2010年7月22日木曜日

口腔機能へのアプローチ‐リハビリテーション栄養の視点から‐

 リハビリテーション(以下リハ)=機能訓練と解釈されることが多いが、機能訓練はリハのごく一部でしかない。リハとは人間らしく生きる権利の回復(全人間的復権)であり、QOLをより向上させるよう人生を再構築することである。

 リハ栄養とは、栄養状態も含めてICF(国際生活機能分類)で評価を行った上で、適切な予後予測のもとでリハ栄養ケアプランを実践することである。口腔機能障害患者は栄養障害の合併が多く、この場合、リハと栄養管理の併用が必要となる。

 口腔機能には、口輪筋、頬筋、咀嚼筋、内舌筋、外舌筋など多くの筋肉が関わっている。口腔機能障害の原因の1つに、これらのサルコペニアがある。サルコペニアとは、狭義では加齢に伴う筋肉量の低下、広義ではすべての原因による筋肉量と筋力の低下である。以下、広義で考える。

 広義のサルコペニアの原因には、加齢、活動(廃用性筋萎縮)、栄養、疾患(侵襲、悪液質、原疾患)がある。加齢に伴い口腔も含めた筋肉量は低下する。廃用性筋萎縮は禁食で生じる二次的障害である。エネルギー消費量よりエネルギーや蛋白質の摂取量が不足する飢餓では、口腔も含めた筋肉が分解する。侵襲は手術、外傷、骨折、感染症など生体の内部環境の恒常性を乱す刺激であり、筋肉の分解が著明となる。悪液質はがん、慢性心不全、慢性閉塞性肺疾患などで生じ、筋肉の喪失が特徴である。原疾患には、多発性筋炎や筋萎縮性側索硬化症がある。

 サルコペニアによる口腔機能障害に対しては、これらの原因の有無を判断した上で、栄養管理と口腔の筋肉のレジスタンストレーニング(以下RT)など機能訓練を適切に行う。加齢や廃用性筋萎縮が原因の場合、主な治療はRTである。飢餓が原因の場合、主な治療は適切な栄養管理による栄養改善である。栄養改善なしにRTを行うのは逆効果である。疾患が原因の場合、原疾患の治療が最も重要である。原疾患のコントロールが不良な場合、適切な栄養管理と廃用予防の機能訓練を行っても、口腔機能の維持さえ難しい。実際には複数の原因を認めることが多く、栄養管理と機能訓練の適切な併用を要する。特に誤嚥性肺炎では活動、栄養、疾患が重複することが多く、サルコペニアが著明になりやすい。

 口腔機能の悪化で十分に摂食できず栄養状態が悪化し、その結果さらに口腔機能が悪化するという悪循環が生じる。これを断ち切るには、口腔だけをみるのではなくリハ栄養の視点が大切である。

0 件のコメント:

コメントを投稿