2010年9月13日月曜日

言語聴覚士教育のさらなる充実に向けて

医学界新聞の最新号の特集で「言語聴覚士教育のさらなる充実に向けて」が取り上げられています。

http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02895_01

藤田郁代氏(国際医療福祉大学保健医療学部言語聴覚学科長/教授)=司会
長谷川賢一氏(聖隷クリストファー大学 リハビリテーション学部 言語聴覚専攻長/教授)
立石雅子氏(目白大学保健医療学部 言語聴覚学科長/教授)
というST界の重鎮3人の座談会という形で、ST教育の現状と今後の課題に関してディスカッションされています。

長谷川先生が「ゆとり教育などの影響もあり,入学時の成績は年々下がっていますね。また,学習への動機付けが不確かなまま入学してくる学生が増えており,意欲の低下などから入学後に自己学習が進まなかったり,教員がさまざまな教育的手段を講じても効を奏さないこともあり,指導上の課題となっています。」と述べていますが、その通りだろうなあと感じます。

ただこれはゆとり教育の問題だけでなく、STの学校数が急速に増えた結果、レベルと倍率の低い学校が出てきていることの影響だと考えます。現時点の入学時の成績でいえば、STよりPT・OTのほうが上のように感じるのは私だけでしょうか。

藤田先生が「自分自身の臨床能力をモニターし,研鑽をして高めていく時間的余裕がない環境にあって,臨床能力が低下しているという危惧は強くあります。(中略)しかしこのところ,言語病理学的評価・診断能力が鍛えられていない若い人たちが見受けられます。」 と臨床現場のSTについて述べています。これも残念ながら事実でしょう。

私がリハ医として初めてSTに接した10数年前、STは誰もが極めて優秀でとても輝いて見えました。私のSTに対する敬意は、この頃の経験によるところが大きいです。今でも極めて優秀と感じさせてくれるSTはもちろんいますが、もはや多数派とはいえません。その点で相対的に言語面での臨床能力が落ちていることは確かだと感じます。一方、嚥下面での臨床能力が明らかに向上していることは特記すべきでしょう。

藤田先生の「エビデンスに基づく,科学的な臨床実践を行うには,評価・診断結果をもとに論拠を明確にして治療仮説を立て,それを訓練過程で検証するといった科学的方法論を身に付けておくことが必要です。そのためには日々の臨床から課題を見いだし,研究に取り組むことも重要であり,臨床と研究は表裏一体を成すものだと私は考えています。」に私も同感です。

STで臨床研究に取り組んでいる人が少なすぎると感じています。臨床研究が臨床のスキルを大いに向上させることを考えると、実にもったいないことです。臨床現場が忙しいことはわかりますが、その中で臨床研究も含めて一定以上の自己研鑽を行わないと、個人としても職能集団としても将来が危惧されます。

卒後教育や生涯教育が乏しいことも課題ですね。ST教育に関して卒前も卒後も生涯も課題だらけですが、すべてのST教育に力を入れていただき、極めて優秀でとても輝いて見えるSTを増やしてほしいと期待しています。

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