2009年12月20日日曜日

筋萎縮による嚥下障害

mixiにリハビリテーション栄養のコミュニティを作りました。mixiのトピックとブログの内容と重複することが少なくないかもしれませんが、よろしくお願いいたします。

mixiに投稿した内容ですが、筋萎縮による嚥下障害です。

嚥下障害の原因というと、まずは脳卒中が挙げられます。次に2番目に多い嚥下障害の原因は、私は筋萎縮だと考えています。筋萎縮による嚥下障害の患者はかなり多く、リハ栄養的な適切な評価と対応が必要です。

筋萎縮による嚥下障害の原因は、大きく5つに分類できます。

廃用性筋萎縮
飢餓・侵襲
サルコペニア
悪液質
原疾患(神経筋疾患など)

廃用性筋萎縮は、しばらく経口摂取をしていなかった場合や禁食など、不活動によって生じます。

飢餓は、エネルギー消費量と比較してエネルギー摂取量(経口摂取+経管栄養+経静脈栄養)が不足している場合に生じます。侵襲は、手術、骨折、熱傷、発熱、感染症など生体へのストレスによって生じます。

サルコペニアは、狭い定義では加齢により生じる筋肉量の減少で、老年症候群の1つともいえます。骨格筋減少症、筋肉減少症とも訳されます。65歳以上で可能性あり、80歳以上で疑いと考えています。

悪液質は、がん、慢性閉塞性肺疾患、慢性感染症(結核、AIDSなど)、慢性心不全、慢性腎不全、関節リウマチなど関連する複雑な代謝症候群で、筋肉の喪失が特徴です。脂肪は喪失することもしないこともあります。

原疾患による筋萎縮には、筋萎縮性側索硬化症や多発性筋炎といった神経筋疾患などが含まれます。

実際の嚥下障害患者にはこれら5つの筋萎縮のうち、複数を合併していることが少なくありません。この原因を考慮した上で、レジスタンストレーニング(筋力トレーニング)と臨床栄養管理を適切に行うことが重要です。

廃用性筋萎縮やサルコペニアが筋萎縮の原因の場合、治療は嚥下筋のレジスタンストレーニングです。栄養状態が良好でない場合には、適切な臨床栄養管理を併用します。安易な禁食を避けることも、廃用予防として大切です。

飢餓が筋萎縮の原因の場合には、治療は栄養改善です。適切な臨床栄養管理を行わないでレジスタンストレーニングを行うと、筋萎縮がさらに悪化します。
侵襲の場合には、適切な栄養管理と侵襲の原因疾患の治療が重要です。

悪液質が筋萎縮の原因の場合、著明な改善は期待しにくいですが、n3脂肪酸(EPA、DHAなど)の投与が有効な可能性があります。EPAを含む栄養剤の使用やEPA製剤(エパデール)の投与を検討します。

原疾患による筋萎縮が原因の場合には、原疾患の治療を行いますが、難治性の疾患が少なくありません。それでも、廃用性筋萎縮と飢餓の予防は重要です。

このように筋萎縮による嚥下障害患者に対しては、リハと臨床栄養管理が重要であり、評価を間違えるとさらに嚥下障害を悪化させる可能性があります。そのため、リハ栄養的な考え方が必要です。

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