2010年6月14日月曜日

新訳:科学的管理法

今日は、フレデリックW.テイラー著、有賀裕子訳「新訳:科学的管理法」ダイヤモンド社を紹介します。

http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=978-4-478-00983-3

もともと1911年に執筆された書籍で、ほぼ100年前のものになります。それが今回新訳として出版されたのは、マネジメント領域の歴史的名著に他ならないからです。

ドラッカーはテイラーのことをとても高く評価していますし、ドラッカーの書籍を読んでいると、テイラーのことが何回も出てきます。私がテイラーを知ったのも、もちろんドラッカーを読んだからです。

「テイラーこそ、人類の歴史上でおそらく初めて労働作業を当然のものとして見過ごさず、研究の対象として光を当てた人物である。(中略)テイラーは、労働の生産性を押し上げ、それによって労働者たちにまずますの暮らしをさせたいと願ったわけだ。」

第1章にマネジメントの目的として、以下のような記載があります。

「マネジメントの目的は、雇用主に「限りない繁栄」をもたらし、併せて、働き手に「最大限の豊かさ」を届けることであるべきだ。」

100年前にこのようなことをテイラーが主張されていたとは実に感動的です。言い方を変えれば100年前から「雇用主も働き手も、相手と強調するよりもむしろ敵対しようとする空気が強い」ということです。

残念ながら100年たった今でも、雇用主は働き手をなるべく少ない賃金で最大限働かせようという風潮があります。これは会社だけでなく病院でも同様です。マネジメントが昔より進化した分、かえって働き手は雇用主に上手に搾取されているかもしれません。

医療人=知識労働者として生産性をなるべく高めることは当然ですが、それはFaculty Developmentで言えば、自らも組織も利する(win-win)結果を得るためです。決してwin-loseの結果を得るためではありません。そんなことを改めて実感できる書籍です。

この書籍では肉体労働者の生産性をいかに高めるかについて、詳細に記載されています。仕事に知識を適応したといえます。一方、知識労働者の生産性をいかに高めるかについては、ドラッカーが下記の6項目を紹介しています。これらを実際に行うことが、知識労働者には大切です。

・なされるべきことを考える。
・働く者自身に生産性向上の責任を持たせる。すなわち自分をマネジメントさせる。
・継続してイノベーションを行わせる。
・継続して学ばせ、かつ継続して人に教えさせる。
・知識労働の生産性は量より質であることを知る。
・知識労働者をコストではなく資本として扱う。知識労働者が組織のために働くことを欲する。

ちなみに、ドラッカーのマネジメントを十分読み込んで理解してから、この書籍を読むことをおすすめします。順番としてはドラッカーが先だと感じています。

目次
まえがき――いまなぜ、テイラーを読み直すべきなのか

序章 本書の狙い

「仕組み」の重要性
三つの狙い

第一章 科学的管理法とは何か

マネジメントの目的
労働者を蝕む最大の悪習
怠業の原因――その一
怠業の原因――その二
 「楽をしようとする」性向
 労働者の実態
 欺かれる雇用主
 出来高制がはらむ危険性
怠業の原因――その三
マネジャーが果たすべき責務
科学的管理法がもたらすもの

第二章 科学的管理法の原則

1 「科学的管理法」以前における最善の手法
手段はクチコミ
自主性とインセンティブ

2 科学的管理法のエッセンス
マネジャーの四つの新しい任務
マネジャーと働き手の役割分担
作業プランを作成し、実行する

3 銑鉄の運搬作業における取り組み
専門性がなく、誰でもできる仕事
適材を探し出す
訓練や手助けが不可欠

4 私の職歴――マネジメント改革に傾注した背景
機械工場の現場で働く
部下たちとの対立
マネジメント改革を決意
作業と疲労度に関する実験
一日の労働に占める作業時間
作業者の人選の重要性

5 シャベルすくい作業の研究
シャベルすくい作業における科学
作業者を「個」として扱う
データが示す導入効果
賃金アップと働く意欲の関係
単独作業のメリット

6 レンガ積みにおける検証
ギルブレスによる調査
作業工程の短縮に成功
標準手法の導入と協力体制
科学的管理法の成果

7 ベアリング用ボールの検品に対する考察
一日に一〇時間半の労働
「パーソナル係数」による適性判断
完璧な検品のための工夫
奏効したさまざまな施策
効果的な報奨の与え方
労使双方に大きなメリット

8 高度な金属切削業務における探究
高度な作業への適用
科学が経験則を超える
現場から全社への波及
二六年にわたる金属切削の実験
一二に及ぶ独立変数
研究から導き出された法則
作業者の経験則の限界
手法ではなく、哲学の刷新

9 科学的管理法の実践
科学を解き明かす
法則を導くための五つのステップ
標準ツールの製作
課題と動機づけの関係
重要な二要素――課題とボーナス
プランニング部門の役割
複数の職長による指導
外科医と工場の労働者
科学的管理法のメカニズムを支える要素
性急な導入が残した教訓
導入に際しての注意点
消費者の存在
科学的管理法がもたらす恩恵
新しい時代の到来
人々の幸福に貢献
【追記】

原注

訳者あとがき

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