2010年5月23日日曜日

治療をためらうあなたは案外正しい

今日は、名郷直樹著「治療をためらうあなたは案外正しい―EBMMに学ぶ医者にかかる決断、かからない決断」日経BP社を紹介します。

http://ec.nikkeibp.co.jp/item/books/P47000.html

一般人向けに執筆されたEBM、EBCPの解説本です。すでにある程度EBM、EBCPの学習をされている方には学びは少ないと思います。

わかりやすく執筆されていますが、私も下記の目次の質問にはすべて正答することはできませんでした…。知っていなければいけないのですが、意外と難しいかもしれません。ぜひ目次の質問だけでも挑戦してみてください。

治療しなければ必ず疾患が悪化する、治療すれば必ず疾患がよくなる、というほど医療は単純ではないことは納得できると思います。ただ、治療したからかえって生命予後が悪くなったということも少なくありません。

例えば糖尿病に関していえば運動療法(有酸素運動、レジスタンストレーニングとも)の有効性はほぼ確かだと思いますが、薬物療法の有効性は?というところがあります。

2008年にNEJMに掲載されたアコード試験では、薬物療法でヘモグロビンA1cの目標を6%以下にする群と7%台にする群の2群で比較したところ、6%以下にする群のほうが統計学的に有意に死亡率が高いという結果でした。

要するに一生懸命血糖値を下げようと治療すると、血糖値は下がっても生命予後は悪いというエビデンスになります。ヘモグロビンA1cが7%台なら薬物療法は不要ともいえます。これには異論があるかもしれませんが…。

リハ栄養に関していえば、リハ栄養の考え方を実践しなければ必ずADLが悪化する、リハ栄養の考え方を実践すれば必ずADLが改善するということは全くありません。また、リハ栄養のエビデンスは乏しいので、リハ栄養の考え方のせいでかえってADLが悪化したという可能性も否定できません。そんなことはないと個人的には信じていますが、どちらにしても未検証の仮説の話です。

EBM、EBCPは必須のスキル・ツールですので、EBM、EBCP初心者の方にはご一読をおすすめします。

目次
はじめに

第1章 高血圧
Q まずあなたにお聞きします
「七〇歳で上の血圧が一六〇(mmHg)の人が、今後五年間で脳卒中になる可能性はどのくらいだと思いますか?」

第2章 高コレステロール血症
Q まずあなたにお聞きします
「五〇歳で総コレステロールの値が二六〇(mg/dl)の人のうち、今後五年間のうちに心筋梗塞を起こす人は何割くらいいるでしょうか?」

第3章 糖尿病
Q まずあなたにお聞きします
「糖尿病の治療で一番大切なのは、次のどれでしょうか?
 1、血糖の値 2、血圧の値 3、コレステロールの値」

第4章 かぜ 
Q まずあなたにお聞きします
「かぜ薬はかぜを早く治してくれるのでしょうか?」

第5章 インフルエンザ
Q まずあなたにお聞きします
「話題の抗ウイルス薬(ザナミビル、オセルタミビル)はインフルエンザの特効薬なのでしょうか?」

第6章 腰痛
Q まずあなたにお聞きします
「腰痛にはとにかく安静が重要なのでしょうか?
痛くともなるべく体を動かすべきなのでしょうか?」

第7章 花粉症
Q まずあなたにお聞きします
「花粉症くらいではステロイド薬は使わないほうがいいのでしょうか?」

第8章 アトピー性皮膚炎
Q まずあなたにお聞きします
「アトピー性皮膚炎は何%ぐらいの人が放っておいて
も自然に治ってしまうと思いますか?」

第9章 喘息
Q まずあなたにお聞きします。
「喘息の治療薬で最も効果があるのは次のどれでしょう?
 1、飲み薬 2、吸入薬 3、貼り薬 」

第10章 胃潰瘍
Q まずあなたにお聞きします
「胃潰瘍の再発はピロリ菌の除菌でどれくらい減ると思いますか?
 1、六〇%→四〇% 2、六〇%→三〇%、 3、六〇%→一五%」

第11章 虫垂炎(盲腸)
Q まずあなたにお聞きします
「虫垂炎は手術前に確実に診断できるでしょうか?」

第12章 ガン検診
Q まずあなたにお聞きします
「ガン検診を受け続けていれば、あなた自身はガンで死ぬ率が減ると思いますか?」

第13章 うつ病
Q まずあなたにお聞きします
「抗うつ薬は自殺を予防すると思いますか?」

あとがきに代えて―EBMって何だろう?

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