercise could reverse cachexia by improving muscle mass, fiber cross-sectional area, and muscle function; and (2) if elevated apoptotic signaling was involved in cachexia with RA and could be reduced by resistance training. A needle biopsy was obtained from the vastus lateralis muscle of the RA subject before and after 16 weeks of resistance training. Knee extensor strength increased by 13.6% and fatigue decreased by 2.8% Muscle mass increased by 2.1%. Average muscle fiber cross-sectional area increased by 49.7%, and muscle nuclei increased slightly after strength training from 0.08 to 0.12 nuclei/μm2. In addition, there was a slight decrease (1.6%) in the number of apoptotic muscle nuclei after resistance training. This case study suggests that resistance training may be a good tool for increasing the number of nuclei per fiber area, decreasing apoptotic nuclei, and inducing fiber hypertrophy in persons with RA, thereby slowing or reversing rheumatoid cachexia.

日本緩和医療学会ニューズレター:緩和ケアと栄養

日本緩和医療学会ニューズレター第53号に「緩和ケアと栄養」の教育講演に関する報告がされています。演者は東口先生で座長・報告は岡田先生です。

http://www.jspm.ne.jp/newsletter/nl_53/nl530301.html

少し長くなりますが、上記HPから引用します。以下、引用です。

「実は終末期になると栄養障害から生じる免疫能の低下によって、がん自体ではなく感染症が直接的な死因となることが多いということが問題であると示された。そしてNST による適正な栄養管理が実践されると終末期がん患者の肺炎をはじめとする種々の感染や多発する褥瘡などの他疾患の合併が減少することも示された。間接熱量計を用いて終末期がん患者の代謝動態を検討した結果、臨床的な悪液質の出現時期とほぼ一致してエネルギー消費量が減少する。この時期がギアチェンジを全面的に実施すべき時期であり、栄養管理法もこの時点から変更すればいいということになる。臨床的な悪液質として「がん進展による高度全身衰弱あるいはコントロール不能な腹水、胸水、全身浮腫の発生」として示された。」

以上、引用です。確かに感染症が死因となることは少なくないと思います。ここでの「臨床的な悪液質」というのはFearonらの「不応性悪液質」に近いと私は解釈しています。Fearonらの「前悪液質」と「悪液質」の時期には、適正な栄養管理を実践することが重要で、「不応性悪液質」になったらギアチェンジすべきと考えます。

リハ栄養の立場でも、「前悪液質」と「悪液質」の時期には積極的な栄養管理が大切です。運動(有酸素運動の範囲内の歩行やレジスタンストレーニング)による悪液質への抗炎症作用を期待して運動指導しても、終末期のような1日200~600kcal程度の栄養管理では、運動は実施困難です。この鑑別診断が重要になりますね。

2011年12月15日木曜日

筋トレのエネルギー消費量

レジスタンストレーニングのエネルギー消費量に関するレビュー論文を紹介します。

Scott CB. Quantifying the immediate recovery energy expenditure of resistance training. J Strength Cond Res. 2011 Apr;25(4):1159-63.

有酸素運動のエネルギー消費量はMets(安静座位時の酸素消費量と比較した運動強度の指標)から、計算することが可能です。軽~中等度のレジスタンストレーニングは3Metsと私も言ってきました。でもレジスタンストレーニングは有酸素運動ではなく無酸素運動ですから、Metsで計算できるのでしょうか。

この論文では有酸素運動と無酸素運動でエネルギー消費量の計算方法は異なるべきだとしています。そこでレジスタンストレーニング直後の回復時のエネルギー消費量を定量化することを仮説として提案しています。

このあたりは大事なコンセプトだと思うのですが、私、あまりよく理解できていません。どなたか詳しい人がいましたら教えていただけるとありがたいです。よろしくお願いいたします。

Abstract
As opposed to steady state aerobic-type exercise involving long duration, continuous, rhythmic, large muscle group activities that consume large volumes of oxygen, a resistance training set is brief, intermittent, uses multiple and isolated muscles, and is considered anaerobic in description. Because differences are evident between aerobic- and anaerobic-type exercise, it is proposed that the methods used for estimating resistance training energy expenditure should be different as compared with walking, jogging, cycling, etc. After a single set of weight lifting, for example, oxygen uptake is greater in the recovery from lifting as opposed to during the actual exercise; likewise, the anaerobic energy expenditure contribution to lifting may exceed exercise oxygen uptake. Recovery energy expenditure also does not appear well related to the anaerobic energy expenditure of the previous exercise. Based on this evidence, it is suggested that anaerobic-type exercise should not be based on aerobic-type models. In terms of excess postexercise oxygen consumption, a hypothesis is presented in regard to how non-steady-state energy expenditure in the immediate recovery from intense exercise should be properly quantified (e.g., in-between resistance training sets). The proposed concept is based on possible substrate or fuel use differences during intense exercise and aerobic recovery and the biochemistry and bioenergetics of glucose, lactate, and fat oxidation. It is proposed that immediately after a single weight lifting bout or in-between resistance training sets, as O2 uptake plummets rapidly back toward pre-exercise levels, a separate energy expenditure conversion is required for recovery that differs from non-steady-state exercise, that is, 1 L of recovery oxygen uptake = 19.6 kJ (4.7 kcal) (not the standard exercise conversion of 1 L of oxygen uptake = 21.1 kJ) (5.0 kcal).

2011年12月14日水曜日

食介護とサルコペニアの講演

平成24年2月4日(土)の第6回食介護研究会学術大会で、「食介護とサルコペニア」という基調講演をさせていただきます。

http://www.dietitian.or.jp/conference/calendar/2012/cal120204_2.htm

気仙沼で訪問看護ステーションを立ち上げた鎌野倫加さんと一緒に話をさせていただきます。興味のある方はぜひご参加ください。

日時 平成24年2月4日(土) 13:00~17:30
会場 日本歯科大学富士見ホール 千代田区富士見1-9-20
テーマ 包括的食介護の展開

内容
基調講演「食介護とサルコペニア」 横浜市立大学附属病院 若林 秀隆
講演「健康増進法における表示を食介護に生かす-行政の立場から-」 消費者庁食品表示課 米倉 礼子
講演「包括的介護の展開-訪問看護師の立場から-」 (株)ハートナーシング高松 鎌野 倫加
講演「潤生園におけるトータルな食介護 在宅から施設まで-管理栄養士の立場から-」 特別養護老人ホーム潤生園 尾上 千鶴
講演「食育と食介護-研究者の立場から-」 神奈川工科大学 饗場 直美
定員 200名(先着順)
参加費 食介護研究会会員2,000円 非会員5,000円
申込締切 平成24年1月20日(金)
問合せ先 食介護研究会事務局 神奈川工科大学応用バイオ科学部栄養生命科学科内 TEL 046-206-0207 FAX 046-241-0833

2011年12月13日火曜日

栄養と脳卒中リスク

栄養と脳卒中リスクに関するレビュー論文です。

Nutrition and the risk of stroke
The Lancet Neurology, Volume 11, Issue 1, Pages 66 - 81, January 2012

詳しい内容は、内科開業医のお勉強日記のブログに掲載されていますので、ご参照ください。

http://intmed.exblog.jp/14165209/

個別のビタミンや栄養素単独で脳卒中を予防できることは少ないようです。過栄養も低栄養も脳卒中予防には問題という、当たり前と言えば当たり前の結果となっています。

Summary
Poor nutrition in the first year of a mother's life and undernutrition in utero, infancy, childhood, and adulthood predispose individuals to stroke in later life, but the mechanism of increased stroke risk is unclear. Overnutrition also increases the risk of stroke, probably by accelerating the development of obesity, hypertension, hyperlipidaemia, and diabetes. Reliable evidence suggests that dietary supplementation with antioxidant vitamins, B vitamins, and calcium does not reduce the risk of stroke. Less reliable evidence suggests that stroke can be prevented by diets that are prudent, aligned to the Mediterranean or DASH (Dietary Approaches to Stop Hypertension) diets, low in salt and added sugars, high in potassium, and meet, but do not exceed, energy requirements. Trials in progress are examining the effects of vitamin D and marine omega-3 fatty acid supplementation on incidence of stroke. Future challenges include the need to improve the quality of evidence linking many nutrients, foods, and dietary patterns to the risk of stroke.

アルブミン値は心不全患者の生存予後因子

アルブミン値は心駆出率の保たれた心不全患者の生存を予測する研究を紹介します。

Ming Liu, et al: Albumin levels predict survival in patients with heart failure and preserved ejection fraction. Eur J Heart Fail (2011) doi: 10.1093/eurjhf/hfr154

心駆出率の保たれた(左室駆出率50%以上)心不全の入院患者(以下、HFPEF)576人を対象に、入院後早期の血清アルブミン値と1年後の予後を調査しました。低アルブミン血症(3.4g/dl以下)は160人(28%)に認め、低アルブミン血症群と正常アルブミン血症群に分類して検討しました。

低アルブミン血症群では、慢性腎不全の有病割合、クレアチニン、尿素窒素が有意に高く、生存率が有意に悪く(53%対84%)、心血管死が有意に多い(21.8%対8.9%)という結果でした。多変量解析では、低アルブミン血症、心血管疾患の既往、高齢が1年後の死亡率の独立した予後因子でした。

以上より、HFPEF患者では低アルブミン血症をよく認め、低アルブミン血症の場合に死亡率が高く、この病態に腎機能障害が関与している可能性があるという結論です。

低アルブミン血症では心不全患者の予後が悪いというのは以前のレビューでも紹介しました。心腎連関や悪液質が予後に関与している可能性が疑われます。もちろん低栄養で低アルブミン血症となり、低栄養が予後に関与している要素もありますが、アルブミン値は栄養指標より予後指標と考えるべきです。

Abstract
Aims Low serum albumin is common in patients with systolic heart failure and is associated with increased mortality. However, the relationship between albumin and outcome in patients with heart failure and preserved ejection fraction (HFPEF) is not known. The aim of this study was to investigate the effect of serum albumin level on survival in patients with HFPEF.

Methods and results We studied 576 consecutive HFPEF patients (left ventricular ejection fraction ≥50%) admitted to our hospital from 2006 to 2009. Standard demographics, transthoracic echocardiography, and routine blood testing including albumin levels were obtained shortly after admission. Outcome was assessed at 1 year after admission. Hypoalbuminaemia (≤34 g/L) was detected in 160 (28%) at admission; and all patients were then divided into hypoalbuminaemia and non-hypoalbuminaemia groups. In the hypoalbuminaemia group, the prevalence of chronic renal failure history, serum creatinine, and urea nitrogen levels were higher when compared with those without hypoalbuminaemia (all P < 0.05). Kaplan–Meier analysis showed that patients with hypoalbuminaemia had a significantly lower survival rate (53% vs. 84%, log-rank χ2 = 53.3, P < 0.001) and a higher rate of cardiovascular death (21.8% vs. 8.9%, log-rank χ2 = 19.7, P < 0.001) when compared with those without hypoalbuminaemia. Cox regression further revealed that hypoalbuminaemia, a history of cerebrovascular disease, and older age were the most powerful independent predictors of all-cause mortality in HFPEF patients at 1 year.

Conclusions Hypoalbuminaemia is common in HFPEF patients and is associated with increased risk of death. Renal dysfunction may be the main pathophysiological mechanism underlying hypoalbuminaemia in HFPEF patients.

2011年12月12日月曜日

サルコペニアの在宅高齢女性に対する運動とアミノ酸投与

サルコペニアの在宅高齢女性に対する運動とアミノ酸投与の効果をみた日本のRCTを紹介します。

Hun Kyung Kim, et al: Effects of Exercise and Amino Acid Supplementation on Body Composition and Physical Function in Community-Dwelling Elderly Japanese Sarcopenic Women: A Randomized Controlled Trial. Journal of the American Geriatrics Society Article first published online: 5 DEC 2011 DOI: 10.1111/j.1532-5415.2011.03776.x

75歳以上のサルコペニアと診断された在宅高齢女性を対象に、運動+アミノ酸群、運動群、アミノ酸群、健康教育(コントロール)群の4群に分けて、運動は1回60分、週2回、アミノ酸はロイシンを多く含む必須アミノ酸3gを1日2回の介入を3ヵ月間行いました。

結果ですが、歩行速度は介入した3群いずれも有意に改善、下肢筋肉量は運動+アミノ酸群と運動群で改善、膝伸展筋力は運動+アミノ酸群のみ改善しました。下肢筋肉量と膝伸展筋力改善のオッズ比は、運動+アミノ酸群と健康教育群で比べて4.89(95%信頼区間:1.89–11.27)でした。

サルコペニアの在宅高齢女性に対する運動とアミノ酸投与の併用で筋力、筋肉量、歩行速度のすべてに改善を認めました。健常者ではアミノ酸投与の併用はあまり効果がないという報告も少なくありませんが、サルコペニアの場合には運動は当然ですが、アミノ酸投与の併用が望ましいといえます。

サルコペニアの在宅高齢女性が対象ですので、入院リハを行っているサルコペニアの女性や男性にも有効かどうかは別の検証が必要です。それでも臨床ではアミノ酸投与(ジョグメイトプロテインゼリーやペムパルアクティブでよいと思いますが)をリハに併用したほうがよいのではと考えます。

Objectives: To evaluate the effectiveness of exercise and amino acid supplementation in enhancing muscle mass and strength in community-dwelling elderly sarcopenic women.

Design: Randomized controlled trial.

Setting: Urban community in Tokyo, Japan.

Participants: One hundred fifty-five women aged 75 and older were defined as sarcopenic and randomly assigned to one of four groups: exercise and amino acid supplementation (exercise + AAS; n = 38), exercise (n = 39), amino acid supplementation (AAS; n = 39), or health education (HE; n = 39).

Intervention: The exercise group attended a 60-minute comprehensive training program twice a week, and the AAS group ingested 3 g of a leucine-rich essential amino acid mixture twice a day for 3 months.

Measurements: Body composition was determined using bioelectrical impedance analysis. Data from interviews and functional fitness parameters such as muscle strength and walking ability were collected at baseline and after the 3-month intervention.

Results: A significant group × time interaction was seen in leg muscle mass (P = .007), usual walking speed (P = .007), and knee extension strength (P = .017). The within-group analysis showed that walking speed significantly increased in all three intervention groups, leg muscle mass in the exercise + AAS and exercise groups, and knee extension strength only in the exercise + AAS group (9.3% increase, P = .01). The odds ratio for leg muscle mass and knee extension strength improvement was more than four times as great in the exercise + AAS group (odds ratio = 4.89, 95% confidence interval = 1.89–11.27) as in the HE group.

Conclusion: The data suggest that exercise and AAS together may be effective in enhancing not only muscle strength, but also combined variables of muscle mass and walking speed and of muscle mass and strength in sarcopenic women.

2011年12月10日土曜日

肝硬変患者の運動能力と筋力

肝硬変患者の運動能力と筋力に関するレビュー論文を紹介します。
Jacqueline C Jones, Jeff S Coombes, Graeme A Macdonald. Exercise capacity and muscle strength in patients with cirrhosis. Liver Transplantation DOI: 10.1002/lt.22472

進行した肝疾患では異化状態となり筋肉減少を認めることがよくありますが、運動能力や筋力と肝移植後の予後に関する関係はよくわかっていません。そこで肝硬変患者の運動能力と筋力に関する13論文をレビューしました。

結果ですが、肝硬変患者では健常者と比較して運動能力や筋力が有意に低下していました。肝硬変の病因とは関係なく低下しているようですが、肝硬変の重症度とは関連していました。

2つの研究では、肝移植前の運動能力と肝移植後の生存に有意な関連を認めました。他の2つの研究では、肝硬変患者での運動療法は実施可能であり、運動能力は2つの研究で、筋肉量は1つの研究でそれぞれ改善しました。以上より、肝移植を待機している肝硬変患者に対する運動療法は、予後を改善させる可能性があります。

このレビューは肝臓リハの有効性を示すエビデンスの1つになると思います。肝硬変による悪液質でも、運動による抗炎症作用を期待できるのではと推測します。肝硬変患者に対する運動療法が単独でも有効であれば、BCAAなどの栄養療法と併用したリハ栄養では、より効果を期待できると考えます。

Abstract
Exercise capacity and muscular strength are predictors of outcome in a number of clinical populations. Advanced liver disease is a catabolic state and patients often have muscle wasting. However, the relationships between exercise capacity, strength and outcomes in patients undergoing liver transplantation are poorly understood. Thirteen studies have examined the association between these parameters in cirrhotic patients. These have found a significant reduction in exercise capacity and muscle strength in patients with cirrhosis compared to healthy controls. These impairments appear independent of the etiology of cirrhosis, while the data are equivocal in regards to their association with disease severity. Two studies reported a significant and independent association between pre-transplant exercise capacity and post-transplant survival. A further two studies found that exercise training was well-tolerated in patients with cirrhosis, resulting in improvements in exercise capacity in both studies and muscle mass in one. These data are provocative, suggesting that measuring and improving exercise capacity and muscular strength in cirrhotic patients awaiting liver transplantation has the potential to improve outcomes.

サルコペニアの血中マーカー候補:Hsp72

血漿熱ショックタンパク質(heat shock protein)72が高齢者のサルコペニアの血中マーカーとなりうるという報告を紹介します。

Kishiko Ogawa, Hun-kyung Kim, Takahiko Shimizu, Sigeaki Abe, Yumi Shiga and Stuart K. Calderwood. Plasma heat shock protein 72 as a biomarker of sarcopenia in elderly people. Cell Stress and Chaperones DOI: 10.1007/s12192-011-0310-6

結果だけですが、Hsp72が高い高齢者では、筋肉量が少なく、握力が弱く、歩行速度が遅く、血中マーカーとなる可能性があるとしています。この結果は年齢、性別、関連疾患で調整後も残存しました。

この研究結果だけで血中マーカーとして使用できるとはいえません。ただ、サルコペニアの血中マーカーは今のところありませんので、Hsp72とサルコぺニアに関する研究がさらに行われることを期待したいです。

Abstract
Sarcopenia is a geriatric syndrome in which there is a decrease of muscle mass and strength with aging. In age-related loss of muscle strength, there are numerous observations supporting the assertion that neural factors mediate muscle strength. A possible contributing cause may be that aging changes systemic extracellular heat shock protein (eHsp)72 activity. The present study was designed to assess the plasma levels of eHsp72 in elderly people and to investigate its potential interaction with components of sarcopenia. A total of 665 men and women participated in an official medical health examination and an integrated health examination, including psychological and physical fitness tests. Blood samples were assayed for levels of plasma Hsp72, serum C-reactive protein, interleukin 6, tumor necrosis factor α, and regular biomedical parameters. We found that higher Hsp72 in plasma is associated with lower muscle mass, weaker grip strength, and slower walking speed, and may be a potential biomarker of sarcopenia in elderly people. This finding was supported by other results in the present study: (1) older age and shrinking body and lower hemoglobin levels, all of which characterize sarcopenia, were related to higher eHsp72 tertiles and (2) the ORs of the highest tertile of eHsp72 for the lowest tertiles of muscle mass, grip strength, and walking speed were 2.7, 2.6, and 1.8, respectively. These ORs were independent of age, sex, and the incidence of related diseases. Our results would reveal that eHsp72 in plasma is linked to sarcopenia factors and is a potential biomarker or predictor of sarcopenia.

2011年12月9日金曜日

日本リハ栄養研究会のポジショニング


日本リハ栄養研究会のポジショニングについて考えていることを記載します。
日本摂食・嚥下リハ学会や日本静脈経腸栄養学会と何が違うのかと思っている方もいらっしゃるかもしれません。そもそも巨大な学会と小さな研究会を比較すること自体、無謀な話ですが…。

日本リハ栄養研究会の特徴は名称の通り、リハ色と栄養色の両者が濃いことです。1日エネルギー消費量の計算式:基礎エネルギー消費量×活動係数×ストレス係数でいえば、関心が高いのは基礎エネルギー消費量と活動係数の2つです。

ストレス係数に関心が高いのが、日本静脈経腸栄養学会だと思います。一方、リハ色は薄いので、活動係数にはあまり関心が高くないと感じています。運動栄養・スポーツ栄養に関する演題もあまりありません。今度、PT・OT・ST・DHの参加が増えて「リハ部会」ができることを期待していますが、「リハ部会」と日本リハ栄養研究会は別の組織です。

日本摂食・嚥下リハ学会は、摂食・嚥下リハと嚥下調整食への関心は高いです。一方、サルコペニアによる嚥下障害を改善させる栄養管理という視点の発表はあまりありません。嚥下調整食を除くと、栄養関連の演題は少ないと思います。食環境や栄養状態を重視はしていますが、これがメインではないと感じています。

上記の図には載せていませんが、日本スポーツ栄養研究会とのポジショニングの違いもあります。日本スポーツ栄養研究会は主に健常者の運動栄養学、日本リハ栄養研究会は障害者・高齢者の運動栄養学と、対象が異なります。もちろん日本スポーツ栄養研究会から学べることは多いと感じています。

日本リハ栄養研究会の構成メンバーは、栄養に関心をもつPT・OT・ST・DH、リハに関心をもつ管理栄養士、リハ栄養に関心をもつ医師・歯科医師・看護師・薬剤師・臨床検査技師・他となります。こういった人たちの、顔が見えてFacebookで交流できるコミュニティにしたいです。この点でもポジショニングが異なると考えます。

2011年12月8日木曜日

e-ヘルスネット:サルコペニア

厚生労働省のメタボリック症候群が気になる方のための健康情報サイトであるe-ヘルスネットに、サルコペニアが紹介されています。

http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-087.html

以下、少し長いですが、上記HPからの引用です。

「サルコペニア
高齢になるに伴い筋肉の量が減少していく現象。

 筋肉の量が減少していく老化現象のことです。筋肉量の減少は25~30歳頃から進行が始まり、生涯を通して進行していきます。筋線維数と筋横断面積の減少が同時に進み、主に不活動が原因と考えられていますが、そのメカニズムはまだ判明しておりません。
 サルコペニアは、広背筋、腹筋、膝伸筋群、臀筋群などの抗重力筋において多く見られるため、立ち上がりや歩行がだんだんと億劫になり、放置すると歩行が困難になり、老人の活動能力の低下の大きな原因となっています。
 筋力・筋肉量の向上のためのトレーニングによって進行の程度を抑えることが可能ですので、歳を重ねる毎に意識的に運動強度が大きい運動(レジスタンス運動)を行うことが大切です。
 頻繁につまづいたり、立ち上がるときに手をつくようになると症状がかなり進んでいると考えられ、積極的にトレーニングを行うことがその後の生活の質的な安定に大いに役立ちます。特につまづきは、当人や周囲が注意力不足のせいだと思い込んでいることが多いため筋力の低下が原因と気付かないことが多く、注意が必要です。」

以上、引用です。

ここでは狭義のサルコペニアについて説明されていて、加齢による筋力低下や加齢以外の原因による筋肉量減少は、定義に含まれていません。サルコペニアの要因の1つに不活動はありますが、サルコペニアと廃用性筋萎縮では筋萎縮の仕方が異なっているため、他の要因のほうが大きいのではと考えます。

抗重力筋に多くみられるのはその通りですので、筋肉量や筋力の評価は可能であれば、全身もしくは抗重力筋で行うべきでしょう。身体計測の実際では、測定が簡便な握力や上腕周囲長を用いることも少なくありませんが、大腿四頭筋や下腿周囲長のほうがより望ましいかもしれません。

レジスタンス運動に関しても、e-ヘルスネット簡単な紹介があります。レジスタンス運動の方法論はある程度確立しています。ですので、あとはレジスタンス運動を実践すればよいのですが、言うは易く行うは難しです。もちろん食事療法も言うは易く行うは難しですが…。以下、下記HPからの引用です。

http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-058.html

「筋肉に抵抗(レジスタンス)をかける動作を繰り返し行う運動をレジスタンス運動と言う。
 
スクワットや腕立て伏せ、ダンベル体操などの標的とする筋肉に抵抗(レジスタンス)をかける動作を繰り返し行う運動をレジスタンス運動と言います。10-15回程度の回数を反復し、それを1-3セット無理のない範囲で行うことが勧められます。レジスタンス運動には、ダンベルやマシンなどの器具を用いて行う方法と、スクワットや腕立て伏せのように自体重を利用して行う方法があります。自体重を用いて行う方法は手軽に行えることから、筋力向上の指導プログラムに広く活用することができます。しかし、負荷の大きさを調節しにくいという欠点もあります。例えば、スクワットならしゃがみ込む深さを調節する、机などに手をついて行う、何かを持って行うなどの工夫で負荷の調節をすると良いでしょう。
 筋肉には疲労からの回復の時間が必要です。レジスタンス運動は標的の筋肉に負荷を集中する運動ですから、その筋肉に十分な回復期間としてトレーニング間隔をあける必要があります。毎日行うのではなく、2,3日に一回程度、週あたり2,3回行うくらいの運動頻度が推奨されます。無理のない範囲で「継続的」に行うようにしてください。」

2011年12月6日火曜日

IL-6誘導の悪液質に対する運動効果:マウス

マウスでのIL-6誘導の悪液質に対する運動の効果を検証した論文を紹介します。

Melissa J. Puppa, et al: The effect of exercise on IL-6-induced cachexia in the Apc Min/+ mouse. Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle, 2011, doi: 10.1007/s13539-011-0047-1

下記のHPで全文見ることができます。

http://www.springerlink.com/content/p7kt828212q763n1/fulltext.pdf

基礎研究なので簡単なコメントのみとさせていただきます。中程度のトレッドミル運動(18m/分で1時間、週6日、傾斜5%)でIL-6誘導の悪液質を改善できるかどうかを、カゴの中の対照群と比較検証しています。結果ですが、対照群ではIL-6を過剰発現させると8%の体重減少を認めましたが、運動で有意に体重減少が少なくなりました。

対照群ではIL-6の過剰発現で空腹時血糖と中性脂肪が高値となりましたが、運動で正常化しました。運動による変化は骨格筋の炎症シグナルが上昇しても生じました。これよりIL-6濃度と独立して中程度の運動はIL-6による悪液質を改善させるという結論です。運動効果はインスリン感受性とエネルギー状態の改善と関連していました。

マウスでの実験ですので、そのままヒトにあてはめることはできません。ただ、IL-6が高値でも有酸素運動が有効ということは、ヒト悪液質でもIL-6やCRPが高値でも有酸素運動が有効な可能性があります。IL-6やCRPが高値の場合、レジスタンストレーニングは禁忌と考えていますが、一定の有酸素運動は行ったほうがよいのかもしれません。要検証ですが。

Abstract
Background Cachexia involves unintentional body weight loss including diminished muscle and adipose tissue mass and is associated with an underlying disease. Systemic overexpression of IL-6 accelerates cachexia in the ApcMin/+ mouse, but does not induce wasting in control C57BL/6 mice. With many chronic diseases, chronic inflammation and metabolic dysfunction can be improved with moderate exercise. A direct effect of regular moderate exercise on the prevention of IL-6-induced cachexia in the ApcMin/+ mouse has not been investigated. The purpose of this study was to assess the effects of exercise on the development of cachexia in the ApcMin/+ mouse.

Methods Mice were randomly assigned to moderate treadmill exercise (18 m/min, 1 h, 6 days/week, 5% grade) or cage control (CC) groups from 6 to 14 weeks of age. At 12 weeks of age, mice were electroporated with either IL-6-containing or control plasmid into the quadriceps muscle. Mice were killed after 2 weeks of systemic IL-6 overexpression or control treatment.

Results IL-6 overexpression induced an 8% loss in body weight in CC mice, which was significantly attenuated by exercise. IL-6 overexpression in CC mice increased fasting insulin and triglyceride levels, which were normalized by exercise, and associated with increased oxidative capacity, an induction of AKT signaling, and a repression of AMPK signaling in muscle. These exercise-induced changes occurred despite elevated inflammatory signaling in skeletal muscle.

Conclusion We conclude that moderate-intensity exercise can attenuate IL-6-dependent cachexia in ApcMin/+ mice, independent of changes in IL-6 concentration and muscle inflammatory signaling. The exercise effect was associated with improved insulin sensitivity and improved energy status in the muscle.

がん悪液質におけるインスリン抵抗性

がん悪液質におけるインスリン抵抗性の役割に関するレビュー論文を紹介します。

Mary A. Honors and Kimberly P. Kinzig. The role of insulin resistance in the development of muscle wasting during cancer cachexia. Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle 2011, doi:10.1007/s13539-011-0051-5

下記HPで全文PDFで入手できます。

http://www.springerlink.com/content/ex605h40966q3857/fulltext.pdf

インスリン抵抗性はがん悪液質患者で認められ、筋肉量減少のメカニズムの1つと考えられています。インスリン抵抗性を改善することで、悪液質の症状を改善できる可能性もあります。インスリン抵抗性はがん悪液質に先行して生じるというエビデンスもあります。

例えば一定のインスリン感受性が残存している場合、がん悪液質患者に外因性インスリンを投与することで、エネルギー摂取量と体重が増加してその結果、生存期間延長とQOL向上を認めたという報告があります。ただし、否定的な報告もあり、エビデンスとしては不十分です。

薬物療法として、メトフォルミン、チアゾリジンジオン(インスリン抵抗性改善薬)、β2受容体刺激剤がインスリン抵抗性を改善させることで、筋肉量増加に有効な可能性があります。ただしこれらについても今後の検証が必要とされています。

リハ栄養的にはインスリン抵抗性の改善には、薬物療法よりも運動療法のほうが効果的と考えます。有酸素運動とレジスタンストレーニングを行うことで、抗炎症作用だけでなくインスリン抵抗性を改善させることで、悪液質の症状を改善させる可能性があります。もちろんこれも研究での検証が必要ですが。

Abstract
Background Cancer cachexia is a complex syndrome associated with multiple metabolic abnormalities. Insulin resistance is present in many cancer patients and may be one mechanism through which muscle wasting occurs.

Methods and results The present review examines evidence in support of a role for insulin resistance in the development of muscle wasting during cancer cachexia and identifies areas for future research. Patients suffering from cancer cachexia tend to exhibit insulin resistance and improvements in insulin resistance have the potential to improve cachexia symptoms. In addition, evidence suggests that insulin resistance may occur prior to the onset of cachexia symptoms.

Conclusions Further investigation of the role of insulin resistance in cancer cachexia is needed. The use of translational research in this area is strongly encouraged, and has important implications for clinical research and the treatment and prevention of cancer cachexia.

適切な義歯治療で栄養状態改善

部分的に歯のある高齢者の栄養状態に対する歯の置換戦略の影響に関する研究を紹介します。

McKenna G, Allen PF, Flynn A, O'Mahony D, Damata C, Cronin M, Woods N. Impact of tooth replacement strategies on the nutritional status of partially-dentate elders. Gerodontology. 2011 Nov 28. doi: 10.1111/j.1741-2358.2011.00579.x. [Epub ahead of print]

部分的に歯のある高齢者を対象に、従来型の取り外し可能な部分義歯を使用する対照群と、歯列弓の短縮に基づいた機能的治療(functionally orientated treatment based on the shortened dental archの意味がわかっていません。すみません…)を行う介入群で、栄養状態の変化を評価しました。栄養状態はMNAと検査値で評価しています。

結果ですが、咬合接触している歯の数と栄養状態に関連を認めました。咬合接触している歯の数が増えると、MNA、ビタミンB12、葉酸、総リンパ球数が増加しました。治療介入後は両群ともMNAのみ有意に改善しました。検査値に両群間で有意な差を認めませんでした。対照群、介入群とも義歯を用いたリハによって栄養状態が改善したという結論です。

介入方法に関わらず、適切な義歯治療で咀嚼機能を改善させると栄養状態が改善するという結論は理解できます。ただ、歯科の専門用語を日本語でさえよく知らないため、おかしな日本語になっていると思います。もっと臨床歯科栄養に関する論文を読みこまなければと感じました…。

Abstract
Objective:  To investigate the impact of tooth replacement on the nutritional status of partially dentate older patients, and, to compare two different tooth replacement strategies; conventional treatment using removable partial dentures and functionally orientated treatment based on the shortened dental arch.

Background:  Amongst older patients, diet plays a key role in disease prevention, as poor diets have been linked to numerous illnesses. Poor oral health and loss of teeth can have very significant negative effects on dietary intake and nutritional status for elderly patients. There is evidence that good oral health generally, has positive effects on the nutritional intake of older adults.

Materials and methods:  A randomised, controlled clinical trial was designed to investigate the impact of tooth replacement on the nutritional status of partially dentate elders. Forty-four patients aged over 65 years completed the trial, with 21 allocated to conventional treatment and 23 allocated to functionally orientated treatment. Nutritional status was accessed at baseline and after treatment using the Mini Nutritional Assessment (MNA) and a range of haematological markers.

Results:  At baseline, relationships were observed between the number of occluding tooth contacts and some measures of nutritional status. As the number of contacts increased, MNA scores (R = 0.16), in addition to vitamin B12 (R = 0.21), serum folate (R = 0.32) and total lymphocyte count (R = 0.35), also increased. After treatment intervention, the only measure of nutritional status that showed a statistically significant improvement for both treatment groups was MNA score (p = 0.03). No significant between group differences were observed from analysis of the haematological data.

Conclusion:  In this study, prosthodontic rehabilitation with both conventional treatment and functionally orientated treatment resulted in an improvement in MNA score. Haematological markers did not illustrate a clear picture of improvement in nutritional status for either treatment group.

2011年12月5日月曜日

2012年の日本リハ栄養研究会活動予定

一昨日の第1回日本リハ栄養研究会で、来年の活動予定がほぼ決まりました。柱となるのは、各支部でのリハ栄養セミナー、リハ栄養合宿、リハ栄養研究会の3つです。
 
①各支部のリハ栄養セミナー
以下、日程と場所を記載します。こちらはグループワークが中心です。群馬・信越以外はすべて、私も参加させていただく予定です。
北海道:9月29日、札幌
東北:7月22日、郡山
群馬・信越:5月13日、群馬
関東:3月17日、東京
北陸:7月29日、金沢
東海:7月8日、名古屋
関西:8月25日、大阪
中国:8月4日、広島
四国8月5日、高松
九州:9月22日、熊本
九州:3月31日、沖縄
 
②第2回リハ栄養合宿
2012年6月9-10日 銀座

③第2回日本リハ栄養研究会
11月24日(土)、京都
 
いずれも参加できるのは、日本リハ栄養研究会の会員のみです。興味のある方はぜひ日本リハ栄養研究会に入会していただきたいと思います。Facebook登録の壁が一番高いことは理解していますが、Facebookをベースとした研究会とすることで、得るものがとても多いことも事実です。こればかりは入会していただかないとわからないのが現状です。入会のほど、よろしくお願いいたします。
 

COIマネージメントの在り方とは

週刊医学界新聞の第2956号、2011年12月05日に「COIマネージメントの在り方とは」という記事が掲載されています。
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02956_05

COIはConflicts of Interestの略語で利益相反という日本語訳がありますが、COIとそのまま使用されることも多いようです。記事を読む限り、COIの認知度、実践度は徐々に改善されているようですが、まだ不十分だと思います。

記事の中に紹介されている、日本医学会が本年2月に発表した「医学研究のCOIマネージメントに関するガイドライン」は、下記のHPで見ることができます。研究倫理は年々厳しくなりつつありますが、これは過去の失敗経験を考えると必要な過程でしょう。

http://jams.med.or.jp/guideline/coi-management.pdf

また、日本製薬工業協会が本年策定した「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」は、下記のHPで見ることができます。2012年度分から、(1)研究開発費(2)大学や学会への寄附金などの学術研究助成費(3)原稿執筆料等(4)新薬説明会などの情報提供関連費などを公開する予定です。

http://www.jpma.or.jp/about/basis/tomeisei/tomeiseigl.html

厳しすぎるという意見もあるようですが、公開したら困るようなお付き合いを研究者と製薬企業がしているようではまずいと私は感じています。個人的に製薬企業との付き合いが少ないので、このように言えるのかもしれませんが…。

例えばある研究テーマで結論が対立した2つの研究結果があるとします(エビデンスレベルはほぼ同等という仮定です)。このとき、一方にCOIがなく、もう一方にCOIがある場合には、私はCOIがない研究結果の結論を選択すると思います。そう考えるとCOIのない状況に自分を置いておく方が有利な気もします。

2011年12月4日日曜日

第1回日本リハ栄養研究会写真

昨日、第1回日本リハビリテーション栄養研究会を無事、開催することができました。参加してくださった皆様、どうもありがとうございました。

秋山先生がチーム医療フォーラムのHPで、昨日の第1回日本リハ栄養研究会の写真をアップしてくれています。興味のある方はぜひ見ていただければと思います。

http://teamforum.or.jp/NutritionRehabilitation/

2011年12月1日木曜日

術後患者への低カロリー輸液の効果

荒金先生に教えていただいた、術後患者への低カロリー輸液の効果をみたメタ分析の論文です。
Jiang H, Sun MW, Hefright B, Chen W, Lu CD, Zeng J. Efficacy of hypocaloric parenteral nutrition for surgical patients: A systematic review and meta-analysis. Clin Nutr. 2011 Dec;30(6):730-7. Epub 2011 Jun 24.

結果としては、術後早期の栄養投与は20kcal/kg以下に抑えた方が感染症発生率、入院日数が有意に少なくなっています。EPaNIC trialと同様の結果で、術後早期の静脈栄養による過栄養はむしろ有害の可能性があります。

術後早期の静脈栄養による過栄養での栄養改善は期待できませんが、術前のリハ栄養、Prehabilitationによる栄養改善は期待できるかもしれません。ただ、進行がんの場合、診断から手術までの期間が限られますので、その短い期間でどんな介入をすればどれだけ成果を出せるか、今後の研究課題です。

Abstract
BACKGROUND AND AIMS: Hypocaloric parenteral nutrition is an underfeeding strategy that lowers energy intake to around 20 kcal/kg/d. It is believed to achieve benefits by modulating metabolic responses and alleviating hyperglycemia. This study aims to systematically review the clinical efficacy of hypocaloric parenteral nutrition on surgical patients.

METHODS: Medline, SCI, Embase, Cochrane Library, Chinese Biomedicine Database (CBM) and China Knowledge Resource Integrated Database (CNKI) were searched for studies published before July 1, 2010. Randomized control trials (RCTs) that compared hypocaloric PN with standard or higher energy PN in surgical patients were identified and included. Methodological quality assessment was based on Cochrane Reviewers' Handbook and modified Jadad's Score Scale. Statistical software RevMan 5.0 was used for meta-analysis.

RESULTS: Five trials met all inclusion criteria and were included in the final meta-analysis. There were significant reductions in infectious complications (RR, 0.60; 95%CI 0.39-0.91, P = 0.02; I(2) = 38%) and length of hospitalization (LOS) associated with receiving hypocaloric PN (MD-2.49 days, 95%CI -3.88 to -1.11, P = 0.0004; I(2) = 48%). Stratified analysis of the smaller trials (<60) and larger trials demonstrated that the heterogeneity between trials was mainly associated with sample size. When smaller trials were excluded, hypocaloric PN was associated with reduction in infectious complications (RR, 0.21, 95%CI 0.06-0.72, P = 0.01, I2 = 0%) and shortening of LOS (MD, -2.32 days, 95%CI -3.72 to -0.93, P = 0.001, I(2) = 0%).

CONCLUSION: Hypocaloric parenteral nutrition may reduce infectious complications and the length of hospitalization in post-operative patients. However, this conclusion is tentative due to patient type and sample size. Furthermore, in terms of hypocaloric PN, the actual energy amount still varies a great deal (from 15 kcal/kg/d to 20 kcal/kg/d). This suggests that further research, including larger randomized clinical trials is required.

2011年11月30日水曜日

作業療法士のためのキャリアデザイン入門

来年1月22日に神奈川県作業療法士会で「作業療法士のためのキャリアデザイン入門-強みの作り方、伸ばし方、活かし方-」という研修会を開催します。

http://kana-ot.jp/wpm/lecture/post/246

OTであれば神奈川県以外の方でも申し込み可能ですが、応募者多数の場合には神奈川県のOTを優先するようです。医療人のキャリアデザインで3時間のワークショップを行うのは初めてですが、FDの1つとして参加者が考える機会になればと思っています。興味のあるOTはぜひご参加いただければと思います。

もしこれが好評でしたら、他でも医療人のキャリアデザインのワークショップをやりたいですね。ビジネスパーソンや医療人でも看護師向けのものは少なくありませんが、看護師以外の医療人ではこのようなワークショップは少ないと感じています。そのうち、リサーチクエスチョンよりキャリアデザインのワークショップばかり行うことになるかもしれません。

以下、上記HPからの引用です。

日時:2012年1月22日(日)12:30受付開始 13:00-16:00
※講習会終了後に懇親会を予定しています。見知らぬ方同士でも気軽に参加していただけるよう配慮いたしますので、普段できない情報交換の場としてご利用いただければ幸いです。(会費は別途徴収します)

場所:横浜市立大学附属市民総合医療センター本館3階リハビリテーション部
〒232-0024横浜市南区浦舟町4-57 電話番号:045-261-5656
横浜市営地下鉄ブルーライン「阪東橋」駅下車徒歩5分
京浜急行「黄金町」駅下車徒歩10分

内容:作業療法士の国家試験に合格して、作業療法士になったあなた。あなたは作業療法士としてのキャリアデザインをどの様に考えていますか?臨床場面で経験を積み、スキルアップに努力しているあなたに、今回別の視点からのキャリアデザインを提案したいと思います。講師は、横浜市大の若林秀隆先生をお迎えします。リハビリテーション医学界に「リハ栄養」の概念を持ち込み、多くの著作と研修会の講師、リハ栄養研究会の主宰など、今最も注目される先生です。先生ご自身のキャリアデザインの経験を元に、作業療法士への熱いメッセージをいただきたいと思います。キャリアデザインに興味がある方だけでなく、リハ栄養に興味のある方も、若林先生の肉声にふれることのできる機会となります。お早めのご応募をお待ちしています。

対象:神奈川県OT士会員で今年度会費納入済みの方、他都道府県OT士会員等
※神奈川県在勤のOTで、神奈川県作業療法士会未入会または今年度会費未納の方は受講できません。

参加費:3000円

定員:50名

申し込み方法:
1)E-mail(携帯メール不可)にて神奈川県OT士事務局研修会担当(ken-otアットマークkana-ot.com)までお申込み下さい
2)E-mailの題名を「身障1/22受講希望」とし、本文に1)受講希望講習会名及び開催日、2)氏名、3)所属、4)都道府県士会名、5)日本作業療法士協会会員の場合は会員番号、6)連絡先電話番号、7)返信用E-mailアドレス(携帯メール不可)を必ずご記載下さい。記載内容に不備があった場合は受け付けられません。
3)神奈川県在勤のOTの方は、申込2週間前までに必ず今年度会費を納入して下さい。納入確認に2週間程度必要になります。納入状況をお忘れの場合は、日本作業療法士協会「Web版OT協会会員情報システム」にてご確認いただくか、士会事務局(電話番号045-663-5997)にお問い合わせください。
4)申込みのE-mailは1人1通までとします。

申し込み締切
2011年12月1日―2012年1月6日
※期間外の申込は受付不可
※応募者多数の場合、先着、神奈川県OT士会員を優先し選考いたします。

問い合わせ
山岸誠、伊藤淳子(横浜市大附属市民総合医療センター)電話番号045-261-5656 内線2444OT室

病態別実践リハ医学研修会(内部障害)

2012年2月18日(土)に、東京・大手町サンケイプラザで、病態別実践リハビリテーション医学研修会(内部障害)は開催されます。

http://www.jarm.or.jp/member/member_calendar_20120218.html

日本リハ医学会の会員しか参加できませんが、私も「栄養管理とリハビリテーション:嚥下障害を含めて」という講演をさせていただきます。日本リハ医学会の会員で関心のある方にはご参加いただければと思います。よろしくお願いいたします。

■ 病態別実践リハビリテーション医学研修会(内部障害)
開催日時:2012年2月18日(土)10:00~16:30
開催場所:大手町サンケイプラザ
対 象 :リハビリテーション医学会会員
単 位 :20単位(4講演全て受講につき)、日本医師会生涯教育講座4単位
プログラム:
10:10「排尿障害とリハビリテーション」
独立行政法人国立病院機構東京医療センター 古野 薫
11:25「栄養管理とリハビリテーション:嚥下障害を含めて」
      横浜市立大学附属市民総合医療センター 若林 秀隆
13:25「透析患者のリハビリテーション」 諏訪の杜病院 武居 光雄
14:40「メタボリックシンドロームとリハビリテーション」 埼玉医科大学 間嶋 満

[申込方法]
受講料 :15,000円(昼食・テキスト代を含む)
定 員 :100名(定員に達し次第、申込受付を終了します)
     ※入金後のキャンセルによる返金には応じられません。
修了証 :講義終了後の試験合格者には修了証を交付します。
申込方法:オンラインによる申込受付。会員ページへのログインが必要です。

2011年11月29日火曜日

臨床栄養:高齢者の栄養と運動

臨床栄養の最新号119巻7号で、「高齢者の栄養と運動-健康寿命延長のための新たな試み」が特集されています。
http://www.ishiyaku.co.jp/magazines/eiyo/EiyoBookDetail.aspx?BC=061197

高齢者栄養をめぐる重要な概念が項目として取り上げられています。いずれもリハ栄養的にも重要な項目ばかりです。強いて言えば運動による抗炎症作用の項目があるともっと嬉しかったですが、十分学習になりますので一読をお勧めします。

対談 高齢者における栄養ケアの重要性-低栄養の早期発見とMNA®の有用性  雨海照祥,葛谷雅文……738 
老年症候群とは  神﨑恒一……750 
フレイルティとは  葛谷雅文……755 
サルコペニアとは  佐竹昭介……760 
〔コラム〕sarcopenic obesityとはなにか  荒木厚……767 
カヘキシアとは  雨海照祥……771 
〔コラム〕MIA症候群-低栄養症候群,炎症,粥状硬化症の3つの病態の合併症候群  雨海照祥……785

透析中の運動療法

透析中の運動療法に関するレビュー論文を紹介します。

Jung TD, Park SH. Intradialytic Exercise Programs for Hemodialysis Patients. Chonnam Med J. 2011 Aug;47(2):61-65. Epub 2011 Aug 31.

下記のHPで全文見ることができます。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3214879/pdf/cmj-47-61.pdf

終末期腎疾患患者での運動療法の有用性は、コクランレビューでも明らかにされています。ただし、透析中に運動療法を行う有用性の検証は不十分です。

有酸素運動とレジスタンストレーニングには、身体機能、最大酸素摂取量、筋力だけでなく、身体計測値、栄養状態、血液データ、炎症性サイトカイン、うつ、QOLを改善させる作用があります。ただし、運動療法の効果が比較的健康な透析患者のみに限定されるかどうかは不明ですので、今後の検証が必要です。

透析中の運動療法の実施に関しては私は行うべきとまでは思いませんが、透析患者の運動療法は行うべきです。透析時間以外に運動療法を行う機会がまったくなさそうな患者の場合には、透析中に運動療法を行ったほうがよいと感じます。特に運動で栄養状態や炎症性サイトカインを改善させるところが重要です。

Abstract
Although it is widely accepted that exercise is beneficial in patients with end-stage renal disease as in the general population, it is not easy to incorporate exercise programs into routine clinical practice. This review aimed to investigate the beneficial effects of exercise during hemodialysis and also to introduce various intradialytic exercise programs and their advantages as a first step in combining exercise programs into clinical practice. Aerobic and resistance exercise are beneficial not only in improving physical functioning, including maximal oxygen uptake and muscle strength, but also in improving anthropometrics, nutritional status, hematological indexes, inflammatory cytokines, depression, and health-related quality of life. However, it is not clear whether the beneficial effects of exercise are limited to only relatively healthy dialysis patients. Therefore, the effects of individualized exercise programs for elderly patients or patients with comorbid conditions need to be studied further.