2010年6月28日月曜日

手を握ることで胃運動機能向上

昨日まで日本プライマリ・ケア連合学会に参加していましたが、その中で、「家族が患者の手を握る行為の有用性」という発表がありましたので、やや長いですが抄録を紹介します。

【背景】認知機能が低下している患者に対して、家族が無力感を感じていることは多い。その中で、家族が患者の手を握りながら寄り添う光景をみかけることがある。「手を握るしか何もしてあげられない」と語る家族は多い。そこで、家族が患者の手を握る行為が認知機能の低下した患者の自律神経機能に与える影響を客観的に評価することは、家族の自己効力感の向上につながると考えられた。一方、自律神経機能と消化管生理機能との関連性は古くから証明されている。
【目的】体外式超音波を用いて、家族が患者の手を握る行為による患者の胃運動機能の変化を評価すること。その結果の説明による家族の自己効力感の変化を評価すること。
【対象】対象は、胃廔による栄養を受けている認知機能の低下した患者13 例(78.1±11.8歳、意思疎通が全くできない寝たきり状態)。入院中、全身状態安定期、PEG施行後安定期、高度の食道裂孔ヘルニアを認めない症例に限定した。
【方法】家族が患者の手を握る行為下、非行為下で超音波による胃運動機能評価を行った。手順は、胃廔から栄養剤(300kcal/400ml)を200ml/hの速度で投与し、経時的に前底部横断面積や収縮回数を測定した。評価項目は、前底部運動能(3 分間:投与終了時~3分後の収縮回数と収縮率。収縮率:収縮期と弛緩期の前底部横断面積の変化率)、胃排出率(投与終了時:120 分後と180 分後・240分後との前底部横断面積の変化率)の2 項目とした。測定は1~3週間の間隔を空けて行い、行為下、非行為下の順番はエントリー順に交互に振り分けた。使用機器は日立 EUB-6000を用いた。また、その結果の説明の前後における、家族が患者の手を握る行為の意義の程度などをスケール評価を用いて比較検討した。①手を握る行為は、相手の心身にどの程度関与(良い方向に)していると思いますか?②手を握る行為は、貴方の心身にどの程度関与(良い方向に)していると思いますか?③手を握る行為は、相手やあなたにとって、どの程度意義のある行為だと思いますか?④今後、手を握る行為など相手への関わりを増やしていこうと思いますか?
【結果】家族が患者の手を握る行為下は非行為下と比較し、前底部運動能、胃排出能ともに有意に大きな値となった。その結果の説明にて、家族の自己効力感は高まった。一方、日常性を重視したために、手を握る行為の内容や時間の統一性は得られなかった。
【考察】家族が患者の手を握る行為は、2つの胃運動機能を高めたが、これは自律神経系を介した作用である。この結果を伝えることは、家族の自己効力感の向上につながると考えられた。

私は手を握ることが胃運動機能を向上させることをはじめて知りました。考えてみれば副交感神経系を亢進させれば胃運動機能は向上するので、リラックスさせればよいとは思うのですが。

そうするとリラックスできる相手(どんな相手かが重要ですね)に手を握ってもらうと、胃食道逆流の予防になる可能性もあるのかもしれませんね。そんな臨床研究は聞いたことがありませんが…。

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