2010年8月16日月曜日

プロとしての臨床研究:臨床研究指針と実際

日本内科学会雑誌最新号(Vol99.8)の専門医部会欄に、尾藤誠司先生の「プロとしての臨床研究:臨床研究指針と実際」の原稿が掲載されています。とても勉強になりますので、一部紹介いたします。

内科医は臨床研究を行う義務はあるか?
・一部の医師については義務がある
・すべての医師に対して臨床研究を行うことを勧めたい
・臨床研究に携わる経験が、臨床医としての能力を高める。

「臨床研究に携わる経験が、臨床医としての能力を高める」ことは私も実感していますので、医師に限らずすべての医療人に臨床研究を行うことを推奨しています。

臨床研究を行う上で配慮すべきことは何か?
・医療と研究の目的の違い
・医療は目の前の患者の健康利益を最大限にする
・研究は目の前の患者の利益を高めることを第一義にしていない
・ある臨床研究課題の主体となる研究者は研究者である前に優れた臨床医である必要がある。

研究に参加したほうがよりより臨床を受けられるという考え方は誤りです。

臨床研究に関する規範や指針について
・ヘルシンキ宣言
http://www.med.or.jp/wma/helsinki02_j.html

・疫学研究に関する倫理指針(観察研究)
http://www.lifescience.mext.go.jp/files/pdf/37_139.pdf

・臨床研究に関する倫理指針(介入研究)
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/kousei/i-kenkyu/rinsyo/dl/shishin.pdf

これらの倫理指針を知らずに臨床研究を行うことはできません。観察研究を行う場合、疫学研究に関する倫理指針に目を通して理解しておくことが必須です。

臨床研究と倫理委員会
・後ろ向き既存資料利用のみを行う調査であったとしても、患者個々のカルテを閲覧してデータ収集を行うような調査は、基本的に疫学指針を適用し、倫理委員会の審議を受けるべきである。
・臨床研究であればまずは院内の倫理委員会に審査するべきである。

臨床研究計画および手続きの実際:観察研究と介入研究
・臨床研究におけるインフォームド・コンセントの基本的考えは、患者の研究参加への拒否権を最大限尊重することである。
・介入研究においてもっとも重要な点は、治療に関連する有害事象のモニタリングと、重要な有害事象に対しる迅速な対処である。

おわりに
・臨床医が臨床研究を計画し、倫理審査委員会に申請を行い、実際に実施することは、その医師に対して様々な新しい気付きを与える。

きちんとした臨床研究を行うためには、臨床研究デザイン、倫理的配慮、生物統計学の一定の知識が必要です。今はわかりやすい書籍やセミナーも増えつつありますので、しっかり学習されることを推奨します。

さらに研究倫理を学習したい方には尾藤誠司著、いざ、倫理審査委員会へ、NPO法人健康医療評価研究機構(iHope)をおすすめします。
http://ihope.cart.fc2.com/ca7/5/p-r7-s/

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