2010年1月25日月曜日

症例研究と研究倫理

一昨日は第一回かながわ介護保険施設食事・栄養ケア研究大会に参加してきました。

http://www.peg.or.jp/news/information/kanagawa/100123.pdf

調理師の発表やセントラルキッチンの発表など、他ではなかなか聞くことのできない一般演題を聞くことができ、視野が広がりました。このような場を作られた臨床栄養士、NCMリーダーの方たちには頭が下がります。ぜひこの研究大会を継続していただきたいと感じています。

ただ一方で、気になる一般演題があったことも事実です。

こういった地域の研究会や研究大会では、活動報告、症例研究、症例集積(数例の症例経験のまとめ)といった発表がほとんどです。活動報告に関しては研究とは言えないことが多いので(アクションリサーチのような研究もありますが)、研究倫理面で問題になることは比較的少ないかと思います。

一方、症例研究や症例集積は立派な臨床研究ですので、十分な倫理的配慮が求められます。

研究倫理で求められることは、大きく分けると

・適切なインフォームドコンセントの文書での取得
・対象者の匿名化
・倫理審査委員会での審査
・発表内容に関するもの

に分類できると思います。大学病院での症例研究ではすでにこれらすべてが求められます。しかし、このような研究会での発表に関しては、施設内に倫理審査委員会がないなどの理由で倫理審査委員会での審査を受けられないことは、現状ではやむをえないかもしれません。

ただ、インフォームドコンセントと匿名化に関しては確実に求められます。これらのいずれかが不十分であれば倫理的に問題がある臨床研究、発表ということになりますが、これらに関して十分な発表は少ないのが実情です。匿名化も名前だけ匿名にすればよいという程、単純なものではありません。

また、発表内容に関しては、他の研究会の一般演題で発表したものを全く同じ内容で別の研究会の一般演題で発表することは、二重投稿と同じですので、倫理的に問題があります。これは私も昔、意識せずにやってしまったことがありますが…。

基本的には一般演題を発表することは、発表者にとって貴重な学習機会になりますので、私も推奨しています。ただ、研究倫理的に問題がある発表では、対象者の犠牲のもとに自己学習しているということになります。このことへの自覚が足りないのかもしれません。

あまり倫理、倫理と言い過ぎると研究意欲がなくなることもありますが、基本的な研究倫理のルールは守った上で、よい症例研究をより多くの方に行っていただきたいと思います。

研究倫理に関心のある方は、厚労省の臨床研究や疫学研究に関する倫理指針などを読んで学習してください。

http://www.mhlw.go.jp/general/seido/kousei/i-kenkyu/index.html#4

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