2010年2月2日火曜日

皮膚筋炎・多発性筋炎による筋萎縮とリハ栄養

今日は皮膚筋炎・多発性筋炎による筋萎縮とリハ栄養について検討します。

皮膚筋炎・多発性筋炎は、自己免疫疾患、膠原病の1種で、体幹に近い筋肉(腹筋、背筋、肩関節や股関節周囲の筋肉など)の筋力低下が特徴的です。詳細はWikipediaを参照してください。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9A%AE%E8%86%9A%E7%AD%8B%E7%82%8E

筋萎縮の原因は、大きく以下の5つに分類できます。

廃用性筋萎縮
飢餓・侵襲
サルコペニア
悪液質
原疾患(神経筋疾患など)

このうち、皮膚筋炎・多発性筋炎は当然、原疾患に該当することになります。ただ、皮膚筋炎・多発性筋炎の患者が、他の4つの原因を合併していないとは限りません。

廃用性筋萎縮は安静・不活動により生じる筋萎縮ですが、筋力低下で活動量が低下しやすいので、合併している可能性があります。

飢餓はエネルギー消費量と比較してエネルギー摂取量が不足している場合ですが、皮膚筋炎・多発性筋炎では嚥下筋の筋炎による嚥下障害を合併することがあり、その場合には飢餓を合併しやすくなります。

侵襲は手術、骨折、熱傷、発熱、感染症など生体へのストレスによって生じますが、嚥下障害による誤嚥性肺炎を認めることがあります。

サルコペニアは狭い定義で加齢により生じる筋肉量の減少ですが、皮膚筋炎・多発性筋炎の発生は若年と中高年に2極化しており、高齢の皮膚筋炎・多発性筋炎の患者ではサルコペニアを合併している可能性があります。

悪液質は、がん、慢性閉塞性肺疾患、慢性感染症(結核、AIDSなど)、慢性心不全、慢性腎不全、関節リウマチなど関連する複雑な代謝症候群で、筋肉の喪失が特徴です。皮膚筋炎・多発性筋炎で悪液質を生じるという論文は見つけられませんでしたが、慢性炎症の疾患であり、間質性肺炎を合併することも少なくないことより、皮膚筋炎・多発性筋炎の患者では悪液質を合併している可能性があると考えます。

以上より、皮膚筋炎・多発性筋炎の患者が、他の4つの筋萎縮の原因を合併している可能性があります。それによって、筋萎縮への対応が異なるといえます。

合併していない場合には、治療は薬物療法が中心でリハも行います。ただし、筋炎の活動が活発(血液検査でCK:クレアチンキナーゼが高値)なときは逆効果になりますので、レジスタンストレーニング(筋力トレーニング)は禁忌です。

エビデンスはありませんが1つの目安として、CKが500以下であれば、軽いレジスタンストレーニングを行い、CKの変化をモニタリングします。それでCKが500を超えるようであれば安静(関節可動域訓練は可)、超えないようであれば負荷量を少し増やします。

廃用性筋萎縮やサルコペニアを合併している場合には、レジスタンストレーニングで改善が期待できるため、よりレジスタンストレーニングが必要です。ただし、CKなどで筋炎の活動をモニタリングしながら行います。

飢餓と侵襲の場合には、適切な栄養管理と侵襲の原因疾患の治療が必要です。栄養障害のときに不適切な栄養管理のままレジスタンストレーニングを行うのは逆効果です。

皮膚筋炎・多発性筋炎の患者に嚥下障害を認める場合には、筋萎縮による嚥下障害だけでなく、食道入口部開大不全を合併していて、バルーン拡張法や輪状咽頭筋切開術を要することもあります。

悪液質を合併している場合には、n3脂肪酸(EPA、DHAなど)、高蛋白食(体重1kgあたり1.5gの蛋白が有効という報告あり)、廃用予防の運動の併用が必要です。

このように皮膚筋炎・多発性筋炎の患者に対しては、原疾患の治療・薬物療法がメインではありますが、同時にリハ栄養的な考え方も重要です。筋炎の活動にあわせた適度な運動療法と食事療法(十分なエネルギー、高蛋白、脂肪はn3脂肪酸中心、ビタミン、ミネラルも十分に)の併用がよさそうです。

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