2010年6月3日木曜日

昇進者の心得

今日は、DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部:編訳「昇進者の心得―新任マネジャーの将来を左右する重要課題」ダイヤモンド社を紹介します。

http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=978-4-478-00890-4

多くの書籍はいかに昇進するかに焦点を当てています。昇進した後いかにあるべきかについて書かれた書籍は少ないと思います。私は昇進者とは言えない職位ですが、組織ではリーダー的な仕事をさせていただくことがありますので、参考になる部分がありました。

ただ、この書籍の前に、ドラッカーの以下の言葉が名言です。昇進者はまずはこの言葉を肝に銘じておくべきでしょう。

「10年、15年にわたって有能だった人が、なぜ急に無能になるのか。私が見てきた限り、原因は、それらのほとんどにおいて、昇進した人が、前の任務で成功したこと、昇進をもたらしてくれたことを新しい任務においても行い続けることにある。その挙句、無能な仕事しか出来なくなる。

 正確には、無能になるのではなく、単に間違ったことを行うために無能な仕事しか出来なくなるのである。新しい任務を行ううえで必要なことは、卓越した知識と才能ではない。それは、新しい任務が要求するもの、新しい挑戦、仕事、課題において致命的に重要なものへの集中である。」

 私がこの書籍で最も参考になったのは、「第8章なぜ地位は人を堕落させるのか」です。トップでありつづけるための日常習慣として、以下の項目が紹介されています。

・普通の生活を心がける
・自分の短所に光を当てる
・「観測気球」をあげる(まわりの現実を調べる作業をおしまない)
・小さなことにくよくよ悩む
・内省する時間を増やす

 要は謙虚であれということなのでしょうが、偉くなるとそれがなかなか難しいのだろうと思います。

 また、みずからのリーダーシップを「監査」してみるということで、以下の6つの質問が用意されています。これらの質問で転落の危機に落ちていないかどうか自己診断できます。

・穴を塞いだり、綻びを繕ったりと、目の前の問題の処理に追い回されていないか。
・耳の痛い社内の意見にどのように対応しているか。
・必要な時に必ず「王様は裸だ」と進言してくれる人物はいるか。
・尊大な幻想を抱いていないか。
・自分の利益を求めるあまり、強欲な人間に変わっていないか。
・一息入れて、何か違うことをするか、ゆっくり休んでみてはどうか。

 私にも耳の痛い質問がありました。リーダーでもそうでなくても、これらの質問で自己診断することは有用かと感じます。

目次
まえがき──「昇進後の落とし穴」の存在

第1章 新任マネジャーはなぜつまずいてしまうのか
 ハーバード・ビジネススクール 教授 リンダ・A・ヒル

管理職になってみて気づくこと
マネジャーの心得が身につかない理由
新米マネジャーが抱きがちな五つの誤解
上司が新米マネジャーの不安を理解する必要性
【章末】もう一つの教訓:権限はみずから獲得するもの

第2章 新任リーダーが犯しやすいミス
 INSEAD 教授 マイケル・D・ワトキンス

昇進や異動は新たなる大きな試練
どのような状況にあるか評価する
組織変革の基本原則
マネジャーのみならず社員全員の自己変革を促す
【章末】STARSモデルの実践法
【章末】転職組の管理職がつまずく理由

第3章 功を急ぐと、なぜ失敗するのか
 コーポレート・エグゼクティブ・ボード プラクティス・マネジャー
 マーク・E・バン・ビューレン
 コーポレート・エグゼクティブ・ボード マネージング・ディレクター
 トッド・サファーストーン

成功するリーダーと失敗するリーダーの違い
クイック・ウィンの落とし穴
クイック・ウィンの逆説を打ち破る
集合的クイック・ウィンの重要性
【章末】クイック・ウィンを実現する
【章末】集合的クイック・ウィンの威力
【章末】新任マネジャーの成功を支援する

第4章 頼れる部下と困った部下
 ハーバード大学 ジョン・F・ケネディ行政大学院 講師 バーバラ・ケラーマン

フォロワーシップ研究は遅れている
リーダーとフォロワーの関係の変化
フォロワーの類型化
フォロワーをあらためて類型化する
賢いフォロワー、困ったフォロワー
【章末】フォロワーの分類例

第5章 リーダーが部下に翻弄される時
 ジョージ・ワシントン大学 教授 リン・R・オファーマン

ケネディが迷走してしまった理由
多数派の意見を疑う
おだてに乗るべからず
批判に耳を傾けられるか
部下の言葉よりも組織の価値観で判断する
策略家や不満分子に注意する
【章末】敵の懐に入る

第6章 だれを信頼すべきか
 ケンブリッジ・インターナショナル・グループ 創業者兼CEO
 サジュ=ニコル・A・ジョニ

信頼について多くが誤解している
信頼の種類とレベルを認識する
「第三の意見」に耳を傾ける
早い段階で「キッチン・キャビネット」を組成する
職位が高くなるほど構造的信頼は得がたい

第7章 完全なるリーダーはいらない
 マサチューセッツ工科大学 スローン・スクール・オブ・マネジメント 教授
 デボラ・アンコーナ
 マサチューセッツ工科大学 スローン・スクール・オブ・マネジメント 教授
 トーマス・W・マローン
 マサチューセッツ工科大学 スローン・スクール・オブ・マネジメント 教授
 ワンダ・J・オーリコフスキー
 マサチューセッツ工科大学 スローン・スクール・オブ・マネジメント 上級講師
 ピーター・M・センゲ

「分散型リーダーシップ」とは
「状況認識」に取り組む
「人間関係」を築く
「ビジョン」を描く
「創意工夫」を促す
四つの能力のバランスを図る
【章末】「状況認識」に取り組む
【章末】「人間関係」を築く
【章末】「ビジョン」を描く
【章末】「創意工夫」を促す

第8章 なぜ地位は人を堕落させるのか
 スタンフォード大学 経営大学院 教授 ロデリック・M・クラマー

なぜ権力を手にすると堕落し始めるのか
勝者はすべてを欲する
「ルールなんて凡人のためにあるものさ」
組織の頂上には滑りやすい急坂がつき物
ほめ言葉が「裸の王様」をつくる
トップであり続けるための日常習慣
前途洋々ゆえに前途多難であることに気づかない
【章末】失脚の研究
【章末】みずからのリーダーシップを「監査」してみる

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