2010年4月8日木曜日

MNA®-SFとリハ栄養

MNA®-SF(Mini Nutritional Assessment-Short Form、簡易栄養状態評価表)は、従来のMNA®と比較して6項目しかなく、PT・OT・STでも容易に行えます。また、信頼性、妥当性が検証されている数少ない栄養評価方法でもあり、高齢者におけるリハ栄養管理での使用を推奨しています。実際のMNA®-SFは下記のHPから入手できます。

http://www.mna-elderly.com/forms/mini/mna_mini_japanese.pdf

スクリーニング
A 過去3 ヶ月間で食欲不振、消化器系の問題、そしゃく・嚥下困難などで食事量が減少しましたか?
0 = 著しい食事量の減少
1 = 中等度の食事量の減少
2 = 食事量の減少なし
B 過去3 ヶ月間で体重の減少がありましたか?
0 = 3 kg 以上の減少
1 = わからない
2 = 1~3 kg の減少
3 = 体重減少なし
C 自力で歩けますか?
0 = 寝たきりまたは車椅子を常時使用
1 = ベッドや車椅子を離れられるが、歩いて外出はできない
2 = 自由に歩いて外出できる
D 過去3 ヶ月間で精神的ストレスや急性疾患を経験しましたか?
0 = はい 2 = いいえ
E 神経・精神的問題の有無
0 = 強度認知症またはうつ状態
1 = 中程度の認知症
2 = 精神的問題なし
F1 BMI (kg/m2):体重(kg)÷身長(m)2
0 = BMI が19 未満
1 = BMI が19 以上、21 未満
2 = BMI が21 以上、23 未満
3 = BMI が23 以上
BMIが測定できない場合、
F2 ふくらはぎの周囲長(cm) : CC
0 = 31cm未満
3 = 31cm以上

スクリーニング値
(最大 : 14ポイント)
12-14 ポイント: 栄養状態良好
8-11 ポイント: 低栄養のおそれあり (At risk)
0-7 ポイント:  低栄養

 今頃になって気付いたのですが、急性期と回復期の入院患者のリハ栄養と密接に関連しているのは、「C 自力で歩けますか?」と「D 過去3 ヶ月間で精神的ストレスや急性疾患を経験しましたか?」の2項目です。

 急性期と回復期の入院リハでは、主な原因疾患は脳卒中、大腿骨頸部骨折、廃用症候群、誤嚥性肺炎などになると思います。これらの疾患で入院しリハを要する場合、「C 自力で歩けますか?」の回答が「2 =自由に歩いて外出できる」となることはほとんどありません。「0 = 寝たきりまたは車椅子を常時使用」か「1 = ベッドや車椅子を離れられるが、歩いて外出はできない」でしょう。

 また、「D 過去3 ヶ月間で精神的ストレスや急性疾患を経験しましたか?」の回答が「2 = いいえ」となることもありません。脳卒中、大腿骨頸部骨折、誤嚥性肺炎は急性疾患ですし、廃用症候群は何らかの急性疾患による治療上の安静によるものがほとんどです。

 以上より、急性期と回復期の入院リハを要する高齢患者の大半は、この時点で3点減点となります。つまり、他の項目が満点の場合でも最高11点であり、低栄養のおそれあり(At risk)もしくは低栄養という結果になります。

 リハ栄養的に考えると、脳卒中、大腿骨頸部骨折、廃用症候群、誤嚥性肺炎などで急性期と回復期の入院リハを要する高齢患者は全員、低栄養のおそれあり(At risk)もしくは低栄養ということです。要するに全員、リハ栄養アセスメントが必要で、低栄養の場合にはリハ栄養管理が必要となります。

 実際にはこれら以外の疾患・障害で入院リハを行っている患者もいますが、入院リハを要するすべての高齢者に低栄養を疑うべきといっても過言ではないと思います。「栄養ケアなくしてリハなし」ということを、MNA®-SFで再認識しました。

4 件のコメント:

  1. MNA-SFのD項目:精神的ストレスは個人差があり、評価が難しい。E項目の認知症の判断基準が曖昧。何か、明確な判断基準はないものですか?

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  2. コメントどうもありがとうございます。確かに評価が難しい項目ですね。下記の書籍「高齢者の栄養スクリーニングツール MNAガイドブック」がもっとも参考になると思います。
    https://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=705950

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  3. 吉野結生12/21/2013

    以前、若林先生の講演を聞きMNA-SFと握力との関連を研究発表しました。今回、MNA-SFと大腿四頭筋力(ハンドヘルドダイナモメーター使用)との関連を65歳以上の整形疾患に限定し研究したいと考えているのですが過去の論文で、大腿四頭筋力との関連を調べたものはありますでしょうか? もしあれば教えていただきたいと思います。

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    1. 吉野さん、コメントどうもありがとうございます。正確にパっと思いだすことは今できません。ただ、MNAと大腿四頭筋筋力の関連であれば、先行研究はおそらくあるだろうと思います。ただ、MNAとquadricepsでPubMedで検索しても論文はヒットしませんね。ひょっとしたらないのかもしれません。

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