2010年5月31日月曜日

エビデンス主義

今日は、和田秀樹著「エビデンス主義―統計数値から常識のウソを見抜く」角川SSC新書を紹介します。アマゾンでは中古書を40円から購入できます。

http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=200906000225

EBM、EBCPについて一般人向けに解説された書籍ですので比較的わかりやすく執筆されており、医療人がEBCPの基本的な考え方について学ぶのにも有益だと思います。ただ、すでに日常的にEBCPを実践している人には物足りない書籍です。

EBM、EBCPはご存知の通り、5つのステップで構成されています。

①疑問点の抽出(臨床の疑問をPECOにする)
②情報の検索(医療情報の場合、二次情報ならUpToDate(有料)、一次情報ならPubMedかGoogle Scholarが有用、いずれも無料)
③情報の吟味(妥当か、何か、役立つか。二次情報なら吟味不要)
④患者への適応(論文の患者と臨床の違い)
⑤ステップ①~④の振り返り

この書籍はこれらのステップのうち、②情報の検索と③情報の吟味について重きを置いて解説しています。確かにいい加減な統計数値の報告が世の中にあふれている一方、人目にあまりつかないところで有益な情報がたくさんありますので、しっかり情報検索して批判的吟味を行うことはFDとして大事なスキルです。

また、そもそも疑うことを重視しています。疑いを持ってデータを調べてみると意外な事実が見つかることも珍しくないようです。ただ、疑問点の抽出の際にPECOの形に構造化して、情報検索ではPとEの言葉で検索するといった医療人向けの内容は記載されていません。

EBCPに関しては批判的な意見もありますが、医療の中ではかなり考え方が定着したと私は感じています。この書籍を読めばその日からEBCPを実践できるというわけではありませんが、EBCPの考え方をあまり学習したことがない方におすすめします。

目次
第1章 「EBM」に学ぶ(EBMとは「根拠に基づく治療」、薬は使ったほうがいいのか? ほか)
第2章 「エビデンス」を使った思考法(世の中にはウソがあふれている、「医療崩壊」の原因 ほか)
第3章 「常識のウソ」はどのようにして生まれるか(理屈重視の社会、ニュースになるのは「珍しいこと」 ほか)
第4章 人はなぜ「常識のウソ」に騙されるのか(「バイアス」が判断を歪める、根拠を考える習慣を身につける ほか)
第5章 「エビデンス・ベースド・ポリティクス」の勧め(治安は本当に悪化しているのか?、「勉強することは悪」ではない ほか)

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